表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ファンノベル:如何屋サイと様

物書きVTuber「如何屋サイと」様のファンノベルです。


はい。ファンノベルです。このお話はフィクションです。きっと、おそらく、メイビー。


ご本人様はVTuberとして読書配信を行われています。

主に応募されて来た小説などを読み上げ、その感想を述べるといった配信内容です。

リスナー参加型配信なので、気になった方は下記URLから配信をご覧ください。

https://www.twitch.tv/sait3110c?sr=a


(URL添付に問題がある場合はこの部分だけ削除させて頂きます)


 これはただの都市伝説(フォークロア)

 人々の間で語られる、ただの噂話の一つである。



 路地裏、袋小路。空が四角く切り開かれた、しかし閉ざされた空間。

 当たり前のように人気のない場所に、しかし一組の男女の姿があった。

 スキンヘッド、190cmはあろうかと言う巨躯に、筋肉隆々の体つき。

 上半身は素肌に黒のレザージャケットを羽織っており、下半身は擦り切れそうなデニム姿。

 その男は、両手を路地の壁に着いて、獲物が逃げられないように立ちはだかっている。


 対するは、小柄な女性。背中まで伸ばしたストレートの黒髪、整った愛らしい顔立ち。白のワンピースは可憐さを引き立てているが、この場に相応しいかと問われれば、否であろう。


 少女が不注意にも男にぶつかってしまい、絡まれた挙句の逃走劇。その終端の場面である。


「ウェッヘヘ。もう逃げらんねぇなぁ?」


 男の下卑た笑いに、少女が身を(すく)める。怯えきった彼女のその瞳に、不意に人影が写った。男の後ろに、誰かがいる。


「すみませーん。何やってんですか?」


 現れたのは少年。紫の髪にキャスケット帽を被り、黒のインナーシャツの上から紫のパーカーを羽織っている。膝下までの丈の黒いズボンが少年らしさを現している。

 かけられた赤縁(あかぶち)の眼鏡の奥に光る目は、男たちをしかと捉えていた。

 この状況に相応しくない、呑気な声色。状況を理解出来ていないのだろうか。


「その人、嫌がってますよね? そういうのやめません?」

「アァ!? なんだテメェ! すっこんでろ!!」

「いやー。見かけちゃったからには、声くらいかけないと。人としてって言うか……ね?」


 言いながら微笑む。その姿は正しく無邪気な少年のようで、しかし確かな意志の強さを秘めていた。

 一瞬たじろぐ男。しかし、相手は自分より小さな少年だ。一瞬とは言え気圧されたことに恥じ、それを隠すように憤る。


「うるせぇぞガキが!!」


 大きく右拳を振り上げ、少年に殴り掛かる。

 この体格差だ。当たれば一溜りもないだろう。

 当たれば、だが。


「……仕方ないな」


 小さく呟き、眼鏡を懐にしまう。迫る拳、その光景に、笑う。

震脚(しんきゃく)

 凄まじい勢いで踏み込み、路面を踏み抜く。次いで右の掌で男の拳を受け流した。

頂心肘(ちょうしんちゅう)

 流れるように男の懐に入り、右肘を鳩尾に突き立てる。突然の衝撃に男の体がくの字に曲がった。

連環腿(れんかんたい)

 振り上げられた少年の左足が男の顎を捕らえ、留まることなく連続で繰り出された右足の蹴り上げ。男の体が、浮いた。


 作り出された隙。深く息を吸い、震脚。

 生み出された力は体の中で余すことなく流れ、背中から男に体当たりを放つ。

鉄山靠(てつざんこう)

 路地裏に走る衝撃、轟音。少年の外見からは想像も着かないような威力をもって、吹き飛ばされた男は少女の横を抜け袋小路の壁に叩きつけられた。

 既に男の意識は途絶え、ずるりと崩れ落ちた。


「……え?」


 呆気に取られた顔で男と少年に視線を迷わせる少女。

 少年は彼女を意に介さず、赤縁をかけ直し、優しげに微笑んだ。


「大丈夫ですか?」

「あ、はい! あの、貴方はいったい……?」

如何屋(いかがや)サイと。通りすがりのただの物書きですよ」

「物書きって……そんなに強いのに!?」

「え? だって」


 不意に見せた笑い顔は、先程までの柔らかな物ではなく、まるで獰猛な肉食獣のようで。


「物語に出したモノを物書きが再現できない訳が無い」


 そう、言い放った。

 ぞくりと、少女の背筋に悪寒が走る


「じゃあ俺は行きますんで。救急車を呼んでやった方がいいですけど、そこはお好きにどうぞ」


 再び柔らかな表情で話しかける少年。少女が慌ててスマートフォンを取り出し、119番をタップしていると。

 気が付けば、少年の姿は影も形もなく消え去っていた。

 路地裏に響くコール音。呆気に取られた少女。崩れ落ちた男。

 その場に残されたのは、ただそれだけだった。



 これはただの都市伝説(フォークロア)

 人々の間で語られる、ただの噂話の一つである。


八極拳なのは作者の趣味です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