第52話 目的の扉
【これまでのあらすじ】
鉄壁の男vahohoとともに、海底トンネルを通ってCrystal Tower地下ドックに到着した和田美咲。
直通エレベーターで到達した部屋では、武装ドローンがイングレスをプレイしていた。次のフロアへの直通エレベーターに通じる扉を開くためには、イングレスの協力プレイが必要だと言うのだが。
「よし、そんじゃ行くか! おっさんが守るポータル、つまり、開けるべき扉はどれなんだ」
美咲の問いかけに、vahohoは鷹揚に答える。
「入ってきた扉の対面に位置する扉だ」
「私ら、どの扉から入ってきたんだっけ? どの扉もおんなじ形で、部屋にも目印無いから分かんなくなったよ」
聞いたvahohoが、目を見開き焦りの声を上げる。
「な、なんだと。お前も分からなくなったのか? 俺も、話したり考えたりしているうちに、方向が分からなくなっちまった。
ぬかったな。エレベーターを降りたときに、ポータル名を確認しておくべきだったな」
天を仰ぎ、右手で両眼をおさえた美咲が、呆れた口調で尋ねる。
「。。おっさん。。勘弁してくれよ。。
それで、入る扉が違っていたら、どうなるんだ?」
「この部屋に繋がるエレベーターは、決まった部屋と双方向で行き来するようになっている。入って来た扉に入れば、地下ドックに戻される。
まあ、これが一番ましだ。もう一度、エレベーターに乗れば、ここに戻ってこれるのだからな。
問題は、他の六つの扉に入った場合だ。この場合、この部屋と同じ仕掛けの部屋への直通エレベーターに乗せられる。行った先の部屋で、入ってきた扉に乗って、ここに戻ってくる必要がある。当然扉を開くには、この部屋と同じ仕掛けをクリアしなければならねえ。
ただ、違うのが、ドローンの数だ。この部屋の設定は、人数×三だが、人数×一~人数×六の六通りの設定の部屋のどこかに行くことになる」
聞いた美咲は、かぶりを振って聞き返した。
「ちょっと待てよ!? 人数×六って。十二体ってことか。そんなの流石にクリアできねえだろ。なんとか、人数×六の部屋、それに人数×五の部屋の二つだけは外さないと」
「その通りだ。×六の部屋に入ったが最期、出ることが叶わず、干からびてミイラになることだろうさ。そして、厄介なことに、目的の扉の両隣が×五と×六の部屋への扉だったはずだ」
「なるほどな。一つ思ったんだけどさ、この部屋に来た後、右回りに一つ一つ扉を調べたじゃん。全部開かないって気付いたのは、少なくとも八以上調べたからなんだよ。
何回調べたか覚えてないんだけど、八か九か十のはずで、十一以上は調べてないはずなんだ。で、調べ終えてから場所を移動していないから、今私の後ろにある扉は、最初の扉か、その一つ右隣か、その二つ右隣のどれかのはずだ」
「そうか! でかしたぞ。後ろの扉のポータル、うむ、ポータル名は”北西の扉”か。
少なくとも、”北西の扉”の先は、×五と×六の部屋じゃない。運が良ければ、地下ドック行き。悪くても、×一~×四の部屋だ。
それなら何とかなる! 俺は、今から”北西の扉”をキャプチャして、エンライテンドドローンの攻撃から守る。俺が守っている間に、お前は他の七つのポータルをすべて攻撃して中立化しろ!」
vahohoの言葉と同時に、美咲は”北西の扉”の対面に位置する”南東の扉”に向かって駆け出した。