第40話 預言者の言葉
【これまでのあらすじ】
真実を探すため、Crystal Tower を登るバイオとグリ。
三階の直通エレベーターから到着した階で、Crystal Towerを守護する百八の魔星の二人、天狼星のkurokirby、天敬星のしろと人狼で勝負する。
【主な登場人物】
・バイオ:本編の主人公。エフコム通信の伝説のハガキ職人。
・グリ:バイオのサポートをする謎のエージェント。バイオの持つ特殊能力“龍眼“を開花させた。
・kurokirby:胸にリベレートの傷を持つ仮面の男。百八の魔星の一人で、天狼星の宿星を持つ。
・しろ:天を敬い人を愛す大人。百八の魔星の一人で、天敬星の宿星を持つ。
バイオとグリは、kurokirby、しろとともに、一辺1.5メートルほどの正方形のテーブルに着いた。席順は、バイオから見て、時計回りに、グリ、kurokirby、しろの並びだ。
テーブルの下部には、収納箱のようなものがあり、kurokirbyの指示で人狼アプリをインストールしたスキャナーをそこに置き、アプリを立ち上げている。操作を見られないようにするための配慮であった。さらに、アイコンタクトによる意思伝達を避けるため、テーブルの対角線には仕切り板が嵌められていた。
「準備はできたか? 始めるぞ。スタートボタンを押せ!」
kurokirbyの指示に従い、スタートボタンを押すと、画面にプレイヤー名と役職が表示された。
プレイヤー:バイオ
役職:人狼
いきなり、人狼。。どうする。奴等に気付かれずに、グリさんにどう伝える。奴等は、どうでてくる。バイオの表情に焦りの色が拡がる。
仕切り板越しに、バイオの戸惑いに気付いたように、しろが、静かに話し始める。
「くろかびさぁ。バイオどんも、グリどんも、こがぁな、ゆっさ(戦い)は初めてじゃあ。いきなり、本戦は酷じゃあ。先ずは慣れるためにも、模擬戦から始めんか」
これだ! この思いやりこそが、初めて会う目の前のこの大男に惹かれる理由なのだ! 自分のためで無く、人のために生きる。その行動基準が一貫している。それがゆえに、接する人間は逆にこの人に認められたい、この人のために生きたい、この人のために死にたいと、思うのだ。
「確かに、あんたの言う通りだ。分かったぜ」
恐らく、kurokirbyもそうなのだろう。言葉遣いこそ敬語では無いが、しろに敬意を抱いているのが分かる。
しろは頷き、
「よか、こん対戦は模擬戦とする! バイオどんも、グリどんも、それでよかな!」
バイオもグリも、異存は無かった。
「団体戦は、個人戦とは違う戦略がありもす。特に重要なんは、預言者じゃあ。ここんハウスルールじゃあ、預言(特定の一人が人狼か否かを見分ける能力)は昼に使いもす。※1
ちょうど、おいが預言者なんで、こつを教えもす。預言者で正体を探るのは、相方じゃあ。今回、くろかびさぁは、、、村人じゃ」
「敵の正体を探るのではないのか?」
「そうじゃ。大事なんは、人狼がどちらの側にいるかを知る事じゃあ。敵を探ると、指定したもんが、人狼であれば敵側が人狼と分かるが、指定したもんが、村人じゃったら、人狼のいる陣営を確定できもさん。だが、相方ならば、人狼であれば、当然自分側が人狼、人狼でなければ、敵側が人狼と分かるんじゃあ。今回の場合、おはんらの陣営に人狼がおることが分かりもす」
「おう! なるほど」
バイオとグリは、膝をうった。
※1.預言者の能力を使う時間帯は通常、夜とされるが、昼とすることも参加者の合意があれば可能。