第2話で語りたい
時刻はお昼頃。
私達は3階の食堂にお昼ご飯を食べに来た。
「…あの、なーちゃん」
「…なんだよ?」
「未知系って女の子しか居ないのですか?いや、別にいいですけど」
「や、男も居たはずだぞ?最近見ねぇ気がするけど」
「はぁ。何かあったのでしょうか」
なんて話してたら食堂の列が進み、私の番が来た。
「何が食べたいですか?」
カウンターで私に話しかけるのはショートヘアで小学生くらいの小柄な女の子。
「小学生?」
「はーい。少々お待ちくださいねー」
「えっ、ちょっ、」
え?
「おいらら、おまえ、人間食うのか?」
「いや、そんなわけないじゃないですか」
「だよな。先輩、どこに取りいく気だ?」
「えっ、まさか歳上なんですか?」
「いや、確か今年で12だったと思うぞ?」
「…雛美 小鳥、11歳。未知系対人科六年。どんな極悪人でも改心させることが無意識下で可能。
体格と名前からピーちゃんと呼ばれている」
「おう。私は四年だから二つ先輩なんだよ」
「なるほどです」
「ゴッメーン、さすがに小学生のお肉は無かったー。何か他にない?」
「チーズケーキをお願いします。ピーちゃん先輩」
「おっけー。あれ、私自己紹介したっけ?」
「おまえ、昼飯だよな?
小鳥先輩、こいつは今日からルームメイトのららっつぅんだ。よろしくしてやってくれ」
「へぇー、なーちゃんと一緒なんだぁ。仲良くしてあげてね?なーちゃん寂しがり屋さんだから」
「ぅおい!?あんたは私の母親か何かか!?」
「フフッ、私も寂しがりなので大丈夫ですよ」
「なら安心だねー。なーちゃんは何食べるの?」
「お前のそれは語りたがりっつーんだ。…味噌ラーメンとチャーハンを頼む」
「はいなー。二人で最後だから私も一緒に食べていい?」
「私は構いませんが、なーちゃんはどうです?」
「あぁ、いいよ。先に席ついてるからな」
「先輩だけに働かせる気ー?」
「だぁ、わかったわかった。らら、三人分の席頼んだぞ」
「あの、私も手伝います。私が食べるものですし…」
「いーからいーからー。ららちゃんは座っててー」
「ってわけだから、頼んだぞー」
私に背を向けて厨房に向かう二人はまるで姉妹…母娘?あぁいえ、親鳥とひよこのようです。枕元に並べたいですね。
おっと、席を取らないと埋まってしまう…と思いましたが普通に半分以上の席が空いてますね。さすが、生徒数が少ないだけのことはあります。
席について五分ほど待つと厨房から二人が出てきました。なーちゃんの持つおぼんにはラーメンとチャーハン、ピーちゃん先輩はチーズケーキとオムライスを持っています。
「共食いですか?」
「…ららちゃん、私だってちゃんと人なんだよ?」
「うしっ、出来た。どうだ、上手いだろ」
ピーちゃん先輩が私に気を取られているうちになーちゃんがオムライスにケチャップでひよこ三匹が並んでいる絵を描いていました。
「ピーちゃん先輩、共食いですか?」
「…ごめんなさい鳥さん、いただきます」
「おい、どーすんだよこの空気。先輩泣きそうじゃねぇか。…いや、描いたの私だけども」
「これもピーちゃん先輩のためなんです。優しく見守りましょう」
「ごめんなさい、ハムッ。ごめんなさい、ハムッ」グスン
「見てられねぇよ!らら、お前ちょっと、って何のんきにチーズケーキ食ってんだよ!」
「あっ、美味しい」
「ほんと!?ありがと!今日のは自信作なんだ!」
「うわっ、復活した」
「ええ、とっても美味しいです。
そしてピーちゃん先輩、泣きながら食べては味がわからないでしょう?それでは鳥さんに失礼ですよ」
「ほんとだ!ごめんなさい鳥さん」
「いや、泣かしたのお前…」
「ほら、なーちゃんも早く食べないと麺がのびてしまいますよ」
「げっ、やべ
そーいやなんで先輩はピーちゃん先輩で私はなーちゃんなんだよ!」
「「なーちゃんはなーちゃんでしょ?」」
「ちょっ、先輩まで!?」
「だってなーちゃんだもん」
「やめて欲しかったら『やめてくださいららおねーちゃん』って可愛い感じに言ってください」
「嫌に決まってんだろ!
