第19話 そのとき仮面は舞い降りた
たまごろうはどうしたのか。クリスタルタワーに突然駆け出してから、六時間。日は傾いていた。よんは、モザイクの噴水前でたまごろうの身を案じていた。
あのとき、二人組の男達を凝視したたまごろうの眼差しは、クールだった。何かがあったのだろう。今のたまごろうなら、何があっても大丈夫だとは思うのだが。。何か胸騒ぎが止まらない。
その時、それは起こった。
最初は気付かなかった。
グラスの水が小さく波紋を作ったときに、よんは異変に気付いた。
「地震?」
地面が、揺れていた。だが、次の瞬間、これが地震でないことを、驚愕と共によんは、理解せざるを得なかった!
クリスタルタワーが、クリスタルタワーが、、、、上に、上に、上に、、、、伸びているーーー!
そう、クリスタルタワーが、地から天にせりあがっている。普段見せていた姿は一部に過ぎず、地下深くまで本体があったのか。よんは、一瞬に理解した。そして、たまごろうのことを考えた。
この現象にたまごろうが、関わっている!? よんは、揺れの中、クリスタルタワーに走った。風のように。叫んだ。雷のように。
「たまごろーーーー!」
クリスタルタワーに着いたとき、揺れは止んでいた。見上げる。頂上は見えない。一体どれだけの高さになったのか。
「たまごろーーーー!」
叫んでも返事は無い。
そのとき、上空から、何かが、舞い降りてきた。ひらひら、ひらひらと。
それを、頭の上で捕まえ、眼前に持ってきて確認した瞬間、よんは、踞り、号泣した。
それは、たまごろうが片時もはずさなかった狐の仮面だった。仮面の額部分には不気味な穴が空き、その周囲はひび割れていた。
「たまごろーーーー!」
よんの叫びが、暗黒の夜にこだまする。これから始まる暗黒の時代を暗示するが如く。