三十ニ『シャーリンが出会った少女。』
イチゴ・シャリンバイは、或る日旅先で少女と出会う。少女は肩に精霊を載せていた。精霊は現世では伝承でしかなく、イチゴ・シャリンバイ事シャーリンも初めて見たモノだった。
少女は当たり前の様に、精霊に触れていた。シャーリンはその時まで、精霊とは『触れれる』モノだと思っていなかったのだ。正に、目からウロコとは、此の事であろうーーと。
此のペルウィアナと言う名の少女を見てーー思った。
二度目の出会い、謂わば再会は、実に『意外』な、場所にてーーで在った。意外にという他無いだろうーー海を越えたのだから。そうーー越えれる筈無きーー海をだ。
或る意味貴重な体験で在ったろうーーが、二度とは御免だった。命が足りなさ過ぎるーー
へたれで良いーー生きたい。未だ死ぬ気は無いのだ。彼、イチゴ・シャリンバイには。
正直な事を言えば、彼は出来れば此の『少女』ーーと、関わりたくーー無い。
それが本音だった。
そして今、彼は何故なのかーー『王宮』にーー居たのだった。正直に言うーー
シャーリンは、此の場から、逃げ出したかった。
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ペルウィアナは『慣れない場所』に今居る事よりも、隣の男の『顔色』がーー気になった。
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「具合悪いの?」
ペルウィアナはシャーリンにそう聞いた。一応彼女は、『薬』を持っていたのであった。故にだ。最も先程『龍』と言う人が、巨大竜をいとも容易く『回復』させていたーーあれは多分『人間』にも『使える』だろうーーから、ウィアナの薬は『今は』必要ないかとも思ったのだが。
聞かれたシャーリンは意外そうな顔をした。ウィアにはそれが意外だった。自分は変な事を言ったろうかーーと。
「へ?シャーリンの『旦那』、具合悪いの?」
応えたのは、ミモザだった。シャーリンは面食らったままだった。ウィアは聞き直した。
「………………お腹空いてる方だった…………?」と。
シャーリンはますます固まったまま動かなくなったが、ミモザの方は一瞬の硬直の後に呆れたのだった。『なんでその2択だ?』と。
『魔法使い』と、『王族』がーー来たのは、その時だ。
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「お父さんーー」
『陸』という男の人がーーそう言った。魔法使いーーいや、フェアリー・ヴァースの事を。
そう言えば前に、そう呼ばない様に頼まれた事を、ウィアは思い出した。
ウィアはようやく今自分が『いる』場所が『場違い』なのだという考えに、行き当たっていた。
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「かっ、帰る。ーー帰りますーーわたしーーなんで『こんな処』に、居るの?」
ペルウィアナは、そう言ったのだった。
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それに応えたのは、陸だった。
「なんで?君、『馬鹿』なの? 『僕』が『救けた』から、居るんだよ、此処にね。『あの世』って場所に行きたかった? ーー在るのか『知らない』けどね。今からでも行くーーなら叶えるよ。 大体さ。『こんな』場所って失礼だよな。 此処は人様の『邸宅』なんだよ? 君は人から自分の家を、『こんな』と表現されたらーー気分良く成る訳? ーーそれは変わってるね。 僕ならーー良い気分には為らないね。 『そんな』言われ方はさ。 あのさ、『言葉の文』ーーとは、言わせないよ。」
陸の言い方は冷たかった。
陸の生徒達は、執り成したが、陸はそれきり何も言わなかった。
言い返せないペルウィアナは、ーー様々な感情が昂ぶりそして混ざり合い言葉が出ぬままに、そしてついに、声をあげてーー泣き出した。
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泣く彼女の興味が、其処に逸れたーーのは、懐かしい様な『違和感』からだった。
気付くとやや大きな手が、彼女の頭を撫でていた。
❅ ❅ ❅ × × ×
「陸ーーもう『少し』優しい言い方な。未だ『子供』なんだ。わかってるーーだろ。」
華月 陽藍は、息子『陸』へとそう言った。息子は溜息で返した。今ペルウィアナは此の部屋には居なかった。散々に泣き、そして疲れ、眠りにつき、別の部屋へと運ばれた。
華月 陽藍は『此処』に、事態『収束』の『報告』に来たのだ。ついでに『用事』は、在ったが。未だ『時期』では無かったーーらしい。少し早かった。
陽藍は『花見』に来たのだ。意外と言うなかれ。此の『国』に『花』を『植えた』のが、陽藍なのだ。もう、大分前の事なのだが。
此処は、星神白神が『在た』土地だーー故に、酷い被害を受けた『土地』だった。陽藍が根気良く『再生』ーー回復させた場所でも在った。森が多いのもその為で、花や、果実の樹を植えたのも、野菜や果物を実験的に植えたのも陽藍だ。『過去』ので在るが。
ハナ王国の『先祖』は、故に陽藍と縁深いのだが、白神が『此の土地』を壊して『直ぐ』に、陽藍が再生した訳では無い。大分時が経ち、白神を『忘れた』頃に又ーー彼は、此の『土地』に跳んで来てーーしまった事は、只の偶然だった。
荒れた岩だらけの土地が広大だったので、単に『勿体無い……』と言って、土地に手を加えたのだ。その後定期的に『来て』、時間を『掛け』再生させた。ーーもう随分昔の話で在るーー彼は最近ーー『一年程前』迄、大昔『白神』に出遇った星と、定期的に通う『此処』とが、同一の星だと気付いていなかったというーー
偶に『放置』星ーー為るものがーー存在する。神が出掛けたまま永く帰らない星だ。『不在』『留守中』という事だ。
ハナ国に、『初めて』来たーー陽藍は、星の『神』に、アクセスを試みたが、応答がなかった。故に『其れ』だと彼は思ったのだった。
白神は留守では無く、彼の強さに恐れを為し、応答出来なかったのだが。
情けないとは言ってやらないで欲しい。気付いている故にだ。
シャーリンは陸の様子を見るでもなくーー己の手をただ見つめていた。ペルウィアナという少女にーーつい、構ってしまうーーその手を。
泣いたのを見て思わず動いたーーその手を。関わらない方が、良いーー此の手を。
見ても何も変わらないのに。
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