二十ニ『シラー・ペルウィアナの知らない処で、事態は動いている。』
「ん〜なあ? 何で御前等、庭に居るの?皆して。」
華月 陽藍は、星神白神と共に来た。
其処に教会の中から、ひょこっと華月 友美が、顔を出して言った。
「あ、旦那さま来た。お疲れ様。ねえ、お兄ちゃん、陽藍さん、中少し狭いと思うのね? 此方来て拡げてあげて? ください。そう言うの得意ーー何したの? お兄ちゃん?」
妹の言葉に、兄 美津原 美津之と言う男が、利き手を前方に出したかと思うとーー教会の中で何かが『起きた』事を感じ取った妹に問われた。
慌てたのは神父だった。『女神さま〜』と、神父は言った。
真逆と妹は思う。真逆だった。かくして教会内部は『拡張』が済んでいたのだった。妹に『見てから』やってよと苦言された。兄は『前に見た』と答えた。
一応説明するならば、『見た目』は何も変わっていなかった。そして、『大丈夫だよ神父さん。普段は「いつも通り」に、成るから』と、『神達』は言った。
当然神父は苦笑いした。引き攣り笑いと言う方が正しいか。
一方『日常茶飯事』組の此方は、苦笑いで済む最高の存在の妻の女神が、『じゃあ何か軽く作って来るね。』と、愛しき夫へと言った。
友理奈もついて行く。マリーサもそれにならった。そこで声がした。鹿島 悠緋の珍しくもある『叫び声』だった。
「なっ、なにしてんだよ!」と。
鹿島 真妃瑠、友理奈の従姉で在る。なので悠緋の『姉』で在る。姉は挨拶の様に平然と言った。
「ベビーシッター的、『バイト』? アンド、観光かな。滅多に来れないし。暇だったし。」
「あと、理桜ちゃん達可愛かったし。ねえ?理桜ちゃん?真琴ちゃん?」
陸の息子『理桜』と娘『真琴』が、嬉しそうに応えていた。微笑ましく。
流石の華月 陽藍も『57』人『集める』のは骨だったらしい。勿論殆ど身内だった。
息子『友』が、『ウチのツインズと偉い違いだよな、流石陸お兄様……』と、苦笑した。
友の言う『ツインズ』、友の息子『竜葵』、『龍輝』だが、今『此処』には『居ない』。彼等は何処に行ったのか? 先ず、竜葵と龍輝は、『イチゴ・シャリンバイ』が『眠り薬』、安眠薬を持っている事を、嗅ぎつけた。凄まじい嗅覚で在る。そして上手くシャーリンの安眠薬を掠めた。
先ず『怒られる』ポイントその一は、此処だと記憶して欲しい。
次に『彼等』は、『西洋』と『和』の『竜』で在る事を思い出して欲しい。あの場には、陽藍に惹かれて『覚醒め』た精霊が『数多』居たのだ。『見えていた』他にも。
手分けして、片方が精霊を抱き込み、片方が掠めた安眠薬を『撒い』た訳だ。二人が『寝なかった』のは、『精霊』の『加護』のお陰だった。
一行を眠らせ、何をしようとしたかは、実は隼人を探そうと思った訳ではない。
『隼人』ではない『迷子』の人の『捜索』に行こうとしたのだ。『直夏』の代わりに。
隼人は、いつ、『飛んだ』のか。
彼は『散歩』をしていた。『夏文』を連れて。
頼まれたのでは無い。『自主的に』だ。彼ーー佐木 隼人は、紹が言う様に『注意事項』を『うわの空』で聞いていたのだ。
聞かされていただけで、聴いていなかった訳だ。
結果的に『勝手』に、『夏文』を『連れ出す』事となり、事態を起こした。散歩中に、すれ違った『女』の『香り』が、鼻につき、くしゃみをした。
そして、夏文は『飛んで』しまった。隼人と、『女性』を連れ立って。不覚にも。
三人も『異世界』迄『飛ばし』た彼は、『眠く』為ってしまい、『助け』の信号を『送る』前に、寝てしまったのだった。『夏文』為る『エネルギー』に『不法侵入』された此の星は、あわや『暴走』、『破滅』する所だったのだが、此の星神『白神』は、昔から縁有ってフェアリー・ヴァース陽藍と『知り合い』だった。
その事だけは、今回の此の事態の『幸い』だったと言えようか。陽藍達の星よりもずっと近い、此の星の『隣』の星が、只今『華月 陸』の『部下達』の『監視下』に在った事も幸いしたかもしれない。協力者が、得れたのだから。
『手なづけて』置いて見るモノだねーーと、陸も思ったものだ。部下の女神達は、やや鬱陶しーー嫌、煩わしーーーー嫌、ほんの少し、姦しかっただけだーー陸には。
話を戻そう。竜葵と龍輝兄弟で在る。彼等は確かに『薬』を撒いたが、考えてみて欲しいーー『耐性』の話で在る。確かに皆、『一瞬』気が遠くなりはした。が、シャーリンは元々『耐性』が強かった。眠る程ではなかった。たち眩む程度だった。慌てたのは、竜葵と龍輝で在る。精霊の助けも借り、一時『隠れ』る。『バレたら怒られる』と。
嫌、ばれてるし、怒られるのだが。
そして。
