第3話が語りたい
引き続き食堂で私たち三人は雑談を続けました。
「さて、おやつに私がドーナツでも揚げましょうか」
「らら、お前料理できるのか?」
「ええ。どれだけ語りあってもダウンしないような糖分過多で高カロリーなものをご用意します」
「「えっ…」」
「おや、ダイエット中でしたか?でしたら中止してください。女の子のお腹はちょっとぷにぷにくらいがちょうどいいんです。あんまり痩せすぎていると心配になります」
「微妙にわかる性癖こじらせてんじゃねぇよ!」
「なーちゃん分かるんだ!?」
「いいですか?ピーちゃん先輩、可愛い子がみんな体重が30~40キロだと思ったら勘違いですよ?可愛い子はちょっとふっくらでも可愛いんです」
「そ、そうなんですか?でもわたし、そんなに可愛いかなぁ」
「ええ、可愛いです。天使です」
「そういや天使って基本男じゃなかったか?割とガチムチな」
「二次元の天使は男性でも可愛い方は多いんですよ?」
「…お前は可愛ければそれでいいのか?」
「いえ、最悪言葉が通じるのであれば見ただけで正気を失うような怪物であろうとも仲良くできます」
「…多分、その怪物さんの方が辛いと思うなー」
「私にはお前の方が遭遇しただけで相手の心をこねくり回す怪物に見えるぞ」
「それはピーちゃん先輩のことでは?。極悪人ですら改心できるんですよね?」
「ららちゃん、改心をなんだと思ってるの?」
「…ピーちゃん先輩、今日のドーナツは会心の出来ですよ」
「いつの間にか作ったんだ!?そして絡め方が雑だ。もうちょっと練れ」
「それじゃあなーちゃんのお手本、どーぞ!」
「やらねーよ!」
「ええ~」
「なーちゃんって意外と突っ込みキャラなんですね」
「そういうお前は博識キャラの皮をかぶったボケキャラだよな」
「ねぇねぇわたしは?わたしは?」
「合法ロリっぽい違法ロリだな」
「さっきから聞きたかったんだけど違法ロリってなに!?」
「合法ロリじゃないロリの事だ」
「私をロリって言わないで!成長期だからね!」
「らら!」
「成長停止薬を盛ったポンデリングがこちらに」
「…食べないからね?」
「美味しいですよ~お砂糖たっぷりですよ~」
「うぅ、た、食べないもん」
「もちもちですよ~太らなくなりますよ~」
「ほんと!…ううん、でもでも」
「先輩、食え」
「もうっ、なーちゃん?」
「っな、なんすか?」
ピーちゃん先輩はなーちゃんを睨みつける。決して怖くはないが謎の威圧感がなーちゃん向けられていた。
「おこるよ」
「…ごめんなさい」
「フフッ、小学生に叱られる金髪ヤンキーって新鮮ですね」
「もうっ、ららちゃんもダメですからね!ららちゃん、責任とってそのドーナツはららちゃんが食べてください!」
「ちょっ、それは…」
「ええ、構いませんよ」ハムッ
「あっ…」
「おいらら!今すぐ吐き出せ!」
「ふぁんふぇふぇふふぁ?」
「ごめんららちゃん冗談だから~」
ゴクッ「…どうせ私、今後は老ける一方でしょうから問題ありませんよ?」
「…それでいいのかよ
そういや髪の毛とかって伸びるのか?」
「さぁ、分かりません…
伸びませんね。まぁ能力で創れますし問題ないでしょう。そもそも現状かなり長いですし」
「なんか、ららちゃんの今のセリフ日本語的に怪しくない?」
「確かに。タイムラグでもあんのか?」
「糖分不足ですね。私の脳、通常の数倍糖分を消費するんです。というわけでいただきます」ハムッ
「…カロリーはどこで消費されてんだ?」
「何らかの形で体内に溜まってなにか創るときに消費されます。
ぶっちゃけますと私の体重は結構重いですよ。具体的には75キロくらい」
自分で語っておいてちょっと恥ずかしいですねこれは。顔が赤くなるのが分かります。
「リアルな数字だな~」
「でもららちゃん、そんな太ってるようには見えないよ?」
