表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/62

三十三『村の子だもん。』

 ウィアナは夢の中にいた。


 大きな竜は、口から禍々しく炎を吐き出した。熱いーー



 ウィアはそう思った。



 それから。



 シャーリンが出て来た。睨んでいる。ウィアナは脅えた。怖いと思った。叱られる。だって、仕方無かった。



 両親の顔すら覚えていない。兄は頻繁に出掛けて、村にいなかった。



 呑み込み悪いウィアナは、身体の大きな子供に、突き飛ばされた。『邪魔』だと。



 オレガノもカルセオも、ミアもジニアも居ない日だった。五歳のウィアは、八歳の男の子に、負けたのだ。


 彼はいつもカルセオ達に、負ける子だった。




 カルセオ達が、出掛けいない日に、態々ウィアに嫌がらせする位ーーには、カルセオ達が、嫌いだった。






 理由は、それだけだった。




 カルセオ達は、ウィアと仲が良かった訳ではなく、ウィアの兄、グロメラタに懐いた子供達だった。



 兄は剣も魔法も学力も、体力も何もかも、優れた人だった。オレガノ達を指導したのは、彼だ。



 グロメラタは、人を選んだ。全ての子供を指導した訳ではなかった。才能無き子を指導しても、怪我をさせるだけだからだ。兄はそういう人だった。



 ウィアが兄から教わった事は、簡単な生活魔法と、料理と、掃除と、畑の手入れだった。



 勉強は、教えて貰ったが。文字の読み書き。数字、計算。地図の見方。薬草の煎じ方。



 生きる手段だけ教わった。





 いじめをかわす方法を、ウィアナは知らない。兄は、教えなかった。



 転んだウィアナは、打った場所が、痛むのを知った。それから悔しさを。擦りむいた手を治す方法を知らずに、ひとりで泣いた。




 帰って来た兄が見た頃には、それはもう、治った後だった。兄には言わなかった。







 言えなかったのだとーー知ったのは後からだった。




 ある日、又『いじめ』られた日に、オレガノ達は『それ』に気付いた。目撃したからだ。『森』からの帰り路だった。花に水やりに来たウィアナは、いじめっ子達にやはり突き飛ばされ、転んだ所だった。助けたオレガノ達は、ウィアナを『強くしよう』ーーと思った。



