第41話 ”火”のページ
【これまでのあらすじ】
ウミエに遊びに来た途中に怪しい2人組を見つけたたまごろうは、2人を追うためクリスタルタワーへ向かう。
激しい追跡戦の末、銃弾に倒れるが、体内のにゃんたろう、そしてアダムの能力で蘇生し、2人組が向かった先で、塔のセントラルコントロールルームを発見。
据えられたディスプレイから塔の秘密が記載された資料を示される。
それは、とてつもない話であった。これが真実であれば、自分たちが知る歴史は、彼らに改竄されたもの、ということになる。いや、正確には、知られている歴史上の事件の裏側に、常に彼らが介在し、結果を操作してきたと言える。
とても信じられる話ではないが、信じるに足る大きな証拠を自分は突きつけられている。それは、自分がいるこの塔 Crystal Towerだ。
だが、今は過去のことよりも、これからの事だ。これから起こる企てを、どんなことがあっても阻止する必要がある。止めるのだ。この恐るべき八騎士の計画を。
だが。
果たしてできるのか? 彼らは、恐らくすぐに取り返しに来る。それに対抗できるのか? 自分一人で。。
たまごろうは、考える。だが、時間がない。
「待てよ。資料の終盤に何か引っかかることが書いてあったはず」
資料の終盤にページを繰る。
「ここだ」
”極東地区にて、日が決行の勅を発した夜半、二人の者が逐電。以降その所在を確認出来ていない”
「逐電した二人とは誰なのか? なぜ逐電したのか?」
”二人の者”の個所をタップすると、”火”と”金”の二行が表示された。
まず、一行目の”火”をタップする。
それは”火”と呼ばれる者の詳細情報が書かれているページであった。
組織内の役割、家系奥義と呼ばれる業、日本国戸籍上の苗字・住所。そして現当主の名前、各種連絡方法、当主となってからの業績が羅列されていた。
各種連絡方法をタップして、すべての連絡手段を試してみたが不通または、返信無しであった。返信に関しては、待てばあるかもしれない。しかし、組織に追われる元構成員が、そのような迂闊なことをするとは思えない。
「やはり、ダメか。組織が追って見つけられないのに、個人で追うのは不可能か」
諦めかけたとき、当主名と苗字の組み合わせに見覚えがあることに気付いた。
「そんな。そんなことが」
苗字と名前が別々の記載のため気付かなかったが、想えば迂闊なことであった。
「あれほど、世話になった人の名前と同じであることに気付かないなんて」
同姓同名の可能性はもちろんある。だが、賭けてみる価値はある。とりわけ、他に方法が思いつかない今の状況であれば。
たまごろうは、その人から症状が出たときに連絡するように言われているホットラインに電話をかけた。