第46話 禁断の交渉
【これまでのあらすじ】
真実を探すため、Crystal Tower を登るバイオとグリ。
三階の直通エレベーターから到着した階で、Crystal Towerを守護する百八の魔星の二人、天狼星のkurokirby、天敬星のしろと人狼で勝負する。本戦では、膠着状態に入り、双方決定打を欠く状態に。それを打破するため、しろは雑談を提案する。
【主な登場人物】
・バイオ:本編の主人公。エフコム通信の伝説のハガキ職人。
・グリ:バイオのサポートをする謎のエージェント。バイオの持つ特殊能力“龍眼“を開花させた。
・kurokirby:胸にリベレートの傷を持つ仮面の男。百八の魔星の一人で、天狼星の宿星を持つ。
・しろ:天を敬い人を愛す大人。百八の魔星の一人で、天敬星の宿星を持つ。
しろは、おもむろに話し始めた。
「バイオどん、グリどん、おはんらあ、今の世をどう見ちょる。この何でん、イングレスで決むるゆうこの世界を。おいは、いささか危のう思うちょる」
しろの問いかけにバイオは戸惑い、
「どういうことだい? しろさん」
「うむ。例いばじゃあ。例いば、誰かが世界中すべてを覆うCFを作りもしたら、どうなる? 世界はその誰かのものになりもす。そんな可能性がある世界ということじゃあ」
グリは、呆れたように応える。
「Ha! ミスターしろ。それはウォーリーがすぎるというものだ。考えてもみろ、INGRESSの実験期間含めて、ワールドを覆うCFを作ったものなどいない。当然だ。ワールドに無数に存在するポータルは、無数のリンクの存在を意味する。そのオールをかい潜らねば、ワールドを覆うCFなど作れないのだからな!」
「分かっちょる。あくまで可能性の話じゃあ。じゃがのお、」
しろの発言を、kurokirbyが止めた。
「しろさん! そこまでにしておけ!」
仕切り板で見えないが、しろは、目を瞑り首を左右に二回ふり、
「そうじゃのお。こげえな話は、してもしょおがなか」
バイオは、しろの意図を図りかねながらも、この機会を利用して問いかけた。
「しろさん、俺からも聞きたいことがある。ここに来たという、あるエージェントについてだ」
「言うちみい」
しろは鷹揚に応える。
「チームBIOのサブリーダーで、エージェント名はハートオブクイーンだ。俺たちは、奴に会うためにここに来たんだ」
「チームBIOのハートオブクイーン。。んん、おう、おいはその名を知っちょりもす」
しろの回答に、バイオは驚き、矢継ぎ早に確認する。
「知っているのか! 奴は、ここにいるのか?」
数秒の沈黙の後、しろは静かに、ゆっくりと応えた。
「それに、答えるには条件がありもす」
「なんだ? 言ってくれ!」
「おはんが預言者で、ぐりどんが村人といったあの発言、本当か嘘か答えてくれもはんか? その答えが真実であることが分かれば、こん試合終了後に教えもす」
「なんだって?」
しろの意外な提案に、バイオはその真意を図りかねる。
「ノーだ! バイオ、答えてはならん! トゥルーの場合、ゼアサイドがウエアウルフであることが確定し、ゼイは防御に専念出来るのに対し、ミー達はどちらがウエアウルフが分からず、投票で勝てる確率が50%となる。ライの場合、しろの主張がトゥルーとなりユーがウエアウルフであることが確定し、ゼイはユーに投票して、負けが確定してしまう。
それに、イッツシングが分かったところで何になるんだ? どっちにしても、ミー達は上をめざすしかないんじゃあないのか? ヒアで負けてしまったら、上にはいけないんだぞ!」
グリが説得する。
「グリさん。あんたの言うことは分かるんだ。だが、本当の場合の勝率50%だが、それは、今の状況より悪くなっているのだろうか? そして、俺たちにとって勝率100%にする手段などあるのか?」
「Mmm。勝率100%にするメソッドか。。確かにナッシングだ」
「運否天賦に任せる方法になってしまうが、俺に任せてくれないだろうか」
暫くの熟考の後、グリはバイオに優しく言葉を発した。
「オーケー。ユーのドラゴンアイに委ねる」