第45話 通話相手は。。
【これまでのあらすじ】
ウミエに遊びに来た途中に怪しい二人組を見つけたたまごろうは、二人を追うためクリスタルタワーへ向かう。
激しい追跡戦の末、銃弾に倒れるが、体内のにゃんたろう、そしてアダムの能力で蘇生し、塔のセントラルコントロールルームで陰謀を知る。陰謀を阻止するため、心当たりの人物に連絡をとるのであった。
スマホから発信して、六コール目で相手が出た。
「先生ですか。ご無沙汰しております。たまごろうです」
「おお、君か。 久しいな。連絡をくれたということは、症状が出たということだね。すぐ伺わせてもらうよ。自宅かね」
久しぶりだが、変わらぬ暖かみのある声に安堵した。
「いえ、症状は出ていません。恐らくこの先、症状が出ることは無いと思います」
「どういうことかな。そういうことは医師が判断するものだよ」
「すみません、先生。ただ、私が連絡させてもらったのは、医師としての先生にではありません。私が相談したいのは、八騎士と敵対する”火”としての先生です」
一瞬の沈黙の後、受信口からは今まで聞いたことの無い冷たい声が響いてきた。
「君は、今どういう状況にいる。説明してくれ」
大きな深呼吸の後、たまごろうは、これまで起きたことを順を追い、丁寧に相手に伝えた。たまごろうからの話を聞き終えた相手は、内容を吟味するためか長い沈黙の後、確認を始める。
「コントロールポータルは、君が反転して緑なのだな?」
最初に聞かれた内容がイングレスについてのことであることに意外性を感じつつ、相手がイングレスを知っている前提でたまごろうは答えた。
「そうです。反転前は、青P8で何本かリンクが張られ、CFが作られ、辺りは青で沈んでいました」
大きなため息の後、相手は独り言のように呟く。
「まさか、無駄になったと思っていた策が生き返るとはな」
意味を図りかねたたまごろうは、相手が話すのを待った。
それを察知した相手が語りだした。
「君の推測通り、私はかって八騎士の組織の末端に属した”火”と呼ばれたものだ。生まれたときから、”火”として生きることを宿命づけられていた。
そういう家に産まれたんだ。先代に倣い、宿命に従って生きてきた。だが、長である”日”が語った謀を初めて聞いたとき、私の中に小さな芽が生えたのだ。芽は、任務を果たすたび大きくなっていった。私は、それを誰にも悟られぬようにすごした。
だが、組織の一人の男に感づかれていることに気づいた。私は、死を覚悟したよ。当然だ。その謀は組織にとって過去に例がない大きなものだったのだから。だが、男の一挙手一投足を気にしだした私は気付いた。男も、私と同じ思いを持っていることに。
私は男に自分の思いを伝え、男も私に思いを伝えた。そして、私たちは共に謀に対処するための策を練ったんだ。だが、時すでに遅く、謀は発動され、策が無用の長物になったと思った私は地に潜った。男は、残り今も戦っている」
「残って戦っているのは、”金”ですか?」
たまごろうは問いかけた。
一瞬の間を置き、”火”は応えた。
「そうだ」