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炎風吹きすさぶ ~最古の八騎士~  作者: dobby boy
タワーゲーム
59/108

第59話 四天王 地勇星 ハートオブクイーン

【これまでのあらすじ】

 真実を探すため、Crystal Tower を登るバイオとグリ。

 地巧星の不二(ふじ)と出会い、バイオの目的であるハートオブクイーンは、百八の魔星の実行部隊の頂点である四天王の一人であり、会えば魔星加盟の査定を受ける事になることを知る。

 長い旅路の果て、遂に二人はハートオブクイーンの待つフロアに向かうのであった。


 エレベーターが静かに止まり、扉が開いた。出ると真っ直ぐの廊下が10メートル程続き、突き当りが行き止まりとなっている。行き止まりを左に曲がるふじの後ろについていくと、いくつかのブロンズ像が並ぶ、広い正方形の部屋に出た。


 50メートル先に配置されたロダン作「考える人」の前に、黒い革ツナギのライダースーツを纏った短い金髪の後ろ姿が見える。金髪の人物は、こちらに気付かないのか、手元のスキャナーの操作に集中しているようだ。


 呆れ顔のふじが、首を左右に振りながら、黒い後ろ姿に声をかける。

「またさー。

 やー(あなた)は、暇があるといつもグリフ※1をしているさー」


 金髪の人物は、ゆっくりとこちらに振り返りながら、静かなハスキーボイスで答えた。

「イングレスというのは、突き詰めれば、効率的な補給と、必要アイテムを整理することが勝敗を左右するゲーム。常にそこに注力するのは当然の事。あんたが、無頓着すぎるんだよ、ふじ」


 バイオは、振り返ったその細長で小さな顔を凝視する。

 短く、野性的なカットの金髪。

 アーモンド型の鋭い光を放つ挑発的な両眼。

 鼻梁の通った鼻に、やや厚い唇。

 それは、トータルで見て美しいと言える顔立ちであった。


 そして、視線を下に移すと、ピッタリと張り付く革のスーツが、その細身の体のラインを際立たせる。特に目を引く胸元の二つの膨らみは、黒い光沢のある革を強い力で外に向かって真っ直ぐ押し出し、腰回りの細さと比べアンバランスな大きさであった。


 その切れるような美貌を持つ()()を見つめながら、バイオは平たい声でふじに問いかける。

「あいつは誰だ? ふじ」


 戸惑いの表情を浮かべ、ふじが応える。

「へ、、誰って、バイオ、やー(あなた)が会いたがっていたクイーンさー」


「違う! やつは、クイーンでは無い!

 確かに、細身で短い金髪、鋭い眼光、雰囲気は似ている。だが、それだけだ!

 何より、何より、、クイーンは男だ! あいつは、女じゃあないか!」


 バイオの叫びに、金髪の女が応える。

「それは、こちらのセリフ。バイオとか言ったな。あんたは、誰なの? うちに、あんたのようなメンバーはいない。チーム立ち上げ当時からいたこともない。

 もっこすでの、ふじとの会話も聞かせてもらったが、あんたが言っていたような事件など存在しない。チームBIOのメンバーを騙り、私に会いに来た目的は何?」


 金髪の女の言葉に、グリが反応する。

「ウエイト! チームBIOのサブリーダーであるハートオブクイーンのネームをディシーブ(騙る)しているのはユーじゃあないのか。ここにいるバイオは、元チームBIOのエースエージェント、元のネームはスペードオブエースだ。そのネームは、近隣県にも鳴り響いていた。ヒーが、ディシーブ(騙る)するとは考えられん」


 金髪の女はグリにも噛みつく。

「スペードオブエースは確かにうちのメンバーでエース。だが、バイオ、お前とは別人だ! なるほど、うちのチームメンバーの名前だけは把握して、成りすましているのか」


 激論の中、一人冷静なふじが仲裁に入る。

「まあ、待つさー。やったー(あなたたち)は、おいらが見る限り、全員嘘を言う人間には見えないさー。何か、ボタンのかけ違いがあるさー。一つずつかけ違いを直していくさー。

 クイーン、バイオが言っていた事件は無かったと言っていたが、なら、チームBIOの解散の原因は何さー」



 ※1.グリフ:グリフハックの略。イングレスにおいて、アイテムを取得する方法はポータルへのハックである。

 グリフハックは、ハックの際、特殊な手順を踏むことでポータルより最大五つのグリフ(絵文字、象形文字を意味する英語 glyph)が高速で表示される。表示されたグリフを正確になぞることにより、取得するアイテムを多く手に入れる事が可能となる。多くのアイテムを取得する必要がある補給の際には、グリフハックは不可欠な行為となる。


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