三十七『スクランブル』
ペルウィアナ達は、ガイサース国へ入った。観光にやって来た。謂わばペルウィアナには、『初めて』の観光だ。シャーリンが連れて来たのだ。
シャーリンはペルウィアナを訪ねて来た日に、彼女に話した。ペルウィアナは驚いたが、段々素直に大人しくシャーリンの話を聞いていた。時間も忘れて。
シャーリンは兄グロメラタを、知っているーーそう教えに来たのだ。
『君の両親にも会った事があるんだ』と。
ウィアナの『知らない』両親の話を、シャーリンは教えてくれた。
「僕の『両親』と知り合いでね」と。ウィアは正直に両親の顔も『もう覚えていない』ーーと話した。シャーリンは笑った。『だろうね』と。
『僕はね、「赤ちゃん」だった「君」を、抱かせてもらった事がある』んだーーと、彼は言った。ウィアは驚いた。その顔を見てシャーリンは又笑った。そして夜は更けた。
ウィアの両親が『帰れない』のは、『仕事』の為だと教えてくれた。と或る『さがしモノ』が見付からないと、帰宅出来ないのだーーと。
ウィアは納得出来なかったが、シャーリンは丁寧に説明してくれた。
シャーリンは言った。
「『帰りたい』と思うよ」と。『でもね』と。
「さがし『もの』を『放置』しては危険なんだ。だから、『わかって』あげなよ。」と。
グロメラタは又『別の』目的があるーーらしい。シャーリンはそう言った。そして、
『僕では』駄目か?と、ウィアに聞いた。ウィアははじめ意味が理解出来なかった。シャーリンを見た。見られたシャーリンは、又優しく笑った。そしてウィアに理解る様に、彼なりにゆっくり説明した。
君の支えになりたいーーなと。未だ首を傾げる彼女に又優しく言う。
「僕にもね、『手助け』が必要なんだ」けどと。ウィアはシャーリンをじっと見ていた。
「成れる?」ーーシャーリンはそう、聞いたのだった。
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シャーリンは昨日、色々な話をしてくれた。ウィアはそれを思い出す。『年齢』は今年で『21』とか、両親と姉が居るが、姉三人のうち二人は嫁いだーーとか、色々聞いた。特にお姉さん達の話が面白かった。
シャーリンは、「ウィアといつか『そんな』新しい『家族』になってみたい」ーーと、言いに来た。
そう言うのだ。ウィアは謂わば『鈍感』だが、流石に此れは『意味』が理解った。
どうして自分となのだとウィアは聞いた。シャーリンは笑う。『あたたかいから』と。
初めは、『知っている』子だからと思ったらしいーーだが違った。グロメラタの妹だから、自分にも似た感覚があるのだろうーーそう思ったと。
けれど、『兄妹』の感覚とは又『違う』と、
「一度ね、『家』に『帰って』両親と『話した』んだ。」
話せば話す程、『違和感』が湧き起こるーーシャーリンはついに気付いて認めた。ペルウィアナを
「『大切』に、想い始めていたよーー」と、彼は言った。
彼は『気持ち』を確かめたくて、彼女を『訪ねて』来た。顔を見て『安心』した。やはり『愛しい』と思った。それを『そのまま』イチゴはペルウィアナへと伝えたのだ。
ウィアは勿論戸惑った。けれど、シャーリンに言われてウィアナだって考えた。真剣に。色々と。
そして思った。自分はその彼の気持ちを、『うれしい』とーーそう感じたのだと。
幼いウィアは、それをそのまま『シャーリン』に伝えた。彼は笑った。
『では「未来」を楽しみに』ーーしているーーと。「ゆっくりで良いから。」
自分の速度で『無理しないで』「考えてみて」と。イチゴ・シャリンバイはそう希望を言った。
未だ本名は隠したままで。
× × ×
シランはペルウィアナを追いたかった。然し、スプス村の誰に聞いても、誰もウィアナの行き先を知らないと言った。ただ、『無事』だとは判ったーーシランは、安堵の息を吐いた。
それだけでも「…………良かった…………」と。
右も左も分からない『田舎娘』の彼女を村から『連れ出した』のは、自分だ。シランの気持ちは決まっていた。思えば『はじめて』会った『時』からだと、彼も気付いた。
ペルウィアナは『孤独』だ。頼りの『幼馴染』の兄達にもーー見離されている。シランは彼女を『可哀想』だと思った。きっと今頃『不安』で「淋しがってる」だろうーーと。
「『見つけて』『保護』しないとーー」可哀相だと思った。まるで昔の自分の様に。
「待ってろーー、見つけて。ーー『幸せ』をちゃんと教えてやる。だからーー」
『盗賊』から守れなかった事をまた悔やんだ。「情けないーーごめんなーー」と。
ペルウィアナは『男』と出掛けたらしい。おそらくあの『盗賊』の男だとシランは思ったのだ。ーーーーーーーーーーーーーー
「見付けてやるっ」と。シランは『ギルド』への路を進んだ。『探索』『探知』能力者を『雇』う。多分見付けられるだろうーーと思った。それならば『当て』があると。
ウィアナは案外賢い。上手く逃げて『帰宅』してないかと期待したがーー当てが外れた。シランは思った。ならばーーと、
「はじめからーー『そう』すれば良かったんだ。っ」
シランは『レザード』を追って来たのだ。『盗賊』が『あっさり』捕まった事を、不審に思った彼は、レザードを疑った。彼を『偽物』だと感じている。『自作自演』ーー盗賊を雇い、『王都』を襲わせ『騒ぎ』を起こし、『自分』の『好感度』を上げる。
『捕物』を『演出』する事で。
レザードは10年、『外』の世界にいたーーらしい。『入れ替わり』が起きても『不思議』ではーーない。筈だ。
シランは思う。あの『シャーリン』も『あやしい』と。共犯ーーだろう。
シャーリンと『名乗った』男と、『同じ顔の男』を、彼は見付けたのだ。ーーもう、疑い以外何も他に持つ感情は得れないと思った。
『レザード』と『シャーリンの顔の男』の、『密談』を聞いてだーー
あの二人を『追え』ば、自分の『過去』が判明するかもしれない『予感』が在ったーーだが、彼は追わなかった。それよりペルウィアナを救出する事を選んだ為だ。彼女をたすけて、そして伝えるつもりでいた。
『もう過去なんか要らないから、ふたりで「未来」を、生きようーー』と。帰って来ない家族も、裏切りの幼馴染達も、みんな忘れるべきだとーー
自分が側に、いるからーーと。そう、強いて気持ちに名をつけるならば、一目惚れと呼ぶのだろう。『こんにちはペルウィアナです』ーーと言った彼女の顔は、可愛らしかったのだ。
そう、とても愛らしかった。
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シャーリンは国境の峠でウィアに話した。『名前』の事を。ウィアは頷いた。わかったと。
ふたりはそしてガイサース国に入ったのだ。シランに捜されている事を知らずに。




