三十九『妻』
ガイサース国、王都で在る。シラー・ペルウィアナは其処にいた。冷たくて美味しい『クールクリーム』を、初めて味わいながら。
佐木 友理奈も其処にいた。勿論お目当は『異世界産アイスクリーム』ーーである。
つまりクールクリームの事だ。
「こんにちは、お嬢さん。又会ったわね。なんだか大変だったみたいだけど、大丈夫だった?」
友理奈はペルウィアナに声を掛けた。それからーー
「………………友理奈さん。」
イチゴ・シャリンバイが、そう言った。ペルウィアナはイチゴを見た。イチゴは友理奈を知っているのかと。イチゴは気不味そうだった。ウィアナにはそう見えた。
「イチゴ君もこんにちは。あれ?ふたり『知り合い』だったっけ? あ、『アイス』溶けちゃうよ? 食べちゃったら?」
「友理奈、………知り合いも何も…………ペルウィアナさんと『一緒に』『迷子』になって、『陸』兄ちゃんに『叱られた』のが、イチゴ君だよ……。こんにちは。ペルウィアナさん、僕の事『覚えてる』かな? どう?体調とか崩してないかな?」
華月 悠太は、ペルウィアナに『そう』聞いたのだった。ふたりは、『理桜』と『真琴』と、夏文をーー連れていた。
一行は『とりあえず』「ちょっと待って」ねーーと、言ってから、『目的』を果たした。
つまり『子供達』に、クールクリームを買ってあげたのだ。勿論、友理奈と悠太もしっかりと味見ーー各々の分を、購入したが。
『種類少ないねー』と、友理奈が言ったのだった。露店の店員がそれに食い付き、悠太から『種類』を増やす方法を教わったのは、又別の話だーー多分、世に出ないで在ろうーーレベルの小話だ。
露店から外れて彼等一同は、美味しいひとときを過ごしただけだ。理桜が夏文にアイスーー『クールクリーム』を食べさせる『姿』は、道行く人々を『和ませ』ただけだ。勿論、『保護者』もだ。
理桜君は、『御満悦』と為ったので、頃合いをみたイチゴが口を開いた。
悠太に聞いてみる。
「『陸』さんーー『未だ』ーー怒ってますか?」と。
答えたのは、『真琴』だった。
「『ぱぱ』やしゃしい~から『だじょぶ』よ、いちごお兄しゃん。や、『しゃりん』お兄しゃん。」
真琴ちゃんは『約束事』を、思い出した様で、イチゴの名を呼び直した。
イチゴは戸惑った。が、『迎え』が来た。
「真琴。」
美しい『音色』の様な、良く通る声だった。『華月 陸』がいた。イチゴはやや引き吊ったのだった。陸の冷たい眼差しが、イチゴをみた。『クールクリーム』より、冷たかった。
イチゴにだけだが。
「ぱあ~ぱ! 真琴、おりこ、してた~理桜も!」
真琴ちゃんが友理奈に同意を求めた。友理奈は何度も軽く頷く。悠太は夏文を抱え、理桜は友理奈に抱かれていた。ーー寝ていた。はっとして真琴は口を押さえた。『起きちゃう?』と可愛く問い掛けたのだった。
陸が近く来た。娘に優しくほほ笑んで、『大丈夫だよ』と、笑った。
道を行き交う人々ーー特に御婦人がーー癒されたのだった。陸は気にもしなかったが。
妻、美樹『そっくり』の娘しか見ていなかったので。『もう少しだからね』と、彼は言った。娘は瞳を輝かせた。『お花見~?』と。父はうんと頷いた。
真琴は又友理奈をみて、『お花見!』と気合を入れた。ーー実に可愛らしかった。多分天使で在ろう。
ただペルウィアナは事態が呑み込めなかった。此の場合、仕方無い。
イチゴが躊躇いがちに『場所、………変えましょうか…………皆さん。』そう言ったのだった。
その時、『直夏』がーー来た訳だった。ウィアナは流石に『どきり』とした。
だけれど、その感情を、『イチゴ』に『悪い』ーー『申し訳ない』様なーー気分になった。
不思議な気分。そしてウィアナは思わず『イチゴ』を見たーー『見つめた』のだった。
多分穴があく。
可愛い『やりとり』に敏感に気付いたのは友理奈だけだ。彼女は『あら?』と思ったのだった。
おやおや『もしかして?』と。余計な事は、しなかったが。ーーーーーーーーー
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そして『友理奈』は、見付かった様だ。『彼等』に。
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子供達が『起きる』レベルの奇声だった。夏文は『不機嫌』に為る。理桜は『愚図っ』た。
真琴も嫌そうな顔を見せた。可愛い顔でなくなる。
