第55話 百八の魔星
【これまでのあらすじ】
真実を探すため、Crystal Tower を登るバイオとグリ。
空腹の二人に神戸のソウルフード もっこす中華そばを振舞う謎の男。彼こそが、新たなる百八の魔星、地巧星の不二であった。戦いではなく話し合いを要求するふじに、自らのチームBIO除名の経緯を話すバイオ。彼を陥れたのは、チームリーダーであることを語るのであった。
「バイオはザッツファクトを、チームメンバーに伝えようとしたが、誰ともコンタクトが取れなくなっていたってわけさ」
グリの言葉を引継ぎ、バイオが、
「その後、チームBIOのサブリーダーがCrystal Towerに来たという話を聞き、ここに来たんだ」
「チームBIO解散の裏で、そんなことがあったとはさー。その話は初耳さー。そんな大事があったら、奴等も言いそうなものだが。。」
ふじは、バイオの眼を凝視し、
「んー。とはいえ、やー(あなた)の眼は、嘘をついている眼じゃないさー。そして、今気づいたが、やーは面白い眼をしてるさー。龍眼※1ってやつさー」
そして、今度は、グリに目を向け言った。
「そして、やーは、んー、乱世の肝雄の相さー」
ふじの目を見返したグリは、微かな笑みを浮かべ応える。
「Hum。ユーも、眼相を見るのか。奇遇だな。ミーも多少は見るのさ。ユーは、、Oh、裏切の相が出ているなあ」
ふじも柔らかな笑みを浮かべ、
「へえ、おいらに裏切の相が。へ、面白いさー。
兎にも角にも、やったー(あなたたち)がここに来た理由はよくわかったさー。そういうことであれば、おいらも協力するさー」
「協力? どういうことだ?」
訝るバイオの目を正面から見据えたふじが、誠実な態度で答えた。
「やーを、クイーンに会わせてやるさー」
「な、なんだって? なんでだ。あんたは魔星だろ? 魔星の目的は、Crystal Towerへの侵入者の排除じゃあないのか?」
「それは、名目であり、方便さー。魔星の目的は、戦いを通して、侵入者の実力と人間性を見極めることさー」
「ホワイ、そんなことを?」
眉間に皺を寄せたグリが尋ねる。
「見極めた結果、信用できると判断したものを同志とするためさー」
予想外の言葉に、バイオは、
「同志だと?」
「ああ。魔星の始まりは、Crystal Tower隆起の際に、内部に取り残されたものさー。そのうちの、大部分は専用エレベーターで外部に出たが、いくらかは残ったさー。
それが最初の魔星さー」
「最初の魔星?」
「そうさー。最初の魔星は、目的のため同志を増やす必要があると考えたのさー。そのため、外部から入ってくるエージェントが同志となりえるかどうかを見極めているさー」
「ミーたちも、試されているというわけか」
「察しが早いさー。やったー(あなたたち)は、かつてのクイーン、そしておいらと同じ試練を受けているさー」
「な、なんだと? ふじ、あんたも俺たちと同じように、外から来たエージェントなのか?」
思わず声量が増したバイオ。
「うむ。最初の魔星と外から来た魔星は、宿星の名前付けで区別出来るさー。
つまり、宿星に”天”の文字が付くものが最初の魔星。”地”の文字が付くものが外から来た魔星さー」
「ということは、天敬星と天狼星の白黒コンビは、最初の魔星ということか」
「そういうことさー。特に、しろさんは、戦略眼、観察眼、統率力に優れ、頭領の信篤い幹部。彼に認められたということは、人間性の査定はまず合格さー。後は、実力面の査定を残すのみさー」
ふじの言葉に、グリが冷静に応えた。
「悪いが、ミーたちは、同志とやらになるつもりはナッシングだ。ハートオブクイーンとディスカスさえ出来たらそれでいいんだ」
「なら、実力面の査定は避けられないさー。クイーンこそ、実力査定のための実行部隊の頂点である四天王の一人、地勇星の宿星の持ち主なのさー」
※1.龍眼:眼球に、龍が持つと言われる龍玉と同じ輝きを待つ眼相。英雄眼相と呼ばれ、過去に、ゴータマ・シッダールタ、ユリウス・カエサル、イエス・キリスト、平清盛、チンギス・ハーン、ナポレオン・ボナパルト、エイブラハム・リンカーンなどが、龍眼であったと言われる。
この物語はフィクションであり、実在の人物・眼相とは一切関係ありません。