第14話 追跡、地下へ
暗闇の中を階段で降りる。
漆黒の闇故に時間の感覚が曖昧になる。だが、三十分は過ぎているはずだ。
階数で言えば、十階分は降りている。おかしい。クリスタルタワーの三階から降りている。つまり、今は地下七階。クリスタルタワーは、地下三階までのはず。
どうなっているのか。
微かな混乱が、たまごろうを襲う。
その時、唐突に階段の突き当たりにたどり着いた。見えないが、目の前にドアのノブのようなものがある。たまごろうは、それを回して手前に引いた。
どこかから微かに光が漏れているのか、現在地の空間把握ができる。十畳程の円形の空間だ。壁に触れる。冷たい金属の感触だ。人工物? 地下七階に?
もう一度辺りを見渡す。入ってきたドアを含め、四ヶ所に扉のようなものが見える。等間隔に四ヶ所、つまり、それぞれを結ぶと正方形になる位置にあるようだ。
その一ヶ所、右手の扉から微かに香水のにおいがする。二人組は、ここを通ったということか。たまごろうは、扉の前に立ち、眺めた。
開けるためのノブのようなものはない。どうやって開けるのか? 辺りを調べた。
「!!」
扉の右に、小さな箱がある。箱を開けると、小型ディスプレイが光った。
辺りを光りが照らす。ディスプレイには、一文字「山」と表示されている。
「何かの暗号? 山といえば。。」
ディスプレイ下のコンソールから入力する。
「川」
って、安直すぎるか。自嘲の笑みを浮かべるたまごろう。
だが。
音もなく扉が左右に開いた。光りが、漏れ出す。
前方に、左に緩くカーブした廊下が現れた。左右にオレンジ色の灯りが埋め込まれている。トンネルの光りに似ているがわずかにやわらかい。暫く進むと、カーブが終わり直線になった。そのとき、奥で何かが光った。
たまごろうは、とっさに頭を下げた。それまで、頭があった空間を弾丸のようなものが通過し、後方でハデな音をたてた。
立て続けに、光り、それが飛来した。たまごろうは、ぎりぎりのところで避け、後方のカーブ部分に下がった。下に飛来物が落ちていた。
五百円玉?!
どうやら、奥から何者かが、コインを投げてきたようだ。必殺の殺気を込めて!
「しつこいねー! レデ、、お嬢さん!」
あの時の男の声だ。