六『神殿』
「んじゃいくかな。」
ハクシンと呼ばれた白い衣の男が言った。
シラン、彼は『俺は何に巻き込まれてるんだ?』と、思った。
どうしても隣国へ行く必要が在る。どうにかこのペルウィアナなる少女の協力を得ないとなと、そればかり考えていた。『どうしたら良い?』と。
『いこう』と言った、彼等のリーダーらしい男ーー『兄か』ーーが、掛け声を掛けると、それを合図の様にか、彼等は歩き出した。緑の門をくぐり、神の像が在るらしいーー中へとーー
そしてシランは思わず言った。『なんだこれ』と。
「…………………………、ショッボッ。」
『しょぼい』と言いたかったのだろう。何処の国の言葉だったか…………『貧弱な。貧相な。豪華とは反対の。貧乏を通り越して見るのも最早可哀想……』…………みたいな意味で使われたり……な。
そんな言葉だ。『ーー悪かったな。』と皆は思った。手作りだよと。神像すら彼等村人の手造りで在った。祈りも捧げるし収穫祭の時には御供だってちゃんとする。その時は『入り口』の手入れだってしていた。いつも『隠れて』在る訳ではないのだ。と、彼等は思った。
「お〜中々『凄い』ね。『此の』『神殿』。うん、『有難い』ね。」
『ハクシン』と呼ばれた男が、何故だか嬉しそうに、そう言った。シランは彼を『可怪しな男だな……』と、そう思った。
此処の何処が神殿なんだよと。どう見てもただの小屋だった。だから『ショボイ』と言ったのだから。ーー
村の子供達は何も言わなかった。そして『中』へとーー入ったのだった。
❅ ❅ ❅
「わ〜『ヨウセイ』さん、良かった。『見付かり』ましたね。ーー良かった。もう俺どうしようかとーー」
ハクシン為る男が、そう言った。その先に先程の『魔法使い』、ヨウセイと呼ばれた男が在たーー『赤子』を抱えて。
泣いた痕がある赤子を、彼はあやして在た。微笑みながら。其処にとても神々しく在った。淡いひかりの中で、この世の光景とは違うーー何かーーを、彼等は見た。
良く知った小屋で在る此処が、『神殿』に幻覚える位のそんな『光景』をーー目撃したのだ。
こんな光景は、一生に一度もみれないだろうーーと彼等は思った。
確かに『此処』は、『神殿』だと。
❅ ❅ ❅
「『そうだな』、『白神』、『面倒』『掛けた』な。礼は後でな。」
取り敢えず『帰る』わーーと、彼は言った。その姿を『まるでーー神』だと、彼等は思った。
神様なのではーーと。
そんな訳無いのにだ。今日は自分達は『どうかしている』と、そう思った。
そもそも珍しくも『旅人』がやって来たーーだからだろうと。
オレガノとペルウィアナは、『魔法使い』の此の男ーーに、聞きたい事が山の様に在った。帰られては『困る!』と思った。
「待って!『帰らない』で!『魔法使い』さん!」
思わず先に叫んだのは、ペルウィアナの方だった。皆が面食らう程の声だった。オレガノさえ、驚く程の。
「ん? 何?」
男は意外とまったりとそう言ったのだったーー其の場の『神々しさ』との『ギャップ』にーー、一同が『がっかり』する位のーー脱力感で。やはり赤子をあやしながらーー
ーーーーーーーーー
「え〜と……………『その』『赤ちゃん』は…………?」
聞きたい事は違う事だ。しかし上手く言葉が出なかった。いざとなると、聞きづらい。それも多分手伝った。思わず『最大』の疑問から聞いてしまった。先程からずっと、『精霊達』の淡い光もーー眩しい。輝きが増してる気もするーー
大体精霊が目の前で『自由』に『飛ぶ』此の『光景』が、おかしいのだ。精霊なんて、神秘的な森の中にすら、居るのかどうかすら、怪しいのに………小屋が神々しくて、仕方無い。神秘的過ぎる。
なんて現実離れしているんだーーと、そう思った。先程から何度そう思った事なのか。もう感覚がおかしくなる。そんな感じだ。
「ん?『ウチ』の子? 『迷子』になっちゃってさ。はは」
男は軽い感じで笑った。
「……………………………『赤ん坊』が? …………………………、なんで?」
かろうじて突っ込みを入れられたのは、年長者のオレガノだった。カルセオラリアすら、放心していた。
その時それは起きた。
「陽藍さんっ『なづふみ』ちゃん、『居た』のっ?!」と、
女神が『もし』居たらーー『きっとこんな姿だ』ーーと思える程の、それはそれは美しさ止まない『女性』がーー飛び込んで『来た』。文字通りに。
先程消えた男とは逆だと言う様に、彼女は『現れ』た。そう、何も『なかった』その空間からだ。
空中から、ぽんっと飛んで、現れたのだ。
やはり今日は何かが『おかしい』と、皆は思った。牛と猪の『大きさ』よりも、『今日のウサギ』の、大きさよりも、ずっと可怪しいと思った。
「『友美』さんっ。わ〜お久しぶりです〜相変わらずお美しい〜ですね〜有り難や〜なむ〜」
ハクシンがそう言ったので、『女神』は抗議した。
「『変な』拝み方しないで! もう! 白神さん、『其れ』、『経』だからね? 私を『成仏』させたい訳? やめてくださる? まあ…………『今回』は『許し』ますけど『次』は…………」
「いいから。御前はこっち『来い』よ。ほら、『夏文』。『おばあちゃん』来たぞ。良かったな、なあ、夏文。」
「あっぶ(あ〜まあね。)」
「遅くなって『ごめん』な。」
「あっぶ(ま〜ぼくもちょっとわるかったし。おじちゃごめんね。あ〜あと。)」
「はい、はい。夏文は『良い子』だね。おにいさんや、おねえさんにも、『お礼』言おうな?」
「ぶっ。あっ!う。」
「おにいちゃん達も、おねえさんも、『どうもありがとう』って、『孫』が言ってる。有難うね、君達。案内たすかった。お礼しなきゃね。どうしようか? 何か『欲しい』ものとかーー『食べたい』ーーモノとか?」
「いや待って?」
「おかしいおかしい」
「まご?ーーーーま、孫?」
「…………………いやいやいやいや、え? いや。いや? 嫌だ、無理だ。絶対違う。」
「…………そうだな。皆、落ち着け。ウィアナ、ジニア、カルミア、ーーセオ。そうだよな。そんな『女神様』みたいな『美しい』女性がーー『おばあちゃん』と聴こえた気がしたが、幻聴だよ。ほら、良く『在る』だろ? 風の『悪戯』か何かだーーきっと。ーー多分。うん。」
「うっ!」
と、言った赤ん坊が、腕の中で騒いでいた。彼等には『うっ!(おじ〜ちゃ、あのちとたち、へんだよ。だじょぶ? へ〜き?)』と言う『夏文』ちゃんの心配の声はーー残念な事に届かなかった様だ。
疲れた赤子は『安心』したので、眠りの時間に入った。『女神』の『腕の中』で。
神殿では精霊達が、嬉しそうに、飛び廻って在た。ーーそれをシランはずっと見ていた。
『俺は一体何に巻き込まれたのだ』ーーと。
辺りはやはり幻想的なままだった。翡翠色の、淡い淡いーー光の中だった。
と、言う訳でして、別作品達と、微妙に連動した『世界』がーー『はじまり』ました。閲覧有難う御座ます。///m(_ _)m