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〘 3 〙  『美津原 敦之』

 「ーーえ、お前……この『中』入る『勇気』あるの」


 俺は隣に立つ、此方を見上げる中坊の顔を見た。怪訝な眼差しに、此方の顔も引き吊る。


 「ーー『音』、………考え直せ。……タイミングが悪りーわ。………………………………、な?」


 生意気故に、一応親戚でなくば、絶対に関わらないで在ろう中三の『少女』の顔色を伺った。瀬野尾せのお おとは、顔だけは綺麗だと云わんばかりの其れを、酷く歪めたのだった。



 美少女の名が台無しだなとは、俺は思った。俺は今日『親友・・』に、と或る報告をしに来た訳なのだが…………音は何か知らんが略勝手に付いて来たのだった。此処来る前に、隣ん家に寄ったんだよね、俺。隣宅『瀬野尾せのお家』にさ。用事は音に有った訳では無く。隣宅の家主が俺の仕事先のボスなのだ。一応社内では『社長』と呼ぶが、私用プライベートでは『オジさん』ーーと呼んでしまうーー隣宅のオジさんーー『かがり』さんーーだ。


 おとはその娘。一応ミュージシャン志望なのだが……。うん。こいつはね、兄貴にあしらわれて……『大和』君に………泣き付きに来たのだろうな…………大和君、フェミニストだから。


 俺はその『弟』、ハヤテーー事、佐木 隼人はやとに用事で訪ねて来たのだが………


 珍しく居た夏美オバサン………あ、隼達のお母さんね。美人なんだ此れが。俺の母親は童顔な所有るけど、夏美サンは本気で美人です。隼、ポジション代われや?ーーと、何度も思った程だ。



 バリキャリだしな。うちのグループ会社の『別』部門に在籍るんだけど、やり手の噂が俺の処にまで届く。後、無駄に強い。俺は中々この人に『勝てないで』育った。女なのに空手強過ぎでさ?旦那さんより強いとか言われてたわ。本気で。夏美オバサン当人は、旦那の夏央なつおさんーー我社の『専務』ーーなんだけどね、旦那の方が『強い』ーーと言うーーが、俺は信じれなかった。


 夏央オジサン、うちの『親父・・』と違って、凄え優しい人なもので。誰だってそう思うわ。



 俺は親父には叩きのめされたえしか無い。あ、ネグレクト違うからな。虐待じゃなくて、『稽古』な。空手の師匠は親父ーー実の父親です。



 『美津原みつはら 美津之みつの』っていうんですけどね? 俺の父親。一応職は『役者』ーーだったりする。


 一応と言うと怒られそうな知名度レベルで、有名俳優かもしれない。ああ………親の説明は何か照れるな。何でだ?此れは。ま、置いといてだ。


 「へたれ『敦之あつの』」と、


 横にいた『音』に、言われましたさーーお前な。へたれ違うわ。空気読めるだけだわ、俺は。お前と違って『大人』なの。とーー今年28に為る俺ーー美津原 敦之は、思ったのだった。




 音は生意気・・・だなと。ーー誰に似てんの? 此の子は? 兄貴の『しょう』の影響なのかね? ま、違うか。末っ子遅れっ子で甘やかしちゃったかな、オジさん、いとオバさんも。あ、因みに音の母親の『いと』オバさんも、夏美オバサンと又少し違ったタイプの、しっとり美人ーーかな。実に美しい。娘の『ヒロ』姉は、そっくりだ。



 音とは似てない。ーー音はーー誰に似たんだろうなーー音。不思議ワンダーだよ。



 因みに『オト』の名だが、『イト』さんの『娘』だから、『音』でえて、名付けたーーとか。絲さんも篝さんも漢字一文字名だし、其処で、篝さんが『音』楽好きからなぞらえてーーとか、色々云われが在るーーらしい。絋姉と、紹は、『糸偏』繋がりだよ、勿論。


 篝さんが絲さんに『因んだ』名前にしたかったーーそうで。え?どんだけ好きなの?ーー嫌、よそうーー考えるのは。



 答えなんて出ないんだから。





 と、思ってたら、音が『扉』をーー開けやがった。ーーお前本当ーー空気読めねーな。




 芸能人は、無理だと思うよ、俺は。どの道音には『唄』の才能・・がーー無い。悪いけどもだ。ーー諦めろよ。



 ×   ×   ×



 「ーーは? 音? おまっ、なんでいんの?」


 「『おかえり』『はやと』君。ちょっと『乱入』しにーー来た。」


 ……………………………………おとーー何言ってんだ?お前は?? ……………………止めるか。


 俺はーー俺も、だな。『乱入』を決めた。溜息混じりに。



 ×   ×   ×



 「あ〜ストップな。つうか、訂正な。隼人、久し振り。一年振り? や、もうちょいか。お前ね…………急に伊太利亜行ったりとか、………連絡寄越さないとか。…………心配掛けんなよ。全く。って、お前の場合『昔から』か。」


 俺は『親友・・』に、そう言った。困った男だよね、こいつ。勝手に『伊太利亜』に、修行・・るとかさ。言ってけや、ずは。呆れたよ、俺は。



 昔からだけどな、こいつ。拗れてんだよ、お前はさ(笑)



 「敦君?」


 答えたのは、弟の『直夏すぐな』の方だった。



 「お~『スグ』じゃん。お前も久し振りだな。あ、お前『結婚』したんだって?何?『デキ婚』な訳?全く、生意気な奴め。『報告』位、俺にも『しろ』よな。」



 と、俺は親友の弟を皮肉ったつもりだったーーが、何故か予想外に、


 「ーーえ? 結婚ーーえ? デキ婚ーーえ? 子供………………………? え?」


 隼が『告った』女が、青褪めたのだったーーんん? 嫌此れ真逆の兄弟修羅場サンカクカンケイだったのか?




