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七『なんかいっぱい来た』

 『ふふっ寝ちゃった。』


 『そうだな。』


 『可愛い。』


 『……そりゃそうだろ。それより…………』



 『結界』強化した方が良さそうだなーーと、『彼』は言った。


 「…………『結界』……………?」


 思わずそう言ったのは、オレガノだった。陽藍ーー彼の『名』は『華月 陽藍』と言うーー他の『星』から来た男だ。此の星の住人ではないのだ。『孫』と呼んだ『夏文』と言う赤子が、『迷子』になったのを、此の星に『回収』ーーつまり『捜しに』来たのだ。『手分け』してだが。


 陽藍は答えた。


 『ちょっと待ってて』と。



 そう言った彼は、赤子に其の美しいまでの指先を、そっと延ばし触れて、優しく微笑んだ。見るのが追いつかないスピードで、又其処に『力』が『溢れ』た。彼等は魔力だと思ったが、此れは魔力とは違った。名前をつけるならば、『神力』なのだろう。彼は『神』なのだ。此の星のでは無いが。


 子供達の直感は、あながち間違ってもいなかった。側の『女性』は、『女神』で『在』る。彼の妻だった。


 『おばあちゃん』なのも、『誤り』では無いが。



 「ま、こんなもんかな。取り敢えずだけどな。帰る迄は、『保つ』だろ。」


 華月 陽藍は、事も無げにそう言った。


 凄まじい『魔力』を放っておきながら、『こんなもの』と。平然として。


 正直、シランは冷汗が出た。恐ろしい男だと思った。シランは魔法よりも剣に頼る男だった。だから余計だった。


 「なあ、『白神』、折角だから、此の『神殿』、直してって構わないか?」


 彼が言った。シランは『どうして白い服のあの男に聞くのだろう?』と、そう思った。


 聞くならば村の連中にではじゃないのかーーと。


 『ハクシン』は応えた。


 「ん〜有難いですけど? いいんですか? このままでも十分じゅうぶん……」


 「直してくれ。『出来る』ならば。なあ?」


 ハクシンの言葉をーー遮ったのは、オレガノだった。後半は弟分達への言葉だった。皆頷いた。『むしろ見たい』と。


 「……『出来る』の? 無理なら……」


 ジニアは半信半疑だった。


 「嫌、大丈夫だよ。じゃ、直しちまうかな。ーー」


 と、言ったか言わぬかのうちだった。部屋が広くなったのは。





 「「「「「「ーーーーーーー? ! ! ! ? ーーーーーーーーっ!?!」」」」」」



 声にならない声とは此の事だった。


 オレガノ達も、ペルウィアナも、そしてシランも。十二分に、驚いた。一瞬で小屋は広く美しく、綺麗な、文字通り『神殿』にーー成った。嫌、『教会』に近いのか。


 「ちょい『教会風』に仕立ててみた。」



 両手を広げた華月 陽藍は、どや顔だった。



 確かに教会風に、長テーブルに長椅子が在る。



 『教会だ……』と、皆は思った。そしてそう言った。見た事も無い、キラキラした透明の、嫌、半透明の色付きの板はーー光を反射しては又きらりと輝いた。精霊達が、嬉しそうに飛び廻った。



 『わ〜い。陽藍様〜ありがと〜〜綺麗だねえ〜〜何此れ〜〜?』


 先程迄朧げだった精霊達が、はっきりと見える様に成り又、言葉使いもしっかりした。白神が『流石……』と、誰にとも無く、そう言った。


 「硝子だよ。此れは『ステンドグラス』って言うんだ。綺麗だろ?」


 陽藍は精霊達に答えた。『結婚式』も此処で出来るぞーーと。嬉しそうに。


 精霊達がはしゃいで、『わ〜〜僕結婚式する〜〜』と言っていた。


 『妖精達も〜〜此れで、来る、かなあ〜〜??』と。



 「ーーーっ、『陽藍っ』! 『居た』のか?!」



 そう言って又、『男』が其処に飛び込んで『来た』のだが、二回目なので皆は『少し』しか驚かなかった。


 「良かった〜〜夏美に『殺され』るかとっ! くうっ」


 男は半泣きだった。綺麗な顔が勿体無い程に。『静かにしろよ、ナツ。』


 起きちゃうだろ? と、言った時だった。



 「居た!」  「居たか!」  「お〜居たね〜」 「良かった。」  「お、『嫁』が居る。『乙〜』」  「あ、居た。お父さん『乙〜』。」



 と、『次々』に、『何やら』ーーやって来たのだった。ーー驚いた。ーー多すぎるーーと。



 「美津之、つぐみ! 基君、要〜、夏臣!……………あれ?『尚人』は?」



 「居るよ。」


 「『篝』!尚人も!」



 「あ、お疲れ。悪かったね、皆して。じゃ、取り敢えず『戻る』か。」


 「待ってくださいよ!」


 陽藍が『戻る』と言い出したので、慌てて止めたのは、オレガノだった。『魔法』の事を、何も聞いていない。知りたい事が、山の様に在った。先程はウィアナが失敗したので、今度は自分が勢い込んで言った。


 「『魔法』っ、『魔法』を教えてくださいっ。『話』だけでも!」と。



 オレガノは、『もっと強い』魔法を使いたかったのだ。然し『師』が居なかった。


 彼の『おばあちゃん』以上の『師』が。街迄行っても『存在なかった』ーーのだ。


 彼の祖母は彼の知る限り、最強の魔法使いだった。今日彼は『初めて』其れ以上の『存在』に会った。『ついて』行ってでも、『会得』したい。『古代魔法』を。




 オレガノ彼は、そう思った。




 「ちょっと『待って』。」


 そんなオレガノを、陽藍は手で制した。どこを見ているのだろと、オレガノは思った。そして『やって来た』男達も、皆、同じ様な、『様子』だった。


 陽藍がぽつりと『不味いな』と言った。子供達は意味が理解らなかったが、不意にペルウィアナが、気が付いた。




 『ガノ兄ーー』ウィアは声に出して言ったーー




 「なんかーー『いっぱい』来たよ?」とーー




 気配が膨れ上がったのだった。





 確かにーーと。確かに白神ハクシンですら、それは『まずい』なとーーそう思った。そんな感じだった。

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