陸が当然『顔』をしかめた。悠太と直夏と友理奈は『焦』る。嫌、引き気味に『恐怖』を感じる。
陸は『原因』を、睨んだのだったーー其処に、『冒険者』がふたり『在』た。
友理奈は『彼等』を『知って』いた。思わず『レザード』ガイサースの顔を思い浮かべた。
何故かと言われれば『彼』の『知り合い』だからだ。
「ユリナじゃないか!なんて久しぶりなんだ!元気だったかい?会いたかったよ! 突然『君』が『いなく』なりーー本当に『心配』したんだーーさあ!『もう』『離さない』よ! 僕の『妻』に『成って』くれユリナ! 『愛して』るよ。 初めて『会った』ーー時からね。」
『ナルフィート・ヴァス』ーーと言う名の『青年』がーーそう言った。
そしてもうひとりはーーーー
「は? ナルフィは何言ってんだ? 『ユリナ』久しぶりだーー会えて『良かった』。あのさ、今度さ、俺ね、『里帰り』ーーしたいんだ。ーー『ついて』来ないか?『田舎』だけどーーさ。良いところーーだよ。せまい『村』だけど。な?」
『ダーナス・ラングリット』ーー体格の良い、青年だ。ふたりとも『冒険者ガイ』の『冒険者仲間』ーーらしい。知り合いで友人だ。偶に仕事を『一緒に』こなす間柄だったーーらしい。
レザード『曰く』だが。
『佐木』友理奈は、『佐木』直夏に問い掛けた。『何から「突っ込み」いれたら「良い」?』と。
その時だった。更に『面倒』な案件が『来た』のは。
「『ペルウィアナ』! やっと『見つけた!』」と。
『シラン』が走って来たのだった。イチゴは思った。『やはり詰所へは行かずに済んだ』と。
暢気にではなかったが。あえて謂うならば鬱だった。誰でもで在ろうがーー此の場合では。
ペルウィアナ等、大分『前』から『停止』したままだ。『可哀想に』ーーと、気付いたのはーー『悠太』だけで在ったが。
紺が『来た』。彼こそ『暢気』に『友理奈大丈夫~?』と、聞きながら。
然し、『紺』を見た『ウィア』、少し気が緩んだ。イチゴもだ。シランには関係無かったが。
シランはウィアへと駆け寄った。ウィアは驚きが手伝って『硬直』する。構わずにシランはウィアを引き寄せようと、手を伸ばした。イチゴは気付いた。ほぼ無意識だ。ペルウィアナを『庇い』、シランより速く、動いた。
ペルウィアナは渡さなかった。後ろにやるより、イチゴ・シャリンバイはペルウィアナを軽く『腕の中』に抱えてしまった。腕で彼女を『庇う』様に。
そしてシランの『表情』を見てから、ふと『我に』かえり、ペルウィアナにこう言った。
「あ、『ごめん』。『大丈夫』?」と。ウィアナは戸惑いつつも軽く頷く。うんーーと。
「だっ大丈夫。えっと『ありがとう』。………『シャーリン』さん。」
そう言った。『パニック』を起こさないでーー済んだ。彼の『腕の中』は落ち着いた。
ウィアナはシャーリンの『温度』を『好き』だなーーと、此の時『思った』のーーだった。
シランの『届かなかった』腕が、其処には虚しくも在った。『どうしてだーー』シランは思った。そして言った。
「離れろ。『偽物』野郎ーー『ウィアナ』を『返せ』」と。
「『偽物』? おいおい『シラン』君。誰が『偽物』だ。『ユリナ』なら『本物』の『淑女』だよ。 ーー『僕』の『妻』に『相応しい』な。ーー『子供』には未だ、ーー『理解らない』ーーか。『彼女』の『魅力』はね。
ーーそれはまあ、おいておいてね。『ユリナ』。これは『仕事』なんだ。
ーーその『少女』、ーー『渡して』ーーもらうよ? いいよね? 大丈夫。傷付けないから。僕は『紳士』な『仕事』しか、引き受けない主義だからね。 ユリナは『僕』を『信じて』くれるよね? ねえ、『愛しい』ひと。」
ナルフィート・ヴァスがそう言った。ーーだが、それを『遮った』のは『直夏』だった。友理奈は先を『越され』たので直夏を見たが、それにつられたウィアナも彼をーー見たのだった。
直夏は『冒険者』ふたりの『前』に立ちーーそして言う。
「仕事だから云々はさておき、さっきから『俺』の『嫁さん』を『妻』呼ばわりやめてくれないか。 ああ、後『そっちの君』ーーもな。『人の嫁』を『里帰り』に誘うなよ。
アドバイスするなら『下っ手くそ』な『プロポーズ』だよな。言っておくが、伝わって無いぞ。
『友理』は『鈍い』から。
それに『その口説き方』で『落ちる』『女の子』は居ないだろ。『村』の『魅力』、PR出来て無いからな? 出来て無いんだから、『行かない』よな?誰も。
ちょっと『横』見てみなよ?
