第39話 八騎士
【これまでのあらすじ】
鉄壁の男vahohoとともにCrystal Towerへ向かうため三宮地下大空洞を進む和田美咲。
唐突にvahohoは八つの塔について問いかける。八つの塔の世界同時隆起を仕組んだのは八騎士であると言うのであった。
「八騎士?」
「そうだ。世界の八拠点で協調、暗躍してきた奴らだ。世界の歴史の裏舞台に、常に奴らの影があった。正式にいつから存在するのかは分からねえがな」
「なんか胡散臭い話だけど、世界中にあって協調してたんなら、少なくとも飛行機が出来てからだろうな」
「そうとも言えねえ。俺の知る限り、平清盛は八騎士だった」
「そんなアホな! そんな時代に、どうやって世界中に分散してる奴らが協調できるんだよ!」
「わからねえ。だが、確かな事だ」
「なんで、おっさんはそんな自信満々に言うんだ? おっさんは、八騎士とどんな関係が、、
、、、あっ、教授がおっさんのこと、”サー”って読んでた! ”サー”って騎士の呼び名だろ。まさか、おっさんが八騎士?」
美咲の問いかけに対して、僅かな沈黙の後、徐々に大きくなる水の音を上回る音量で、vahohoは語り出した。
「俺は、奴らの使いっ走りの一人さ。親父から職と業を受け継いだんだ。親父は祖父さんから。祖父さんは曾祖父さんから。綿々と受け継いできた」
「業って、あの複あか?」
「そうだ。もっとも、受け継いだのは刀を四本同時に扱う四刀流の業だがな。それを、アレンジしたのがあれだ」
「職っていうのは?」
「この地を統括する八騎士の一人を補佐し、その指揮下で行動する。そういう役割さ。色々と人に言えねえ、汚れ仕事をしてきた」
「汚れ仕事?」
「子供を人質に、思惑通りに人を動かしたこともあった」
嫌悪感に眉を顰め、美咲は吐き捨てた。
「なるほど。確かに使いっ走りだな。
って、そんな大事なことを私に話して大丈夫なのかよ?」
「待て、おしゃべりはここまでのようだ。着いたようだ」
立ち止まったvahohoが指さす先では、何処からか光が差し込み、巨大な湖の姿を映し出していた。地下水脈が三方から合流し、真ん中付近に渦が巻いている。
「ここに飛び込むのか? あの渦に飲み込まれんじゃん」
渦の勢いの強さに慄きながら、美咲が尋ねた。
「ふふん。怖いのか?」
悪戯っぽく応えるvahoho。
「なんだよ。さっきの寝言を馬鹿にした仕返しかよ。大人げないな、おっさん!」
「あの渦の先が海底トンネルさ。心配するな。渦が勝手に目的地に連れて行ってくれるさ」
渦の先に繋がる目的地を見据えながら、vahohoは応えた。
「ホントに?」
「行くぞ」
渋る美咲の右肩を強引に抱え込み、vahohoは無造作に黒い水に飛び込んだ。水しぶきが舞ってすぐ二人は渦に吸い寄せられ、その中心に飲み込まれ姿を消した。
湖は、何事も無かったかのように真ん中付近で渦を巻いていた。