…多分だけど私がそれやったら呼び方を『なーたん』とかに変えるだろ」
「わ、私も呼び方には不満があります!なんでなーちゃん以外誰も先輩って呼んでくれないんですか!?」
「じゃあピーたんとかか?」
「なーたん、それ、中華料理に使う黒い卵です」
「…ピーたんよりかはピーちゃんの方がまだマシかな」
「…私もせめてなーちゃんで頼む」
そんなこんなで食器を片付けてさらに会話を続ける。
「さぁ、ららちゃん。何か聞いておきたいとはある?なーちゃんよりは詳しいと思うよ?」
う~んと、あ、
「授業ってどこでやるんですか?」
「あ、それ私も知らねぇ」
「それはもしかしてあれですか?ヤンキーだからサボってるとかですか?」
「…おう」
「あははっ、違うよー。この学校、五年前からゴールデンウィークとシルバーウィークを交互に延々と繰り返しててずっと休みなんだよ」
「なーちゃん、うそついたの?」
「んな事よりらら、お前の脳ならそんくらい分かるんじゃねぇの?」
「違うんです、なーちゃん。能力で知るのと人に教えてもらうのとでは旨みにポッ○ーとプ○ッツくらい差があるんです!」
「大して変わんねえじゃねぇか!嘘でもキノコとタケノコの差があるくらい言いやがれ!」
「どっちもあんまり変わんないよ!ウォー○ーを探せとミッ○の差があるくらい言わなきゃ」
「それも大差ねぇよ怒られねぇかなこれ!?あとぜってぇ○ッケは知らない奴いるからな!?」
「ミ○ケ、懐かしいですね。私も小学校ではよくやってましたね」
「どうしても見つからないとだんだん屁理屈言い出すんだよね」
「そうだなぁ。それに比べてウォ○リーは一切屁理屈が通じないんだよな」
「ええ。ダミーが沢山いても絶対にどこかしら違うんですよね。
そういえばここって図書館か本屋さんはあるんですか?」
「あるよー。車で北に5分くらいのとこに図書館、そっからさらに10分くらいでおっきいショッピングモールがあってその三階が本屋さん」
「通販で車も買えるんですか?あと免許は?」
「免許はいらないよー。車は買えるし事故らなきゃもーまんたいー」
「なーちゃん、運転できますか?」
「…バイクなら」
「ふむ、自転車ならできると」
「あははっ、なーちゃんったらかーわいー。ははははっ」
「うっせぇ笑うんじゃねぇ!そういう先輩はどうなんだよ!?」
「わたし?わたしは軽トラックなら運転できるよ?」
「「…なんで?」」
いや、ロリっ子と軽トラって意外と似合いそうですけども。
「やー、あれって荷物運ぶ時に便利なんだよねー」
「なお、既に二十回を超えるほどぶつけてる模様」
「先輩、取説読んだか?」
「わたし、取説は読まない派だから」
「命に関わるからそれは読んでくれ」
「そうですね。それに案外取扱説明書も読んでみると楽しいですよ?」
「えっ、マジ?
