二十八『こういう場合は一先ず歩くしかーーないんですよね。』
「『取り引き』とか、『許す』とか『見逃す』とか、以前にさ。ーー」
シャーリンが言った。賊が『ん?』と返す。ウィアは涙目のままだった。
「此のーー『森』抜けないとなーー『命』に関わるぞ。だろ?」
「………………たしかに。わかった、『一先ず』休戦だな。」
「………………別に此方は、『戦って』無いけどね。ま、いいか。宜しく、『シャーリン』だ。そちらは?あ、そうだ、君もね。」
「え?」 「ん?」
シャーリンは笑顔だった。
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「ーーなんだーーつまりだ。『アンタ』…………『シャーリン』だったな…………シャーリンは『さっきの』男とは『別』な訳か……………………。やるな『お嬢ちゃん』。」
「シラー・ペルウィアナ。一回で覚えてよ。頭悪いな………」
ペルウィアナは不機嫌だった。シャーリンは渋い顔をした。そして言った。『こら』と。
ウィアはどきりとして、シャーリンを見た。
「口が悪いぞ、君。言って良い事と、悪い事とが『在る』。例えば『悪人』だったら、言葉で『傷付けても』良いのか?ーー違うだろ? 君が言われて傷付く言葉ならば、言われた『相手』も『傷付くんだ』と思え。ーー其れが理解らない程ーーもうーー『子供』でも無いだろう?」
言われたウィアナは、言葉に詰まった。元から『会話』が、苦手だった。立ち尽くした。ウィアナが返事をしないので、シャーリンは『時』を待った。
俯いたウィアナはちいさな『言葉』で、多分『……ゴメンナ……サイ……』と、言った。手を、必要以上に握り締めながら。シャーリンがふと『異変』に気付くよりも、ウィアナの方が、早かった。
走り出したのだ。
「ーーん?!」
『賊』の其の言葉で、現実だと知ったシャーリンは、走り出した。追い掛けたのだ。『危な過ぎる』ーーと。
ウィアは速かった。知らぬ森で『方向』も見ずに闇雲に走ってはーー!
シャーリンは全力以上の力で、ウィアを『止め』た。息が乱れる。呼吸が苦しい。何だってこんな思いをするのだーーと。引き留められたウィアは、きょとんとしていた。ただ、泣いていた。多分パニックを起したのだろうーーと、シャーリンは思った。
まあ、無理もないーーと。
呼吸を整えた彼は言った。『すまなかったな』と。やはりウィアは、きょとんとしたままだった。腕の中の彼女は、まるで小動物だった。
「おお、いたか」
その時、『賊』が追い付いて来た。シャーリンは思わず『え?』と言ったのだった。正直此の男の事は『諦め』て、置いて来たーーのだが。まさかーー追い付いて『来る』とは。
シャーリンは男を『優秀だな……』と思ったのだった。呆れていると男が気付いて、にぃっと、笑った。
「『追跡』は『得意』だぜ?あ〜『シャーリン』さん?」と。
シャーリンは応えた。
「………………シャーリンで、いいけどな……」と。
先ずは『名乗ってくれ』と。
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「はっは。大物だな、アンタ。あ、『シャーリン』な。んで、『お嬢ちゃん』は?っと、いかん。『ペルウィアナ』ちゃんな。あ〜俺はね、『ミモザ』とでも、呼んでくれ。」
ウィアとシャーリンは『ん?』と思った。そして聞いた。
「は?」 「え?」 と。
「「『ハナ』国の、ひと、なの?」か?」と。 『ミモザ』に、『仲良しだな……』と返されたのだった。
確かに言われるだろう。シャーリンは又、ウィアナを抱えたままだったのだから。
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「なんだーー『食料』持ってんのかよーー早く、言ってくれよ。」
『ミモザ』が言った。シャーリンが応える。
「『三人分』は無いぞ。だから『早目』に、森を抜ける必要が在るーー」と。ミモザも同意した。
だが、ウィアは『どうして?』と言った。男二人はウィアナを見た。『ん?!』と。
きょとんとするウィアナ。そしてこう言った。
「『動物』居るみたいだよ?『狩れ』ば良いよね?」と。
二人は呆れて交互に言った。『あのな……』と。『簡単に言うな……』と。
「『狩り』とは言うがな……」 「あ、来た。」 「ん? んん?!」
「やった。『実豚』だっ」ウィアは喜んだ。 シャーリンが警戒するより、ミモザが構えるよりも、速かった。
「ーぶっぴぎぃ!? ーぃ。…………………。」
ウィアナの『魔法』が、ずどんっ!ーーと、命中したのはだ。憐れ実豚さんは、絶命された。
二人の男は『絶句』したのだった。ウィアは実豚は弱いと思うが、実は実豚は、強かったのだ。
「……………へ? …………いちげ………、いちげき……………は? 実豚一撃て。嬢ちゃんよ。ははは。…………………………………成る程な。…………………………俺が気絶する訳だわ。はは。」
そこへシャーリンが『ミモザ』……と、声を掛けた。『見えないか?』と、ウィアを指して。
何が?と言ったミモザに、シャーリンは言った。『精霊』だよーーと。
「は?」 精霊って言ったか?今ーーミモザは戸惑った。居たとして『見える』訳が無いのだ。
「『ウィア』、あの子は『精霊の加護』を、受けてるよ。だから『倒せる』と思うな。『死にたく』は無いだろう?」と。
シャーリンは真剣に、言ったのだった。ウィアは、
「ねえ〜『実豚』〜。捌かないと、食べられないよ〜?『刃物』貸してよ!汚さないから!」
そう言っていたが。ーーーーーーーーーーーーーー
「じゃあ『食料』確保したし、そろそろいこう〜。良かった。実豚居て。美味しいしさ。」
ウィアは、ミモザから小振りのナイフを借りるや否や、手速く見事に、『実豚』を『解体』した。そして『肉の処理』をして、『保存食』を、作り上げた。『魔法』を使って。
鮮やかだった。実豚の『燻製』を、丁寧に『仕舞った』ウィアは、満足してそう言ったのだった。
「や、歩く『前』に、質問がある。」ミモザは言った。ウィアは『え?』と応える。シャーリンは言葉が出なかった。
「??」
「その『かばん』だよ。『実豚』入れたよな?」ミモザが言った。ウィアは意味が解らない。『入れたよ?』と返した。
鞄は、実豚より『ずっと』小さかったのだ。ウィアは知らない。
此れは家に『置いてあった』物だからだ。『魔法の品』だと。『貴重品』だとは、知らないのだ。
ウィアは取り敢えずだか、此の後『歩きながら』も、此の『ふたり』から、懇々と説教ーーもとい、『注意』を聞かされる事と成るのだった。涙目で。
『人前で披露すんなよ! 危ねーからな!わかったな?嬢チャンは。たくっ』
『あ〜ペルウィアナ、いいか。実豚は普通君位の女の子が、「ずどんっ」と、倒すモノでは、無いんだぞ?後「解体」もな。あ〜後………、』
『「燻製」もだからな?其れ「高級品」なんだぞ?「一級品」だぞ?たくっ』等と。
ウィアは涙目に成りながらも『だって村で「普通」に食べてたもんっ、実豚も。猪も。野生牛も。兎も。全部「美味しい」もんっ』と、逆切れしたので在ったーー
勿論連れ達は『……………駄目だ……………こいつ(此の子……………)』と、思ったのだった。
勿論、黙々と、確実に着実に、歩きながら。




