第48話 人狼対決の行方
【これまでのあらすじ】
真実を探すため、Crystal Tower を登るバイオとグリ。
三階の直通エレベーターから到着した階で、Crystal Towerを守護する百八の魔星の二人、天狼星のkurokirby、天敬星のしろと人狼で勝負する。状況打破のための雑談の中で、チームBIOのサブリーダーのことを尋ねるバイオ。しろは答える代わりにバイオの発言の真偽を教えるよう交渉するのであった。
【主な登場人物】
・バイオ:本編の主人公。エフコム通信の伝説のハガキ職人。
・グリ:バイオのサポートをする謎のエージェント。バイオの持つ特殊能力“龍眼“を開花させた。
・kurokirby:胸にリベレートの紋章を持つ仮面の男。百八の魔星の一人で、天狼星の宿星を持つ。
・しろ:天を敬い人を愛す大人。百八の魔星の一人で、天敬星の宿星を持つ。
バイオは、はっきりと答えた。
「しろさん! あんたの申し出受けるぜ。俺が預言者で、グリさんが村人であるという発言は、天地神明に誓って本当だ」
「ほうかあ。よう分かったあ」
しろの口から重々しい言葉出た直後、スキャナーからアラートが発せられる。
『話し合いフェーズ、残り一分』
「バイオ! 残りタイムが少ない。ミー達の投票先を決めねばならん。しろか? kurokirbyか?」
グリが焦りの混じった言葉をバイオに投げかける。
「グリさん。時間をくれ」
「バット、後10セカンドだぞ! 9,8,7,6,5,4,3,2」
「しろさんだ! しろさんに投票しろ! グリさん!」
バイオの叫びの直後、スキャナーから話し合いフェーズ終了のアラート音が鳴り響いた。
『これより投票フェーズ。人狼と判断したプレイヤーに投票願います』
スキャナーからの案内メッセージに従い、全員が投票を終了。
スキャナーに、投票により処刑されるプレイヤーの名前が表示される。
処刑:kurokirby、しろ
結果:人狼であるしろが処刑されたため、村人チーム勝利!
「やったのか。。」
放心のバイオが呟く。
「YES!」
珍しく興奮したグリが叫ぶ。
「ぬう!」
kurokirbyが呻く。
「こいは、やられもしたあ。バイオどん、一つ種明かしをお願いしもうす。最後、なんでおいが人狼と分かったんじゃあ。運否天賦に任せた方法とは到底思えもさん」
しろが頭をかきながら、尋ねた。
「ミーも、知りたい。ホワイ、あのギリギリでしろがウエアウルフと分かったのか。いかなドラゴンアイでもディフィカルトのはずだ」
「ああ。まず、しろさんが俺の発言が真実かどうかを聞いた意図を考えたんだ。しろさん自身は、しろさんが預言者で無い事を知っているから、俺の発言が真実であることを知っている。ということは、あの質問は自分が知りたいから聞いたんじゃない。
kurokirbyに自分の発言が嘘であることを、教えることが目的だと思った。しろさんが村人であれば、人狼であるkurokirbyは誰に投票するかを、確認するはずだ。kurokirbyとしては、俺が嘘を言っている可能性がゼロでない状態では、しろさんが誰が人狼か確信していないと思うはずだからな。
一方しろさんが人狼であれば、村人であるkurokirbyは、しろさんが俺の発言を受け入れた段階でしろさんが、人狼と確信し、確認なしで自分に投票するはずだ。それで、最後まで白黒コンビに投票先の確認が無かった段階で、しろさんが人狼であると確信したんだ」
「なるほどのお。これは、やられもしたあ。おいたちの負けでごわあ。これで、勝負は一勝一敗になりもしたあ。次で、決着でごわ」
「な、なんだと! ま、まさか、最初の模擬戦を勝敗に数えているのか?」
「模擬戦? なんのことでごわすか? そんな事を言った覚えはなか。のう、くろかびさあ」
「ああ。幻聴でも聞いてたんだろうよ!」
「そ、そんな。。」
バイオの消沈した声を、グリの毅然とした声が掻き消した。
「HEY! ユー! リッスン!」
『・・か、こん対戦は模擬戦とする! バイオどんも、グリどんも、それでよかな!』
「そ、それは!!」
kurokirbyの席から余裕を無くした声が、発せられた。
「このエネミーのホームで、ユーたちのワードを全面的にトラストなどできないからな。念のため、スキャナーにレコードさせてもらった!」
「ふっふっふっふ、があはっはっはっはー! こりゃあ、参ったあ。この勝負、完全におはんらの勝ちじゃあ」
「おい、しろさん! いいのか!?」
「くろかびさあ。おいは、彼らは信用出来ると思いもす。おいの顔に免じて、通してやってくれんかあ」
「。。。あんたがそういうなら」
kurokirbyは、壁まで歩き、懐から取り出した鍵を差し込み回し、叫んだ。
「おい! バイオ、グリ、電波は戻した。ポータルをキャプチャして、エレベーターに乗れ!」
バイオはスキャナーを取り出し、確認。
「このテーブルが、ポータルだったのか」
言いながら、キャプチャした。
「こっちじゃあ」
しろが、二人を先導し、正面の扉に向かい、ボタンを押した。
扉が開き、エレベーターに乗り込んだバイオとグリに、しろが話しかけた。
「おう。そうじゃ。バイオどん。約束のことを、教えもす。上階に行かんね。おはんの求めるものはそこにありもす」
「上階に、ハートオブクイーンがいるのか?!」
バイオが、勢い込んで尋ねた瞬間エレベーターの扉が閉まり、上方に動き出した。エレベーター内にボタンは無く、開けることも、止めることも出来ないことに気付いたバイオは呆然とした。
そんなバイオの肩に、グリは優しく手を置いた。