辛うじて眠気に勝ったシャーリンは、『気付け』を飲み干し、覚醒する。此方の世界で言う『カフェイン』の強化版で在ろう。危険無き程度の。『眠け醒まし』だ。少し落ち着き先ず『レザード』を、起こした。レザードは魔法に長けている。自らを『回復』させ、レザードも立ち直った。そして二人は先ず『直夏』を起こしたのだ。
相談を受けた『レザード』は、『直夏』と共に、出発してしまったーーと言う訳だ。
直夏は『行方不明』の『女性』に心当たりが在った。それを聞いたレザードが協力したのだ。勿論シャーリンも。
行方不明の女性の名は、『早瀬 末美』。直夏の元、同僚だった。
そして佐木 直夏の『ストーカー』でもある。今から約半年程前に直夏の勤め先に入社して来た彼女の行動に耐えられなくなった直夏は、その建築系のデザイン事務所を退職したのだった。
しかし彼女の行動は終わらなかった。そしてその日も佐木家の『近く』をうろうろしていて、『巻き込まれ』たのだ。どうやら夏文の『パワー』は、発動した時に、と或る『一定範囲』空間で発動してしまったらしかった。その『空間内』範囲に、偶々『彼女』は居たのだ。何しろ『佐木家』の目と鼻の先だったのだからーー
隼人は『家の周辺』、我が家が『見える』範囲を、夏文を『散歩』させていた『つもり』だった。
佐木家家長、夏央の妻は、夏美と言う。隼人達の母である。夏美は夏文が昼寝していたので、洗濯物を干していた。其処に『息子』は帰宅した。帰国と言うか。
誰も居ないのかと思うと、『夏文』を『見付け』た。夏文は『起きて』しまっていた。
知らない男だったが、多分『パパ』の未だ見ぬ『兄』だろうと、夏文は思った。なので泣かなかった。
『あ〜う?う?』
(『パパ』の『に〜に(※兄)』ですか?おにいさん?は?)
の、幼児語は、勿論隼人には、伝わらなかった。
だが、『可愛さ』は、伝わってしまった。『よしっ、散歩させよう』ーーと言う発想に至った隼人の事を、紹は勿論『馬鹿』と言っていたが。
間違いでは無いで在ろうと、恐らく全員思っている。突っ込まないーーだけで。
弟の結婚、甥っ子夏文の『説明』、注意事項エトセトラ……、事前に『先回り』した『釘刺し』は、佐木家の次男には無駄だった。あれ程言ったのに………と、流石の温厚な父夏央氏が愚痴ったのを、友人達は確かに聞いた。隼人本人には言わなかったが。
さて、隼人の事は一旦置く。今は『竜・龍』の話で在る。
隠れていた『ふたり』は、『直夏』と『レザード』の後を『追う』形に為ってしまった。『出し抜く』つもりだった訳なのだが。
ふたりは末美を助けたい目的では無く、直夏に『どや顔』を披露したかっただけなので在る。
子供っぽいと言うなかれ。子供で在る。優秀さを見せつけて、祖父、父に誉めて欲しかった『子供心』だ。反省はすべきで在るが。
何故『失敗したのか』ーーそれは、『悠太』は、『眠って』いなかったからで在る。
悠太は『肉体』は『寝た』が、『意識』は『起きた』ままだった。巧も似た様なもので在った。海についてはーーーー以下省く。
巧は悠太程はっきりした意識迄は無かったが、自力で『解毒』していた。『あ〜此れが龍兄ちゃんかお父さんだったら………こんなの一瞬で………出来るだろうなあ……』と、思いながら。
先に回復した悠太は、巧に声を掛けてから、海を『覚醒め』させた。と、言っても海も直ぐに起きた。『精霊』達は、何方かと言えば、『此方』の味方だったからだ。
海は『エネルギー』の『塊』で在る。精霊達に『好かれる』のは、言う迄も無かった。海に『懐けば』『エネルギー』貰いたい放題なので在る。精霊達は『居心地好い』方に『傾く』のだ。例えば同格の『エネルギー量』ならばだ。
確かに『闘わせれば』、龍輝、竜葵は『強い』で在ろう。然し、『力』のごり押しでは悠太には『勝てない』と言うーーそんな話だ。
友は子供にそれを伝えたかったのだが、子供達は『強過ぎ』て、それを覚えようとしなかった。偶には『荒療治』ーーをと、だが、長男『卓』曰く華月家、四男『友』は、
『仕事が雑過ぎるんだよ』だーーそうだ。友は『天才』で、『感覚』で生きている『生き物』だった。
常人と違い過ぎて、上手く子育て出来ない『父』に、似ていた。残念な事に。悪気は無いので在る。だが、『悪気なければ』良い訳ではない。
子供達は、其れを学ぶべきなので在る。
知り合いの『星』を救った『陽藍』が、言った。
「友、『俺達』は『仕事』終えたから『撤収』するがな? 『竜葵』と『龍輝』は『修行』させるんだったよな?」と。
つまり。どうやら子供ドラゴン達は、『置き去り』にされるらしいーーと。そういう事らしい。
「隼は『帰れて』良かったね。全く……『馬鹿兄貴』。」
佐木 直夏は、目の前に居た、『保護』された『兄』に、そう言った。息子夏文が『あっあ〜だっ』と言っていた。
それを又、横で見ている女性が居た。早瀬 末美だった。