 オレガノは魔法を教えた。師、グロメラタから指導された其れを。

 カルセオラリアは虚勢を教えた。心構えだ。強い言葉使いを強いたのも、主に彼だ。


 ジニアは器用さを教えた。主に逃げ足だった。

 カルミアは、ただ、励ましただけだった。


 何よりこの時彼は、ウィアを『守ろう』と決意した。恋心を抱いたのはこの時だ。



 ウィアに伝えたが、彼女には未だ理解らなかった。それは今でもだが。



 ミアの『恋』に、ウィアは未だ、気付いていないのだ。ウィアは未だーー幼い。



 オレガノもセオもミアも『それ』にーー気付いている。案外未だ『子供』なのは、ニアもでーーあろう。



 ペルウィアナは夢の中で、睨んだシャーリンが村のいじめっ子に見えたーー



 それから姿が変わるーーりくになった。




 炎を吹いた『巨大竜ドラゴン』は、陸だった。陸がドラゴンに為り、ドラゴンが陸に成った。ウィアは焼かれた。ーー熱くなかった。






 ただ、ーー痛かった。






 胸が痛くて苦しくて、陸が怖い顔で睨んだ。ウィアは泣いた。泣いたのにーー








 髪が、何故だが優しく撫でられた。何度も。






 多分兄『グロメラタ』が撫でているのだろうーーとウィアナは思ったのだった。気持ちが良かった。





 そこに、ぴょんっと、『うさぎ』が出て来たのであった。さっき、あっちの『大陸』で出遭であったーーうさぎだーーと、ペルウィアナは思ったのだった。





 変なうさぎだった。



 『紺』と名乗った『変わった動物』が、『大きなドラゴン』とーー語り合っていると、……………………………………………………………………






 「おはよう。」



 が、言ったのだった。ペルウィアナは、きた。




 夢からめたらしい。どうやら。



 しかしウィアは、夢だと思った。彼女は自分の寝台で寝ていたからだ。そうか、『全部』夢だったのだと思った。変な夢を見たものだなと。





 ✻  ✻  ✻



 王宮にて、彼等は話していた。



 国王は言う。『今年は咲きますかね?』と。


 近くで語らずに『皇女』は、微笑んだ。その又近くで、華月 陽藍は妻を横に置きながらふっと何かに気付いた様な仕草で、口の中で何か言った。



 国王が『気付く』と、『レザード』が到着・・した。ーー疲れ切っていた。



 華月 陽藍は『おかえり。』と語り掛けたが、『王子様』ーーとは言わなかった。必要無いだろうーーと。



 代わりにーー「『』は今年も『』間に合わないのかね。」ーーと、言ったのだった。





 長年の『夢』なのになーーと。隣の細君は、微笑したのだった。




 『いっそ「」に植えてはどうなのでしょうーー』



 王の傍らの『王太子・・・』が言ったのだが、駄目だと言われた。




 「駄目だよ、王子君。あの村は。」




 華月 陽藍は、そう言った。『スプス』では、駄目・・だと。




 息を整えた『レザード』は、『皇女』に言うーー『城』の、生活は『どうだ』と。




 レザード・ガイサースは、『ガイ』の姿だった。冒険者だった。




 王太子は『その姿』を、呆れて笑ったのだ。




 「『冒険者ガイ』ーーは、実在するのだなーー『レザード王子・・』。」



 笑った王太子に、彼は返した。やめろーーと。



 「誰がーーレザード『王子・・』だ。王太子『殿』、もう呼んでくれるなよ」ーー




 と。確かに『彼』は、そう言った。





 ✻  ✻  ✻



 んだ『シラン』は、確かにそう聞いたのだった。確信した。






 『レザード』は、『王子・・』ではないのだーーと。




 ❅  ❅  ❅



 「『ペルウィアナ』は、大丈夫なのでしょうか?」


 シャーリンは問い掛けた。



 「『紺』がみてるから、大丈夫だ。」



 シャーリンは窓の外を見たのだった。


 「そもそも『あの村』の『子供』は、強いからなーー」



 その言葉にーー追い掛けられながら。多分、もう、彼女と会う事はないだろうと思った。



 胸が少し痛んだ。余り優しく出来なかった事も。ーー





 ーー助長した。




 ❅   ❅   ❅




 夢の終りでウィアは子供の姿だった。泣きながらあの日の言葉を呟いたらしい。




 『村の子』だもんーーと。




 『余所者よそもの』ーーと蔑まれて。兄がこわい顔になった。



 嫌、違うーー傷付いたのだ。




 ウィアナには何もかもがーー判らなくなったのだった。本当の事も。誰かが吐いたーー嘘も。




 自分が何者なのかも。親に捨てられたのかかーーどうかも。全ての事が。




 兄の最後の妹へとーーくれたあの石を手放せば、楽になる気がしたのに。それは彼女の気のせいだったようだ。




 何も楽にならずに失くしたものが増えただけだった。

 もうウィアナは村の子ですら無いのだと思った。


 全部、自業自得なのだーーと。




 兄の言い付けを破ったのだから。きっともうも戻って来ない。ひとりに為った。彼女ーーペルウィアナーーは。



 又涙は溢れたのだが、それは熱くも冷たくも、ーー哀しくもなかった。


 少し、痛かった。





 ーーただそれだけだった。



 髪を撫でたのはシャーリンだと思ったのに彼は居なかったのだから。





 彼女は要らない能力で、彼の気配は自分の『側』に無いーーと知れた。居ないのは当たり前だ。



 シャーリンはウィアナの何でも『無い』人なのだからだ。



 でもさびしくて死にそうだと彼女は思った。どうして居ないのだろうと。







 あたたかかったのにと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