 音ーー空気『読む』ーー練習しろや。どうすんだよ、此の空気。



 あれ?待って? 直は嫁いるから、四角関係か? 俺、どの道『報告』無理だよね?ーーと、思ったのだった。




 で、此のねえちゃん、何者よ? 出来れば知りたくも無いーー俺だけども。




 ×   +   ×



 「直君。隼兄。そのひと、『誰』? ……………『ぶす』だね。」


 瀬野尾せのお おとは、しれっと『爆弾』を落とした。怖いなこいつは。俺は思った。最近の『若い子』は、本気で『コワイ』と。早瀬はやせにしてもだ。全く。


 俺は音に答えた。因みに兄貴ハヤテは青褪めたし、早瀬も同じ様なものだ。固まってるよ。敦君はちょっと引き吊ってる位だな。それにしても敦君と音とはーー実に意外で珍しいーー組み合わせなんだけど。何ーー?


 と、其処に母が来た。此処客間というか、所謂応接間なんだけどさ、音も敦君も扉閉めないからさーー開けっ放しで。其れに母が一瞬不思議そうな顔を見せた訳だ。


 俺と目が合って、何かは察したみたいだけど。で、部屋に入って来た。母、夏美が。


 『どしたの~あんた達』と。実にいつも通りに。とても母らしくーー


 「隼、直夏、いつまでも『その』お嬢さんに『居て』もらっても、『仕方無い』でしょ? 直はどうするの? 『警察・・ぶの? 『被害届け』いまから出す? ん?」


 母は言ったのだったーー俺は面食らう。多分だが、言いたい事は理解るが。


 「いいや。届けないよ」ーーとだけ言った。



 確かに早瀬には参らされたけれど、彼女は未だ若いし。『若気の至り』ともいう。



 何か思い詰める事が有っての行動だったのかもしれないし。確かに彼女の行動には、多少頭が痛んだけど。会社辞めたら楽になったし。何より仕事が楽しい今、そんな事は煩わしい。



 今回だって悪いの兄貴はやてだし。と、俺は思うんだけど。と、思うと説明せずとも、母が察した。ーー助かる。



 くどい説明は好きじゃないんだ。何でだろな。建築の話ならば、いつ迄だってしていられるのに。不思議だよ。



 然し、母と裏腹に慌てた早瀬が其処にいた。



 「え? え? 『警察』って、まさか『私』を? え? それってどういうーー」


 「落ち着けよ。」


 慌てる早瀬に、兄、隼人が言った。皆が兄貴を見た。早瀬もだ。兄貴は又言うーー



 「あ〜『母さん』。この女ーーや、彼女ーーえ〜と、名前ーー何?」


 …………………………………締まらない兄だな、隼人は。俺は『早瀬 茉美まつみ』とおしえた。



 兄は仕切り直す。



 「茉美と、俺、『結婚』するから。だから直夏は、何も『するな』。『わかった』な」ーーと。




 多分隼の言う『何も』するなーーと、母の『言いたい事』は、大分ずれている。けれど、母は呆れた後に、にやっと一瞬笑ったのだ。…………………………何か、企んでるな……………………と、息子歴26年目の俺、佐木 直夏すぐなは思った。



 「あのさ〜はや君さ。あ〜どうしよう〜まず『なにから』つっこもう〜かな…………」


 と、音が言った。何で音が居るんだろうと思ったが、多分母が分かってるだろうと思い、聞かなかった。後で聞けば良い。



 「いいや!敦之兄! 譲る! 先にど〜ぞ。」


 音が言った。う。ーー元から『用事・・』に、付いて来たのが、お前な?ーーと。


 「敦………之……?」


 佐木 隼人は、同じ歳の『幼馴染・・・み』に、そう言った。まるで存在に今気付いた様な声だった。



 美津原 敦之はーー得意の『空気』をーー読む事にした。それで言ったのだ。




 「『はやて』、俺、今度『結婚』するから、その『報告』。先ずは『お前に』とーー思って。ま、うちの親とか仕事の『都合上』、どうしても先に『知ってる』けどな。プライベートじゃ、お前が一番『先』だよ。じゃ、『用事』済んだし、帰るね?『取込み中』だし。オバサン、どーもね。しかしさ……………取込み中に、俺を『通さないで』よ……………オバサンは。相変わらずだよね。あ、其処も『好き』だよ。じゃ〜ね。またね。時間『ある』時は、『デート』してよ、夏美オバサン。いつでもい〜からさ。じゃね。」



 俺、美津原 敦之は、『初恋』の君にーーそう言った。ま、今度『結婚』は、するけどね?



 『永遠』の『憧れ』が、いても、別にいいよね? 『叶わぬ』もんだしな、『初恋・・』。




 隼人と早瀬さんーーとやらから、『俺』に興味の対象が移ったらしい、『音』は、



 「あっ、『相手』『誰』〜〜〜!」と、



 絶叫して来たのだったが、俺は振り返らない。教えるかよ。音には。あっと言う間に拡がるだろ、それ。




 御免だぜ。



 敦之は行ってしまったので分からなかった。残された面々が『語った』事をーー。

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