「密度とかが違うんです。大変ですよ?あんまり溜まると硬くて身動きが取れなくなりますから」
「防御力高そうだな。ちょっと殴ってみていいか?」
「ちょっ、なーちゃん?ららちゃん?」
「構いませんよ。その場合分厚い鉄板で壁を張りますが」
「やめとくわ。うっかり私が怪我しそうだ」
「そうじゃなくてもダメだよ。もぅ」
「なーちゃんには鉄分100%のドーナツをあげましょう」
「それただの鉄だよな?鉄の輪っかだよな?」
「わっ、すごい完成度。細かい凹凸まで表現されてる」
「他にもカステラやバームクーヘンもありますよ」
「ららちゃんすごーい!」
「もはやこれ、ただの文鎮だよな。もしくは鈍器。
どーすんだよこれ」
「食堂のカウンターなんかに飾るのはどうですか?」
「いいねそれ!ちょっと置いてくるね、って重!なーちゃん手伝って~」
「しゃーねぇな。ほれ」
「ありがと~」
あの二人、どのような関係なんでしょう。夫婦や恋人ではありませんし、友人と言うには近すぎます。
…母親と反抗期の娘でしょうか。もちろんこの場合ピーちゃん先輩が母親で。
「…ららちゃん、どうかした?」
「っ、いえ、二人はどのような関係なのかと思いまして」
「ん~、考えたこともなかったな。ダチって感じじゃねぇしな~」
「家族でいいんじゃないかな?もちろんららちゃんもね」
…今日会ったばかりの私が?いいのでしょうか?
「何難しい顔してんだよ。今さら博識キャラになろうったって無駄だぞ?」
「いえ、そうではありません。そうじゃなくて、いいんですか?今日あったばかりの私が家族なんて」
「い~よ~。相手がどんな人かなんて五分も話せば言葉にできない程度にわかる。それどころかお昼からずっと話してるんだよ?色々分かるよー」
「先輩、そう言って私が入学した日にめっちゃ構ってきやがったよな」
「懐かしいね~。あの頃は若かったなぁ」
「今も十分幼いじゃないですか。
色々分かると仰いましたがどの程度なんでしょうか?」
「ん~、さすがにららちゃん程じゃないけどね。色々は色々だよ?例えば、んー、…ららちゃん、あんまり自分の能力を凄いと思ってない…ううん、違うなぁ。なんて言えばいいのかな?他の人の能力の方がいい、とか羨ましいとか、思ってない?」
「まぁ、間違いではありませんね」
私はふと空を眺めながら答えました。
「何言ってんだよ?お前ほどすげぇ能力持ったやつそうそういねぇだろ?」
「ええ、そうですね。自分で言うのもあれですが私ほど反則級な能力は恐らく無いのではないでしょうか。
私にはやろうと思えばビックバンなどの前触れもなく宇宙を創り出すことも、有から無を創ることすらも出来るんですから、そんな方他にいませんよ」
「前に、何かあったの?誰かに酷いこと言われたとか?」
「…私には金や宝石、石油なんかを作ることができます。それもかなり高効率的に。
ここまで言えばなーちゃんは分かるんじゃないですか?」
「えっ、なーちゃん分かるの?」
「…まぁ、先輩は六歳からここに居るんじゃわかんねぇか。
なんとなくだが分かったさ。大人共にひたすら創らされてたんだろ?それもかなりの量をぶっ続けでとか、延々と飲まず食わずでとか、自給自足しながらとか、
細かくはわかんねぇけどよ」
「…農家は金を、金持ちは宝石を、国は石油を求めました。
これはあくまで目安ですがこれらを1キロ、1リットル創り出すのに約10万キロカロリーが必要になります。
農家は質の悪いパンや野菜を大量を用意し、金持ちや国は大量の栄養補給食を用意しました。
能力を周囲に知られたのは3歳か4歳の時でしたか。それっきり親はまるで図書館の本のように私を高値で貸し出すようになりましたね。
おかげで世界中を飛び回れましたが、覚えているのはたまに現地の方がくれたお菓子のことくらいですね」
