第63話 クラスター戦
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
百八の魔星の一人、地巧星の不二にチームBIOのサブリーダー ハートオブクイーンのもとに案内されるが、バイオの知る人物とは別人であった。
クイーンから勝負に勝てば、チームBIOのリーダーと自分と同じ名を持つスペードオブエースと会わせるとの言葉を受け、対決を決意するバイオ。
だがその時、不二が、自分は四天王の一人でありクイーンと共に2人と戦う役目を負っていることを告白するのであった。
「黙っていて悪かったさー。
白黒コンビとの闘いがうむさん(面白く)、やったー(あなたたち)のファンになっちまって聞くばっかりで、おいら自身のことを伝える暇が無かったさー。」
自身の正体を知り唖然とするバイオとグリにふじが謝罪する。
「自己紹介はそれくらいでいいかい。
クラスター戦のルールの説明をするよ。」
ハートオブクイーンが特徴的なハスキーボイスで説明を始める。
「この部屋には9つのポータルがある。
このうち一つのポータルが、戦闘開始10分前に点灯する。
それが”オーナメントポータル”だ。
”オーナメントポータル”はランダムで選ばれ、どれが選ばれるかは私たちにも分からない。
戦闘時間は10分間だ。10分間のどこか、これもランダムに計測時刻が設定される。
計測時刻に次の行為が成されていたらポイントが入る。
1.計測時刻に”オーナメントポータル”をキャプチャ※1していた陣営に1点が入る
2.計測時刻に”オーナメントポータル”を使ったリンク※2を引いた陣営に1点が入る
ただし、リンク本数に関わらず得点は1点のみ
3.計測時刻に”オーナメントポータル”を沈めるCF※3を作った陣営に2点が入る
戦闘終了後、獲得ポイントが多い陣営が勝利だ。
ただし、計測時刻がいつかはお互いに分からないから、戦闘終了後すぐにどちらが勝ったかは分からない。
戦闘開始は、今から20分後。
それまでに、ブリーフィングで作戦でも練っておくんだね。
分ったかい。」
スキャナーで部屋のポータルを確認したグリが尋ねる。
「おおよそアノマリー※4のクラスター戦に準じているルールである事はアンダースタンドした。
ナウからテンミニッツアフターに”オーナメントポータル”が決まるんだな。
そいつは、いいんだが、ナウは9つのポータルは緑3つ、青2つ、白4つのステータスだ。
”オーナメントポータル”が白ならいいが、緑や青だったらフェアと言えないんじゃあないか?」
クイーンは、軽く微笑み、向かって左の壁に向かって、しなやかに歩きながら
「満更、バカでも無いらしいな。
安心しな、公平性を保つための仕掛けはある。」
壁に鍵を差し込むと、蓋が下に開きコンソールが現れた。
クイーンが操作すると、上方の壁に穴が空きそこから何かが飛来してきた。
バイオが飛んで来たものを注視し、
「あれは、、
ドローン?」
4台のドローンが上空を舞う。
スキャナーを凝視するグリが叫んだ。
「ホワット!?
ポータルの色が変わっている!
あのドローン、イングレスをプレイしているぞ!」
「察しがいいな。
あのドローンは、初期段階での不公平を無くすため9つのポータルに免疫※5をつけている。
そして、あの4台の内訳は、2台がエンライテンド、もう2台がレジスタンスだ。
次の優先順位でプレイするように設定されている。
1.敵色ポータルを攻撃
2.敵色ポータルなく、白ポータルあれば、キャプチャ
3.自色ポータルあれば、アップグレード、シールドいれ、ハック、リンク」
「つまり、あのドローンはそれぞれの陣営の助っ人であり敵。
そして、同陣営のドローンは助っ人とは言え、設定どおりに独自に動くから思い通りにならねえ。
設定を利用するも、邪魔されるも俺たち次第というわけだ。
おもしれえ。」
未体験のバトルに興奮を隠しきれないバイオは、無自覚に獰猛な笑みを浮かべた。
※1.キャプチャ:中立化された白色のポータルをデプロイすることでポータルを所有すること。
※2.リンク:自陣営のポータルから他の自陣営のポータルに「リンク」(線)を引くアクション
※3.CF:3つのポータルをリンクで結んだ三角形。対象をCFで囲むことを、イングレス用語で「対象を沈める」と表現する。
※4.アノマリー:イングレスの背景となるストーリーに基づいた大規模イベント。
世界各地の都市で発生することもあり、イベントでの両陣営の勝敗はストーリーにも影響を及ぼす。
陣営間で、各種ルールで勝敗をつける。過去のアノマリーで実施された主なルールは以下。
・クラスター戦:指定されたポータルを取り合う。
・シャード戦:シャードという破片があるポータルから、この破片をリンクを使用してターゲットポータル(ゴール)へ運ぶ。
※5.免疫:ウイルスを使って反転されたポータルは反転後1時間は再反転できない。
この性質を利用し、反転されたくないポータルをあらかじめ反転しておくことで1時間再反転されないようにすることを「ポータルに免疫をつける」という。
今回の勝負の場合、事前に免疫を付けることでウイルスを使った反転が不可能となるようにしている。