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十五『冗談じゃないーー』

 先ず最初に思ったのは『ここ、何処だ?』という事で、『どうしよう』と言うのは後から来た訳だ。


 「まいったな……どうすんだよ……」


 男がひとり、何も無い場所で独りごちた。


 何も無いとは語弊が在る。『特に』何もない『場所』であろう。男の名は『シラン』、そう名乗っている。『親』から与えられた名だから、当然だ。彼は秘密事が多かった。全てを『話す』訳にはいかないーーそういう生き方だった。


 「『王子様』ってのも……楽じゃない……なんで『こんな目』に……」


 『誰もいない』と思った彼は油断して、何時もならば慎重に、決して『言葉』にはしないーーそんな独り言を声に出して言っていたーー実際、その場所には誰もいなかったーーそれは幸いで在っただろうーー気が緩んでいた。


 非現実体験の為にで在った。滅多にお目に掛かれ無いーー精霊があんなにも『踊る』光景ーー幻想的な其れからの、怒涛の様な、非現実の数々ーー『今夜』は色々在り過ぎたのだ。


 気が緩んでも、仕方無かったのであろう。彼は自分の『独り言』にすら、最早気付いていないのだから。思考が口に出ていた事等。そして思った。『あの村』には、


 「どうやって」帰ろうーー『戻ろう』と。


 普通ならば来た道を戻れば良いのだが、今は違う。気が付くと此処にいたのだからーーそれは無理だった。おそらくーーかの、『魔法使い』のしわざで『あろう』とは、思っていた。


 「………っ、あの男……………、っ」


 面倒臭い事、してくれやがって。彼はそう思った。



 シランは灯りの魔法は使えない。荷物は『村』の、あの家に置きっぱなしだ……そう思った。


 幸いなのか、コートを着ていた事は救いだったろう。………寒かった。あの村は暖かかったからな……シランはそう思った。………ツライ………ぶるりと身を震わす。武器は腰に在る。それはいい。とにかく移動しないと駄目だと思った。しかし………、



 岩肌荒い、こんな場所で、何処に進めと………、


 「自殺行為だろ………これ。」


 彼はつい、力なくそう言った。死んだら怨んでやるーーとーー



 「『神様』? …………んな『馬鹿』な。はっ!あほらし……」


 思わず天を仰いだ。そして蔑む。虚しくも。


 「おい?大丈夫か?『少年』。こんなトコで何してんだ?おまえ。怪しい奴なのか?」


 !!ーーーーーっ


 シランは驚き過ぎて、最早心の臓が口から出るのかと思った。………男がひとり……………居た。その男に何か違和感を覚えたが、それが何なのかその時シランは、わからなかった。


 もう一度声を掛けられてから、やっと返した。いや、返せた。『アンタこそーーこんな時間に何をしているんだーー』と。こんな場所で。怪し過ぎるだろうと。


 言おうかと思った。言う寸前だった。


 「『こんな場所で』かーー。本当ホントだよな。何してんだろうなーー俺はさ。」


 男が声を出して『ははっ』と笑った。変な男だとシランは思った。其処にぱっと、『灯り』が照った。思わず顔をしかめる。灯りの方角から又声がしたーー『あなた方、そんな場所で何をしているのですかーー』と。多分其れは自分達が聞きたかった事だと。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーー



 シランは、そして『宿屋』に、辿り着いた訳だった。正に『命拾い』とも言える。


 話を遡れば実に『間抜け』だった。暗くて見えなかった。岩場も手伝っていた。



 少しだけ歩けば気付けた『現実』は、『其処』が、『テラピー皇国』の、『国門』の『側』だった事だ。つまりシランは、門の目と鼻の先にて、寒さにくれて、途方に暮れ掛けた訳だったのだ。


 「………間抜けだよな……」やはり思わず声に出してしまったのだった。


 「どうした?『少年』。大丈夫か?」


 同じ部屋の中にいた、『先程の男』にーーそう問われた。宿が、今夜は『ひと部屋しか……』と言われたのだ。しかもオマケの様に、男は金も持っていなかった。後で『返す』と言われたが、シランは溜息を吐き、頭に痛みを感じるしかなかった。仕方無いので、もう寝てしまおうとそう思った。



 明日、一度、『荷物』を取りに行かなくてはいけないーーいや、荷物が手元に在ったとしても、あの村には行かねばならなかったが。


 『ペルウィアナ…………あの子を………』連れて来なければ……………………




 そうシランは思っていた。『彼女が』自分の様に、『飛ばされ』てなければ良いがーーと。




 __………__………__………__


 同じ頃………と或る場所にて……………




 「…………うぅ『さむい』よお。ここ『どこ』なのよ……………」


 と、泣き言を苦言する声が聞こえていた……………ただ、やはり『其処』にも、誰も『いなかった』。




 『今は』だが。



 ___………___………____



 連れの男が、足を止めた。『ん?』と訝しんで。『どうした?』と聞いた。彼は『不気味』な事を言った。『今、人の声、しなかったか?』と。



 そんなものが『此の場所で』きこえて『たまるか』と俺は思ったのだ。質の悪い冗談だなと。



 __…………__…………__



 「大体わかった。………そうだったのか…………よし、わかった。『力』になろう。大した力では無いが、『地形』なら詳しいぞ。それ位なら役立つだろう?『私』でもな。」


 ガイサース王国の、第三王子はそう言った。言われた直夏は『…………いいのか?』と、戸惑った。『レザードは忙しいだろう?』とーー


 王子は言った。『気にするな』とーー


 「直夏の『窮地』だーー手を貸さねば『兄上』に『叱られ』るよ。」と。『恩人』だからなーーと。



 シラー・ペルウィアナはそんなやり取りを、『夢ごこち』で『聴いて』いたーーふわりふわりと。そんな気分だった。肩の上の精霊が、こくりこくりと船を漕ぐのを、支えながら。



 イチゴ・シャリンバイは其の『光景』を『……冗談では………ないぞ?』と思ってみたーー精霊を肩に載せ、『手で』触るーー少女の事を。その気持ちを、未だ、ーー顔へは出さずに。

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