「ららちゃん、かわいそう」
「お前のスイーツ好きはそれでか」
「まぁ、今話したことは二ヶ月ほどで終わったんですけどね。過労死した死体を創り出して死を偽装して『破くとどっかに飛ばされる紙』を創って脱走、その後は、まぁ色々と」
「心配して損したじゃねぇか」
「フフッ、ありがとうございます。
それからは楽しかったですね。お金には困らなかったので世界中の本を読み漁ったりして、最終的に日本のアニメや漫画に行き着きました」
「行かなくていい所に来ちまったなおい」
「私みたいなのをなろう系主人公って言うんですよね?」
「それは本人が言わないのが暗黙の了解だがな」
「おや、なーちゃんもこういったことはご存知でしたか?」
「ねー二人とも、なんの話してるの?」
「所詮人間は娯楽の前には無力だという、この世の真理の話です」
「なんかむずかしそー?」
「いや、んなわけねぇから。普通にサブカルチャーの話だから」
「今やメインカルチャーと言ってもいいと思いますけどね。
『サブ』なんていういかにもおまけみたいな呼び方するからいまだ否定的な方が多いんですよ」
「それだけじゃねぇと思うけどな」
「うぅ~わたしだけ仲間はずれみたいで嫌~」
「ふむ、でしたらピーちゃん先輩、明日にでも本屋さんに行きましょうか。手取り足取り色々と教えてあげます」
「え、やったー!」
「なーちゃん、他になにか買った方がいいものってありますか?」
「そうだな、着替えと…ゲーム機とかか?ディスプレイも買わなきゃな。それと、らら、お前って化粧とかするのか?」
「しませんね。というかやったことありません。肌のケアも化粧水と乳液だけです」
「ほーん。まぁ必要になったらその都度買うなりしたらいいだろ」
「そうですね。最悪私が創ればいいですし」
「うんうん♪ららちゃん来ていつもよりにぎやかになりそうだね!」
「そうかぁ?むしろ静まり返りそうだけど」
「だめだよー、そんなこと言っちゃ。ららちゃんがかわいそうじゃん」
「そうですなーちゃん。ららおねーちゃん、かわいそうです」
「うるせぇ!自分のことを『ららおねーちゃん』とか言ってんじゃねぇよ!恥ずかしくねぇのか!?」
「もう一回、もう一回言ってみてください!なにかの極地に至れそうな気がします!」
「お前を死の極地まで殴り飛ばしてやろうか?」
「貴女を恥の極地までご案内致しましょう」
「サラッと私より怖ぇこと言ってんじゃねぇよ」
「具体的にはこの学校の全校生徒になーちゃんのことを『お姉ちゃま』と自然に呼ぶようにちょっと手を加えます」
「やめろ気色悪い!やってる事がしょうもないだけで立派な洗脳じゃねぇか!」
「ピーちゃん先輩、ちょっと呼んでみてください」
「えっと、加奈お姉ちゃま?」
「やめろー!灰になるわ!」
「どんな表現ですか」
「お前の仕業だろうが!」
「何を言ってるんですか、なーちゃんが可愛いからです。私は悪くありません」
「んだとコラ!」
「なーちゃんの目は綺麗ですね~」
「お前の目に節穴を開けてやろうか」
「…あれって人為的だったんですか」
「あれ、それってかなり遠回しに自分の目は綺麗って認めてない?」
「…うっせ」
「…もしかしてなーちゃんの金髪碧眼って素ですか?」
「…言わなくてもわかんだろ」
「へ~、なーちゃんの髪って染めてるわけじゃなかったんだね」
「隔世遺伝ってやつなんだと。両親は二人とも黒髪黒眼だった」
「なんかなーちゃんも苦労してそうですね。是非とも夕飯を食べながら聞かせてください」
「まだ喋んのかよ…」
「ピーちゃん先輩、そろそろお仕事では?」
「ん~…いいや!なーちゃん、私にも聞かせて?」
「ったく、ららほど大したもんじゃねぇぞ」
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