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第22話 緑と青
本榧の足付碁盤を挟んで、二人の男が対局していた。
すでに終盤であった。
「面白いものよな。この世界は。いや、人間がというべきか」
やや優勢な白が、黒に対してというより自分に対しての如く語る。
「ある時は、このように白と黒」
白が勝敗の帰趨を決定づけかねない一手を着手後、独り言つ。
長考の黒を見ながら、
「ある時は、赤と黄。時代は変われど、行きつくところ、一方が他方を駆逐することに尽力するが、決着はつかず次の対局に移る。悠久の昔より同じことを繰り返す」
長考の末、状況を好転する手を見つけた黒が着手し、初めて返答する。
「そして、現在は、緑と青でございますか」
「うむ。だが、それも終わる。我らが終わらせる」
白は静かに応えたのち、おもむろに着手。
脂汗を流し盤面を見つめる黒。五分の長考後。
「ありません」
黒の投了による決着であった。
黒の投了の声が合図のように、襖が音もなく開き、何人かの者が部屋に厳かに入って来た。僅かな衣擦れの音だけを残し、整然と並べられた座布団に正座し、二人に座令した。