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ニ『肉が届くよ』

 「は? なんだそれ。大丈夫なのか?」


 「嫌、駄目じゃん。」


 少女ペルウィアナは、『捕れ過ぎた』とウサギと野生猪肉のお裾分けを持って来てくれた幼なじみに、そう返した。ウサギを狙う猪と野生牛に偶然遭遇したらしい。それで三匹ともげっとだーーと、幼なじみは勝ち誇った。今日は四人で連立って、狩りを遠出したらしい。偶にこいつ等はあの森に行くのだ。村から少し遠いが、近くの森より獣が多い。肉が捕れる。捕り過ぎは良くないが、偶に狩らねば溢れる。それは良くない。定期的に見廻りをして、狩りの時期を決めていた。獣が増え過ぎ大量な時は、燻製にした。薫りがついた燻製肉も美味いものだ。


 隣国である『テラピー皇国』ならば、『魔獣』とやらが多すぎて、森は危ないらしいが、この国に魔獣は居ない。何故かは知らないが。大分昔からいないらしい。


 魔獣肉は美味いらしいが、此の国までは、届かなかった。だが、飼育する家畜達は、とても美味しい。用も無いのに、他国から冒険者達が、此の国の料理を求めてやって来る程だった。


 もう少し大きな街には、そうしてやって来た冒険者と言う人達がいるらしいが、ペルウィアナには関係無かった。冒険に興味は無い。


 今日のごはんには、興味有るが。



 何作ろうかな。



 「後であいつ等も来るからな。ウィアナ、あれはどうだ? 『ミンチ肉の野菜混ぜ焼き』だよ。ーー美味いよなあーーあれさ。」


 幼なじみカルミアがそう言った。彼はとてもにぎやかな男だった。歳はウィアよりひとつ上だった。



 「む〜芸が無くない?」


 ウィアナは言った。カルミアの返答は『旨いは正義』だった。今夜のメニューが決まった。皆でバーグ・パーティーだ。


 「よしっわかった! 色んな『バーグ』用意しちゃう! どうせ皆味で揉めるものね!」


 と、ペルウィアナは言ったのだった。後から『牛』も来るらしいから、奮発しちゃう。今解体してるそうだ。


 カルミアは先に解体バラした小兎と、猪肉を持って、催促に来たのだ。余り遅くなると、今日の夕食に『間に合わない』からと。


 確かにもういつもなら、さっさと支度を始めてしまう時間だ。流石、幼なじみ達は、ウィアを良く分かっていた。


 カルミアはしっかりと、肉と一緒に、他の材料を運んで来た。おそらく彼等は帰りの道すがら、リクエストを決めて来たので在ろうーーと、ウィアナは思った。



 『しっかりしてるよ』と。ーーその時だった。家の戸口の扉が叩かれたのは。


 「え、随分早いね?」


 ウィアナはそう言ってから、カルミアと顔を合わせて、そして扉へと向かった。



 開けた扉の先には、先程の男がた。『なんで?』ウィアは思った。



 『未だ諦めてなかったのか』と。


 先程アキギリのおじさんの処にいたその男は、ペルウィアナを探しに来たのだそうだ。『はあ?』と言ったウィアに、その男は説明した。『おれの名はシラン。あんたを探しにこの村に来た』と。



 「ちょっと『頼まれごと』してくんない? お嬢さん。」


 「『嫌、断る』。ってさっきも言ったわ。忘れるの早くない?『旅のオニイサン』。」


 「『シ』『ラ』『ン』。そっちこそ一回でおぼえろや。」


 「いや、『わざと』だわ。旅人サン。『帰れ』。『邪魔』。」


 「!! ? 『口』『悪っ』、おまえ『嫁』行けねーぞ。」



 「!!!! 『大きな御世話』だー!!! このやろっ、」



 「『どうした』? 『ペルウィアナ』。」


 と、そこ迄『やりとり』した所で、どうやら役者は揃った様だ。待望の肉ーーじゃない、待望の幼なじみ達が、やって来た。手に旨そうな牛を抱えて。


 正確には、野生牛で在った筈の、肉の塊を、大事そうに『抱え』てーーだ。ああーー美味しそうーー



 早く美味しいバーグにしてやらねばと、ウィアは思ったのだった。



 ❅ ❅ ❅


 「『カル兄』、『ガノ兄』、『ニア!』、こいつ、『変なやつ』なの!『退治して』!」


 ペルウィアナはそう言った。


 「ん? カルミアの奴は何やってるんだ?」

 と、ガノ兄事、『オレガノ』が言う。それに、


 「ん? 『先に』行かせたのにな? ま、いいか。どれ」

 と、

 軽い口調で得物を持ち出したのは、カル兄事、『カルセオラリア』だ。橙色の髪が未だ日に眩しい。


 「ウィナ、カルミア先に来なかった? 野生猪肉持ってる筈なんだよな?」


 最後にそう言ったのは、『ニア』事、ジニアと言う、唯一ペルウィアナと同い年の男の子だ。小柄ですばしっこく、狩りも得意だ。そして解体も得意だった。ウィアも偶に捕る『実豚ミトン』は、ニアに捌いてもらう。小さくて可愛いサイズだが、旨いのだ。そしてまったりした獣なので、ペルウィアナの『魔法』でも、仕留められる。嬉しい動物だ。半年に一度位は、ウィアナも『狩り』に『参加』した。森の浅い処でだったが。


 「俺なら居るよー。今『肉』ミンチにしてんの。」


 其処にひょいっと家屋から顔を出したのは、ごはんが待ち切れない『カルミア』15才であった。



 「「「なにやってんだっお前はっ!逆だ!逆!なんでお前が『包丁』なんだよ!」」」


 幼なじみの皆は、少年カルミアに一斉に『突っ込み』を入れたのだった。


 『居たならおまえが、追い払え!』と。



 旅人はその様な『光景』に、ただ、茫然としただけだった。



 「あれ……俺、……………何しに来たんだっけ……………これ。」と。



 「「「じゃあ『帰れ!』俺達は『めし』の『時間』なの!お前邪魔!」」」と、



 とても盛大に邪険にされて。




 『何ーーこの村ーーこわいんだけど』と。村の数少ない若者達は、皆元気一杯だっただけだが、旅のひとには怖かった様だ。


 時間が良くなかったのだろう。夕刻、皆とてもお腹が空いていた。今日も。



 ことわざにも在るだろうーー『ひとの食い意地を邪魔する奴はーー』とーー嫌、それは、『恋路』だがな。



 此の村では『食い意地』なので在ろうーーと。



 今日も平和に1日が終わる様だった。旅人さえ、来なければだが。




 そんな、平和な、この村の名は、『スプス』村。大国『ハナ王国』の、ちいさな小さな、村で在る。


20世帯程の、とても小さな村だった。

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