三十六『来訪者』
目の前で男は優しく微笑んでいた。ウィアは口を開いた。
「ーーーーーシャーリン、さんーーーー」
シャーリンは夕陽を浴びて橙色だった。
❅ ❅ ❅
「入ってもいい?」
シャーリンが聞いた。ウィアナは上手く返答出来ずにもたもたと頷いた。
❅ ❅ ❅
「ーーえっと。どうして『いる』の?」
ウィアは言った。シャーリンは又微笑む。優しい笑顔だ。ウィアは何故だがどきりとした。やはり事態が呑み込め無い。戸惑う。
「ーーうん。『会いたく』なって、ね。急にごめんね。驚いてるね。」
シャーリンが言う。確かにウィアは驚いている。
「あ、そうだ、『お土産』だ、はい。」
そこでシャーリンはウィアに手土産を渡した。受け取るウィア。ーー『何?』と聞くーーシャーリンは答えた。
「『エッグ・タルト』。」と。
ウィアはエッグタルトを知らなかったーー
❅ ❅ ❅
「うん、あのね。『卵』を使った『お菓子』なんだーーけどね、甘さ控えめ、パンの代わりに夕飯にどう?美味しいよ?」
シャーリンはそう言った。ウィアは『卵?』と聞いた。卵を入れた菓子なら、ウィアは鉄鍋パンは良く作る。あれは本来菓子らしいが、ウィアは食事にする。甘さ控え目で。シャーリンに言ってみた。シャーリンは『ちょっと違う』と言う。
食べれば分かるよーーと。
「一緒に食べようか?」
シャーリンが甘く笑った。ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふたりは、話をーーした。互いの知識を『埋め合う』様に。ーーーーーーーー
時の経過に気付かぬ位に。
❅ ❅ ❅
ふとシャーリンがしまったなと言った。ウィアははっとする。楽しい時だった。窓の外を示したシャーリンが言った。『すっかり夜更けだ』ーーと。
空に月が綺麗だった。
ウィアがそう言った。『月ーー綺麗ーー』と。
シャーリンは驚いてから、横にウィアを見ながらふっと優しく微笑んだ。『ーーああーーやはり』ーー楽しいーーと。
ペルウィアナの肩に、精霊はいなかった。けれど、彼女の『横』は、あたたかかった。
『心地好いーー』シャーリンはそう思った。明日、ウィアナを連れて『景色』を見に行こうーーと。きっと、明日も美しいだろうーーと。
ウィアが気付いて『何?』と聞いた。シャーリンは答えた。『知ってるかな?』と。
『月が綺麗』はーーーーーシャーリンはウィアの近くで、彼女にしか届かない声で、『それ』を教えた。
「昔、と或る『ひと』から、教わったんだーー」よと。シャーリンは闇夜に月の光を受けて、ペルウィアナにそれを教えた。
月よりもシャーリンの方が綺麗だったーーーーウィアナはそう思った。
「明日はやいから、もう寝る。」
照れたウィアナはそう言った。
❅ ❅ ❅
「大丈夫? 疲れた?」
シャーリンはウィアに聞いた。ウィアは『二度目』の『峰越え』実施中だった。大丈夫と答える。二度目だし、余裕も感じていた。しかしーー
少し止まり、辺りを見渡した。
「はあ。本当に綺麗だ。前は見てなかった。」
ウィアは『景色』にそう言った。シャーリンは『ハイキング』的に、ウィアを連れ出したのだった。此処は、ガイサースとハナの境目の峠だ。レザード・ガイサースは此の『毛嫌い』されている辛い峠『越え』を、『観光地化』したかったーーハナ国にも了承済であった。
レザードの友人なる彼シャーリンは、レザードの『努力』に賛同していた。確かに『トンネル』を使えば数時間ーーだが、『情緒』は断然『此方』に軍配が上がる。
「『良い景色』だろ。僕の友人推薦ーーいや、あれは『絶賛』たな。『一押し』らしいよ。」
ウィアはなんだか『色々』聞きたくなったーーけれど黙ってしまった。何から話せば良いか、何から聞けば良いのかーー迷う。そして何も言えなくなった。ーーだから誤解されるのだが。
「少し疲れたか。」シャーリンが言った。「休憩しよう」ーーと。
❅ ❅ ❅
道から少し逸れて、ふたりは景色良い岩場の合間に在た。軽食をひろげる。ウィアではなくシャーリンが作った。
旅の支度の例の鞄の中に、燻製が入れっぱなしだった。それに気付いてシャーリンが『明日のお弁当』に使おうと言い出した。『良いか?』とウィアに聞いて。
ウィアは頷いたが、何を作るのだろうと思ったのだ。シャーリンは意外にも『サンド』に使った。
「ふわっ!美味しそうだよ!」
ウィアが思わず言ったそれに、シャーリンが吹いた。そして『ごめん』と言った。
「だって『ふわっ』て言うからさ。はは。可愛いからやめて。笑わせないで。食べようよ。くくっ、あ、ごめん。だって君、その顔。ほら、怒らないで食べて? ね?」
ウィアは今度は真っ赤になった。原因は勿論『可愛い』だ。
❅ ❅ ❅
ご馳走様と互いに言ってから、ウィアがぽつりと言った。『初めて言われた……』と。シャーリンは片付けながら『? 何が?』と聞いた。
そっぽを向いたウィアナが、『可愛いって』
「初めて言われた」ーーと、言い直した。やはり赤かった。やはり可愛かった。
シャーリンは『そうなの?』と返した。
「この後どうする?」と、彼は聞いた。ウィアは不思議な顔をした。シャーリンは補足する。
「ガイサースに行く? ハナに戻る? ガイサースに観光行く? どうしようか? ペルウィアナは何がしたい?」
シャーリンはそう言った。
❅ ❅ ❅
「おや、『旅人』さん、又『来た』のか。でも『ウィアナ』は居ないよ?」
残念だったねとーーシランは言われた。
❅ ❅ ❅
ウィアナはシャーリンへ、『行きたい場所』をーー伝えた。沢山の『疑問』と共に。
シャーリンはそれに答えた。
❅ ❅ ❅
「ーーっ、やっぱり戻ってる訳ないかっ」
シランが言った。おじさんは答えた。『まあな』と。
「今朝『出掛けた』からね~ペルウィアナは」と。
タイミングが『悪かったね』と、ペルウィアの御近所さんは言ったのだったーー呆然とするシランを他所に。
彼はおじさんに詰め寄った。『今朝?!』と叫ぶ様に。
❅ ❅ ❅
「ーーえ?ーーそうだったの?」
シャーリンは意外そうだった。そして言った。『その前に』と。
「ちょっと『話』たい事があるんだ。違うな、『話すべき』事かな。」
聞いて欲しいなと彼は言った。ウィアナを見つめて。
こんにちは。御来場、閲覧、ブクマ、そしてお気に入り登録ありがとう~御座ます///又お立寄りいただけますと幸いに思います///有難う御座ます。ではまたm(_ _)m




