第49話 武装ドローンの仕組み
【これまでのあらすじ】
鉄壁の男vahohoとともに、海底トンネルを通ってCrystal Tower地下に到着した和田美咲。
直通エレベーターで到達した部屋では、武装ドローンがイングレスをプレイしていた。
「ドローンがイングレスをやってるって? そんな、あほな! 実在の人間のDNAと紐づいたアカウントでログインしないと、今のイングレスはやれないんだぞ。あのドローン達は、誰のアカウントでログインしてるってんだよ!」
理解出来ない美咲の問いかけに、vahohoが応える。
「八つの塔が隆起したあの時、イングレスのチェックポイント時点※1のMUを持って、共通仮想通貨の配分がなされるようになった。そのため、イングレスのエージェント※2にならなければ、富が得られない。だから、人類は総エージェント化した。
そう言われているな」
「そんなの、小学生でも知ってる常識だっての!」
美咲は唇を尖らせる。
「常識って言われてるものを鵜呑みにすれば、奴らの思う壺だ。歩くこともできない生まれたての赤ん坊や、寝たきりの老人はどうする?
病気や怪我で四肢に障害を負っている者や、イングレスのシステムを理解出来ない者は?
それに、素直に決定事項に従わない人間も一定数いるんだ」
「それは。。考えた事無かった。けど、言われてみれば確かにそうだ。。」
「各国政府は、そういう人間のアカウントを一括で管理し、その者たちに富の配分を出来るように便宜している」
「どうやって?」
「政府直轄のデータ管理団体に運営は任されている。運営方法については、秘匿されているが、こいつらのようなAI制御のドローンに組み込んでMUを稼いでいるんだ」
「秘匿されていることを、なんでおっさんが知ってるんだよ。あ、まさか。。」
「そうだ。データ管理団体は、実質八騎士が運営している。無論、大っぴらにはなっていないがな。おれの複数のアカウントも、そこから失敬したものだ」
「なるほど。あの複あかの出所は分かったよ。で、このドローンに乗っているのも、そういうアカウントって訳だ」
「そうだ」
「問題は、この扉をどうやって開けるかだけど。。」
「ドローンの数は、入室した人間の三倍で設定されている。そのため、今この部屋には六台のドローンがいる。そして、ドローンの側面をよく見てみろ」
美咲は、ドローンを観察し気付いたことを呟いた。
「あ、エンライテンド※3のマークのやつと、レジスタンス※4のマークの二種類いる!」
「エンライテンド陣営の三台とレジスタンス陣営の三台が八つのポータルを取り合っている。七つのポータルが中立で、一つのポータルのみキャプチャされている状態のとき、キャプチャされているポータルの扉が開くようになっている」
「六台のドローンがプレイしている中で、狙って他全部白くして、一つのポータルだけキャプチャとか出来るのかな?」
「ドローンの行動は全くの不規則じゃねえ。次の優先順位でプレイするように設定されている。
1.敵色ポータルを攻撃
2.敵色ポータルなく、白ポータルあれば、キャプチャ
3.自色ポータルあれば、アップグレード、シールドいれ、ハック、リンク」
「てことは、おっさんがエンライテンドポータルを中立化※5してキャプチャして、守っていたら、エンライテンドドローンは、1のルールに従って、そのポータルに釘付けになる。その間に、あたしが、レジスタンスポータルを攻撃して白くしていけばいいわけか」
「そういうことだ」
「でもさ。これって、おっさんとあたしにとって都合よすぎる設定じゃね。なんか、怪しいってか罠とかじゃねえの」
「ほう、良く気付いたな。この設定は、他の奴は通さず、俺と大仏が組んだ時だけ通れるように考えたものだ。奴らの企てを阻止するためにな。計画通りには、いかなかったが、結果としては大仏の後継者であるお前と俺が通ることになった」
※1.チェックポイント時点:イングレスでは、エージェントが作成したCF(コントロールフィールド)の中のMU(マインドユニット。フィールド内の人口)の数を、レジスタンス(青)とエンライテンド(緑)の両陣営で競うが、計測されるMUは五時間ごとに設定されたチェックポイント時点で存在するCFのMUである。
※2.エージェント:イングレスのプレイヤー
※3.エンライテンド:二つ存在するイングレスの陣営の一つ。マークは以下。
※4.レジスタンス:もう一つのイングレスの陣営。マークは以下。
※5.中立化:ポータルの状態には、エンライテンドキャプチャ(緑色)、レジスタンスキャプチャ(青色)、中立化(白色)の三種類ある。
ポータルをキャプチャするには、攻撃して中立化する必要がある。