第100話 そのとき何が起ったか
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
最上階で、コントロールポータルにオニキスシールドがセットされ、巨大なCFが作成される。
グリは八騎士のNo2であり、八騎士の目的は八つの塔による世界を沈めるCFの作成であることが判明。
魔星のkurokirbyとふじはグリを拘束すため、戦いを挑むもグリの体術に苦戦。
魔星のしろ登場で逆転かと思いきや、しろは八騎士サイドであった。バイオは気密扉を閉じることで援軍を招き入れる策を提案するのであった。
バイオの意見を反芻しつつ、首を左右に振った後、敵軍の2人が陣取る床に向って顎をしゃくるふじ。
「あったー(やつら)を見てみるさー。
おいらたちの動きに目くじらをたてているさー。
見つからずに、扉に飛び込むのは無理さー」
平たい声に頷き、首を動かさず視線だけを左に向けるバイオ。
「大き目の雲が近づいている。
あれに、覆われれば、多少なりとも視界が悪くなるはずだ。
その機会を利用し、俺が銃を持つグリさんをひきつける。
その間に、あんたが素手のしろさんをどうにかして、扉に入るんだ。
扉にさえ入ってしまえば、あんたの超握力で閉め切るのは可能なはずだ。
もっとも、この案はあんたが、しろさんを僅かの間とはいえ無力化することが前提だがな。
やれるか?」
「へっ、しろさんとのタイマンか、面白いさー。
やってやるさー。だが。。」
左からの突風に踏ん張りながら、後ろのバイオに確認する。
「やーは、どうやってグリをひきつけるさー?
見ただろう。あり(あいつ)がおいらとkurokirbyを手玉に取るのを。
しかも、今は銃で武装している。まさに鬼に金棒ってやつさー」
「ああ。無論、肉弾戦を挑むつもりはねえ。
心理戦に重きをおくイングレスエージェントとして、奴を出し抜いてやるさ」
「勝算はあるようだな。わかったさー。
是非もないさー。
やーのやり方しか、手は無さそうさー」
左手から到達した白い霧が床に漂いだした。
視界が薄く霞んだタイミングで、前に立つふじの脇を抜け、床に向って揺れる通路を歩き出すバイオは、丹田に力を込め、叫んだ。
「チェックポイントまで残すところ後20分。
もはや、あんたらの勝ちは動かん。
チェックポイントまでに教えてほしい事がある」
「N---.
いいさ。ユーとミーの仲だ。
テルミー エニシング」
右口角を上げるも、視線と銃口はバイオから外さず、グリが応える。
「3年前のことだ。
3年前に、俺とあんたはここを隆起させたが、アクシデントで青にすることが出来ず、世界を覆うCF造りに失敗したと言ったな。
何があったんだ?」
一瞬、苦い表情を浮かべるも、淡々とした口調で、
「Ah.
ユーとミーは、当時カタカナでクリスタルタワーと呼ばれていたCrystal Towerに、作業員に変装して潜入した。
バット、潜入早々、おかしなマスクを被ったレディに変装を見破られ、追跡されたんだ」
「仮面を被った女?」
「Yes.フォックスのマスクを被ったレディだ。
ファーストコンタクトで手練れであることに気付いたミーは、ユーを先に行かせ、フォックスレディの始末はミー一人で実行することにしたんだ。
メソッドは分からんが、正確にミーを追跡するフォックスレディを、どうにかコントロールポータルの直前で始末した。
バット、時間をかけすぎ、コントロールポータルをフルデプロイしたユーとの連携がとれず、アンチウィルスをセットし損なった」
「何か時間制限があったのか?」
「Um.コントロールポータルをフルデプロイすると、数分で高さ135mが2,000mに隆起する。
隆起前に、ミーたちはCrystal Towerを退去する計画だ。
ユーがフルデプロイし、オニキスシールドをセットした後、ミーがアンチウィルスをセットする手筈だったが、フォックスレディの出現で、アンチウィルスのセットが間に合わなかった。
バット、それだけならリカバリーは出来た」