第101話 北野坂の出会いの真相
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
最上階で、八騎士のNo2であるグリの画策により、コントロールポータルにオニキスシールドがセットされ、巨大なCFが作成された。
魔星のkurokirbyとふじはグリを拘束することを目論むも、仲間のしろの裏切りで頓挫。
ふじに気密扉を閉じさせ、援軍を招き入れるため、グリを引き付けることを目的に、バイオは3年前のことを尋ねるのであった。
「クリスタルタワーのテナントには、あらかじめ八騎士のメンバーを複数人スニーク(潜入)させておいた。
ミーたちが、ミッションをコンプリート出来ない場合、ゼイがフォローするはずだった」
「あらかじめクリスタルタワーに紛れ込んでいた構成員?
しろさんのことか?」
通路から床に上陸したバイオが、左のしろに目をやり尋ねる。
口元を真一文字に結んだしろを横目にグリが応える。
「Yes.バット、当時のしろには八騎士のメンバーの自覚は無かった。
ミーたちのフォローを担うのは別のメンバーだ。
1人はこのガンの本来のオーナー。
バット、ゼイが動き出す前にコントロールポータルが反転されたのだ」
「一体だれが?」
「反転したアカウントは、Dauger」
「D.a.u.g.e.r、、ドージェ!?
魔星の頭領か!
ドージェとは何者なのだ?」
肩を竦めるグリ
「アイドンノウ。
バット、ドージェがこの件のインポータントファクターであることは間違いない。
コントロールポータルを反転したドージェは、更にアンチウィルスをセットし、あろうことかクリスタルタワーに取り残された人間共を煽動し、ともに立て籠った。
こうなった以上、ミーたちに打つ手は無い。
次に、アーティファクトが産まれるまで待つしかない。
へまをしたミーはペナルティとして、暫くダーティワークばかりやらされた。」
忌々し気に、歯軋りを交えながら、言葉を発する。
「俺は、どうなったんだ?」
「ミッションの記憶を消したうえで、元の生活に戻ってもらったよ。
そして、3年の月日が流れ、アーティファクトが産まれる時期が近づいていることを検知したミーは、汚名返上のためCrystal Tower奪還ミッションを志願し、再びキーであるユーを探した」
「北野坂の教会で会ったのは、その時か?」
「Um.そうだ」
「一つ教えてくれるかい。
あの時の俺がCrystal TowerといわくのあるチームBIOと揉めていたのは偶然とは思えねえ。
あれも、あんたらが仕組んでいたのか?」
「Ahー.ユーが属していたチームBIOのチームリーダーに嵌められて追放されたという件な。
YESとも言えるし、NOとも言えるな」
「どういう事だ?」
「ユーは、産まれ落ちた段階で、ある種のキーワードに反応する脳手術を受けている。
教会の庭で対面した時、ユーはミーの眼を見た。
その瞬間に、キーワードを聞かせることでユーに偽の記憶を植え付けたんだよ。
自分はチームBIOの元エージェント”スペードオブエース”でチームリーダーに裏切られ追放されたという、ありもしない記憶をな」
「ば、馬鹿な!
それは、偽の記憶なんかじゃあねえ!
俺は、本当にチームBIOの。。」
「なら、Why、追放となった切っ掛けの作戦が行われた場所すら覚えていない?
Why、チームBIOのサブリーダーであるハートオブクイーンがユーのことを知らない?」
「・・・」
「ユーは自分自身の物を何も持たない人形だ。
そのスキャナにしても、自分自身でファクションチェンジしてレベル16まで上げたと思っているだろうが、教会ですり替えておいたんだよ。
日の閣下の物とな!
ユーの全ては、八騎士である日の閣下の所有物。
そのスキルも、身体も、記憶も、身に着けたもの全てがだ!」
「違う!
俺は俺だ!誰の物でもねえ!
違うんだ。。」
歯を食いしばりつつも、下半身に力が入らず、右膝をつくバイオの後方、霞む霧に紛れてエアロックの扉に忍び寄る長身の男が突然前につんのめる。
「ヘイ、ふじ。
ユーがゴキブリの如くコソコソと動いていることに気付いていないとでも思ったか。N--.
大方、バイオがミーを引き付けている間に、どうにかしようという程度の低い策を練っていたのだろうが、この通りだよ」
硝煙を漂わせる銃口を向けられたふじは、左手で出血する右肩を抑え、脂汗を流しながらも軽口を叩いた。
「チンピラの次は、ゴキブリか。。
その口の悪さ、どうにかしたほうがいいさー。
やーは、有能かもしれないが、上には立てないさー」
正面から笑みを浮かべながら近づくグリと、左手から中腰の捕縛の体勢で歩みを進めるしろを見ながら、ふじは心の中で毒づいた。
『距離があった分、銃弾は右肩の薄皮一枚削った程度で、しろさんとだけなら戦えそうだが、グリの射程に入ったらどうにもならんさー。
ここまでか、バイオ。。』
迫りつつグリとしろの間で跪くバイオを見つめ、ふじは唇を噛んだ。