第57話 クイーンの元に
【これまでのあらすじ】
真実を探すため、Crystal Tower を登るバイオとグリ。
空腹の2人にもっこすを振舞う謎の男。彼こそが、新たなる百八の魔星、地巧星の不二であった。
戦いではなく話し合いを要求するふじと、胸襟を開いて話し合うバイオとグリ。
バイオの目的であるハートオブクイーンは、百八の魔星の実行部隊の頂点である四天王の一人であり、彼に会うことは魔星加盟の査定を受けることを意味すると、ふじは言うのであった。
「ハートオブクイーンが実行部隊の頂点である四天王の一人だと。」
突然の事態に驚くバイオは、ふじに問いかける。
「四天王とは何なんだ。
魔星の組織体系はどうなっているんだ?」
ふじは、静かにバイオに語りかけた。
「頭領を頂点に、
戦略、軍略を司る幹部。
そして、実行部隊さー。
実行部隊の頂点が四天王。四天王配下に部隊が8つ。
幹部と、実行部隊の査定を通ったものは、頭領と会い、彼が認めたとき、新たなる魔星が誕生するのさー。」
「既に108人いるのに、さらに増やすのか?」
「ああ、百八というのも方便さー。
実際は90弱というところさー。」
組織の話を聞いたグリが、疑問を口にした。
「Fumh. で、頭領とはどういうガイだ?」
「それは、おいらの口からは言えないさー。
その正体は誰も知らないさー。
素顔は仮面で隠されている。」
「マスクだと?
それは、メタファーではなく、リアルにマスクをかぶっているということか?」
グリの問いかけに、ふじは、冷静に答えた。
「そうさー。
だが、今やったー(あなたたち)が興味があるのは頭領ではないはずさー。
おいらについてくるさー。
クイーンが待つ実力査定のための階に連れて行ってやるさー。」
「ありがてえ。
あんたの言葉に甘えるぜ。」
謝辞を伝えるバイオに対して、グリの諫言。
「ウェイト!バイオ。
裏切りの相をもつ、このフジというガイをミーはトラストできん。」
「グリさん。
ここまで来れたのは、あんたのおかげだ。感謝している。
だが、俺は奴に会うチャンスがあるなら、そこに危険であったとしても、見逃すわけにはいかねえ。
行った先で、あんたの言うように罠が仕掛けられていたら、俺のすべてをかけてあんたを守る。
だから、頼む!」
バイオの真摯な目を見たグリは、溜息をつき、
「オールライト!
そうだな。そもそものパーパスはクイーンに会うこと。
ここで、トラップを恐れたところで、他にメジャーがない以上進むしかない。
ユーのいう通りだ。」
「ありがとう。グリさん。
ふじ、ハートオブクイーンの元に案内してくれ。」
2人を交互に見たふじが、顎をしゃくった。
ふじの後を追い、奥の部屋に入ったバイオは、工場のようなオートメーション化された調理施設を横目に、右奥の扉の先のエレベーターに乗り込む。
バイオの次に、グリが乗り込んだのを確認したふじが、ボタンを操作すると扉が閉じた。
そして、エレベーターはゆっくりと、だが確実に目的の階に3人を連れて行くのであった。