其の横の『お嬢サン』の『フリーズ』具合見て、出直してーー嫌、やめとこうか。
ごめん、諦めて。無理みたいだよ。
ああ、そうだ。其処の君もね。 あのさ。…………………男連れの『女の子』の『手』をーー握るなーーよな。そりゃさ、『ああ成る』訳だよ。『自業自得』って言うだろ。
『空気』読んで切り替えてかないと、君も横の『オニイサン達』の様に、永遠に『もてなく』成っちまうぞ。余計な『お世話』だけどーーさ。多分君は未だ『ギリ』間に合うーーーーと思う。 あ~そうだな、まあ『頑張っ』て。次、いきな。『切り替え』大事だぞ。 『未練』は『程々』にな。 『女』はさ。『しつこい』男って、案外駄目出すぞ。
はっきり『言う』が、『さわやか』な『イケメン』タイプが『人気』だな。やっぱり『王道』なんだよな。 あ、後『思い込み』激しい奴、『勘違い野郎』は大概見てるとフラレてるな。 一応『覚えて』おいたら。参考迄に。」
ーーまあ『実際』には、君、『手』、『握れなかった』みたいーーだけどなーーと。佐木 直夏さんはーー『とどめ』も刺した。
シラン『18』才はーー完全凍結したのだった。しかも恐らく『とばっちり』でだ。
油の切れたブリキの人形が動く様に、ペルウィアナを見たのだった。ちょっと言い過ぎたらしいと直夏は思ったが、敢えてフォローしなかった。リカバリーする位ならば、初めから佐木 直夏は何も言わない。
シランは貧血かと思う位、目の前が暗く為った。人はそれを恐らく『絶望』と呼ぶとシランは未だ、気付かないが。ーー『冒険者』二人を雇いーーやっとで見付けた『ペルウィアナ』は『他人の』『腕の中』に居たのだ。絶望しても、仕方が無いだろう。どうして上手く『行かない』んだと思った。
横では彼が『雇った』冒険者二人がーー騒いでいた。「「妻だと!???」」ーーと。
それは今のシランにはどうでも良かった。胸を刺す痛みが気力を奪う。
ペルウィアナは、『イチゴ』の『腕』に『護られ』ながら『直夏』と『友理奈』を見のだった。そして、ーー
「『おねーさん』は『剣士』さんの、ーー『妻』なの?」自然とそう聞いていたーー。
赤ちゃんーー『夏文』を抱えた『直夏』は、『ぱぱ』の顔で、それに寄り添う『友理奈』は『自然体』だーーとウィアは思った。そしてイチゴの声がした。『言うの遅くなって「ごめん」ね』と。
イチゴはペルウィアナに『気を使って』、ーー『言えなかった』のだとーーそれはウィアにも理解ったのだった。
そしてウィアは顔に熱を感じた。
顔が熱い。気付かれる。気付かれたく無いーー誤魔化したくて慌てて聞いた。
「『偽物』って何?『シャーリン』さん?」と。
聞かれたシャーリンは答えた。「何だろうね?」と。
そんなやりとりにはお構いなしに、其処の冒険者二人は声を上げたのだった。「『嘘』だーー」と。
話が『まざって』ややこいしなーーと、ウィアでも思った。
陸が唐突に『そうだね』と言った。
「正解」とーーシラー・ペルウィアナをみて。「やるじゃん。」ーーと、彼は微笑んだ。
シラー・ペルウィアナが『恐い』と感じた『陸』は、ーー其処にはーー居なかった。
そんなやさしい『笑顔』だった。ウィアはその事に、驚いたのだった。




