『紺君は小学生に化ける』
「『華月 紺』と言います。どうぞ宜しくお願い致します。紺、『先生』に『御挨拶』。」
華月 陽藍がそう言ったのは、と或る『小学校』なる場所の、俗にいう『応接室』だ。教師は思った。『場違い過ぎる美形が存在しているーー』と。勿論華月 陽藍の事だ。比べて『息子』は『そうでも無いな……』と、思ってみてしまったのだ。華月 紺ーーか、紺色の『紺』。まあ、『父親』も『藍』色だからなーー紺の担任教師に成る男はーー思ったのだった。
『父親が美形過ぎるーーのに、息子がこの容姿って。多分………母親が………がっかりする位…………普通なパターンなんだろうなあ……………。どうせなら逆が良かったよ。いや?それはそれで…………』
がっかりするんだよなーー彼は思ったのだった。思いながらも『事務的』な事は、熟していた。器用な男である。
「………と、注意していただく点は、これ位です。それではよろしくお願いします。紺君、よろしくね。なんでも『相談』してね。『具合』悪くなった『時』も直ぐに言ってね? 無理とかしないでね? あ、『お父さん』、『体育』は? 休ませますか?」
教師の言葉に陽藍は、彼に答えるでなく、紺に聞いた。『大丈夫だよな?』と。
教師は『何を無駄な事をーー』と思ったのだった。子供に『判断能力は無い』ーーと。
しかし、『彼』は、不思議な眼差しをこちらに向けて来たのだ。どきりとした感情とぎくりとした困惑がーー交ざった。そして『大丈夫ですよ』と言ったのだった。
「体調の事ならば、大丈夫ですので。どうか『特別』に思わないで下さい。今は『問題』在りませんので。」
華月 陽藍なる男は、そう言ったのだった。やはり不思議で不可解な雰囲気をーー携えたままで。教師は陽藍を『苦手だーー』と思ったのだった。そもそも『モテそう』な、この『雰囲気』がーー好ましく無い。無性に腹が立つ。大体平日の昼間に、何だって父親が入学の『手続き』に来る。母親いないのか?教師はそこまで思ったのだった。おまけにーー
「………………『紺』君…………、その『うさぎ』かわいいね。でも『今度』は『お家』に、置いて『来よう』ね。……………………お父さん。申し訳ありませんが…………」
「ああ、『申し訳ありません』でした。今日だけ『特別』と、許可戴きまして。登校の際には勿論『兎』は持たせませんので、御了承下さい。『今日だけ』。未だ『子兎』で、家で『留守番』させるのが、些か『気が引けた』もので。先生は『動物』は『御嫌い』でした?知ってます?『女子』って、『小動物』無駄に『好き』ですよ。なあ?紺。そうだろ?」
華月 紺はずっと父を『みて』いたが、問われてこくんと頷いたのだった。兎を抱えたままで。
教師の苛々は蓄積されるだけだった。此の親子が為に。
✻ ✻ ✻
華月親子が訪れし此の公立小学校にて、女性教員、又事務員達がーー囁くのは、…………
〘見た?〙 〘見た~!〙 〘うさぎ抱えてかわいい!の~〙 〘お父さん格好良いのは何!? 俳優?!〙 〘違うわよ。〙 〘なんでもいい~目の保養だった~〙
『ああ、愉しみ』~彼女達は、仕事を『励む』楽しみが『出来た』のだった。華月『親子』に依って。
教頭が『言う』。「貴女方、『フォロー』頼みましたよ」と。教頭ーー彼女は、『彼等一族』を『昔』から『知る』人がーー『ひとり』だ。星の『神』なる『彼等』の、『協力者』ーー達ーーその内のひとりなる彼女は、昔『陽藍』の『恩師』だった女性だ。遠い遠い過去の話だが。
教育熱心な此の淑女は、或る日嘆いた。『教育者の質』について。華月 陽藍に『依頼』した。『手』を『貸して』くれ~と。
願い聞き入れたフェミニストは、『息子』を『送り込んで』来た。彼にも『利が得る』と。
『此方にも好都合だよ、「先生」。「利用」させて「もらう」けど「良いか」』と。
無論彼女は頷いたのだった。因みにだが、紺が『抱いた』兎をーー「陽藍君、学校に『寄贈』しないかしら?」ーーと聞いて、断られた。異世界『産』の『兎』は『譲れ』ないと。
教頭が泣くので、本日『連れて』来られた『ラグラ』だった。勿論、女性職員『全員』は、『堪能』したが、一部『男性』職員もしっかり混じっていたーー事は、気にしないで頂きたい。
ラグラが『可愛くて』誰が『困る』ーー陽藍は『どや顔』をお披露目したが、『可愛過ぎて』『困る』ーー!とは、決して言えない。
そんな茶目気溢れた此の可愛い『淑女』が、華月 陽藍は大好きで『協力』するのだ。
当人には、言わないが。華月 陽藍はそういう男だった。興味『無き』ものにはーー『見向き』もしないが。『万人の為には』無いーー者でーー在る。万人は『平等』では『ない』のだ。
努力在りき者と、無き者が等しくは彼の美学に反するのであろう。やらぬうちから『出来ぬ』は認めない。『挫折してから言え』と。彼はそう言うのだった。
『失敗すりゃ良いじゃねえか』ーーと。『二度やるのは』ーー『馬鹿だけどな』と彼は言うのだった。多分それは、古い昔から。
当人の憶えていないーー物語の中でも。
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「コ~ン。ほら、もう『行く』ぞ。早くしなさい。」
朝の光景だ。『ラグ』は『大丈夫かしら?』と見守る。横で『先輩』の『白』が『大丈夫だよ。』ーーと、彼女に言ったのだった。
華月家の『玄関』に、母『友美』と並んだ『白兎』と『白猫』が『紺狸』を見送ったーー朝だった。
紺は『兄』達に『小学生になる』事をーー散々爆笑されたがーー
『父』の『つきそい』有りで、『通う』『小学校』も、
「なかなか『悪くない』よねーー」お父さんーーそう思ったのだった。
恐らく『此れ』は、『ぼくのストーリー』なのだろうなーーと。父が綴り、画く、ーー『又ネット小説』ーー書くのかもーー等と、思いながらも。
「ほら、じゃあな『紺』。帰り『迎え』来るから、余り『変な事』するなよ?ーーじゃあ『先生』、後『よろしく』。」
紺の横に立った、門で『待っていた』淑女にそう言いーー父は『帰って』行った。
「ちょっと『たのしみ』に、なってーー『来た』かも。」
紺が言ったので、淑女は『そうなの?』と言ってから、紺を連立って『中』へと入って行ったのだった。周囲の『女の子達』の好機の視線をーー気付かないままで。
兎にも角にも紺は『今日』から、『小学生』でーーある。既に陽藍に『高等学校』と書かれたテキストをーー課題にはされていたのだが。
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〘御主人さま、紺は大丈夫かな?〙と、陽藍の肩の上の『黒猫』が言った。帰り道で。
主は『為るようになーー』と言ったのだった。『成る』と言う事で在ろうとーー『飼い猫』は思ったのだった。
〘化けるのは、お手の物か〙と。