らら、それは無いわ」
「えっ、そうですか?子供向けおもちゃのやつとか無駄にハイテンションだったりして楽しいですよ?」
「なんで子供向けおもちゃの取説の内容を知ってるの?ららちゃん何歳?」
「16歳です。なーちゃんはいくつですか?」
「17だ。ここに来たのは13の時」
「ちなみに私は6歳の時だよ」
「ここって何歳から入学させられるんですか?」
「能力とかが分かったらすぐじゃねぇの?」
「最年長は96って誰かが言ってたよ?」
「あ、私と一緒に入学した人に923歳の人がいましたね」
「それどんなバケモンだよ」
「普通系歴史科で、方言がちょっと怪しい方でした」
「めちゃくちゃ怪しいじゃねぇか」
「普通系って未知系以上に怪しいからね」
「そうなんですか?」
「まぁな。普通系っていまいちどの辺が普通なのかよくわかんねぇんだよ。らら、お前なら分かるんじゃねぇの?」
「そうですね、語らせて頂きましょうか。
普通系、普通教科に特化してしまった人間や常識外な生い立ちをもつだけの人間・人外なんかが入学します。例えば宇宙から来たとか数百年生きてるとか、人工的に造られた人間など。
また、他にも知ってはならない機密事項をたまたま知ってしまった人間もここに入ります。
つまり、人外が一番集まる系列ですね。
まぁ、人外以上に人外じみた方々も多数、他系列に属しているのでなんとも言えませんが」
「特にお前とかな」
「そうですか?私、脳以外は至って普通の女の子ですけど」
「その脳がやべーんだよ」
「ららちゃんの前にはプライバシーなんて役に立ちませんからね」
「そんなことありませんよ、知られたくないであろうことは語らないようにしてあげてます」
「語らないだけかよ」
「むしろタチ悪いよね。どこまで知られてるかわかんないんだもん。
実際どこまで知ってんの?」
「それはもう、誰もが知ってることから本人も気づいてないことまで一通りは」
「ほぼ全てじゃねぇか」
「ちなみに今日のなーちゃんの下着の色は水色です」
「なに暴露してくれてんだおい!」
「なーちゃんって意外と趣味が可愛いよね」
「ちょっ」
「そういうピーちゃん先輩はくまちゃんですね」
「なんで言っちゃうのぉ!」
「この際だから らら、お前もどんなか吐きやがれ」
「フフッ、どちらだと思いますか?」
「二択ということは、白か黒ってこと?」
「それなら白じゃねぇか?黒ってイメージはねぇよ」
「いえいえ、身につけてるか持ち歩いてるかです」
「持ち歩いてる場合なんの意味があるんだよ」
「ちゃんとつけないとダメですよ!お胸が垂れちゃうらしい…あっ」
「私、垂れるほどありませんから」
「あっ、いやいや、ららちゃんもまだ成長期がきっと来るからっ、ね?」
「そ、そうだぞーららー。…私もそんなにないけど」
「いえ、大丈夫です。私、ちっちゃい方が好きですから。
必要とあれば胸も創り直せますし」
「マジか!」
「ピーちゃん先輩は背が小さいうちになら大きくしてあげますね」
「なんで先輩だけなんだ!?」
「ロリ巨乳は合法ロリ以上に貴重ですから需要があるんです」
「私の巨乳には需要がねえってか?」
「100%私の趣味であり主張ですがヤンキーキャラで巨乳がカッコイイのは薄い本だけです」
「なに!?マジか。…まて、お前まだ16だよな?なんでR18の内容のこと知ってんだよ」
「年齢くらいネットでなくてもいくらでも誤魔化せます。
あ、ピーちゃん先輩はダメですよ?」
「言われなくても読みません!」
「読みたいとか言われても周りが全力で止めるだろうな」
「ちなみになーちゃんのお気に入りはヤンキー主人公のおねロリものです」
「ちょっ、はぁ!?」
「なーちゃん、私のことが!?」
「いやっ、ちょっ、ちがっ」
「いつの間にか三時ですね。おやつにしましょう」
「おいそこのマイペースWikip○dia!」
「なーちゃんなら、わたし、いーよ?」
「そんでそこの違法ロリ!いい加減ららの嘘だと気づけ!」
「ふぇっ!?なーちゃんわたしのこと、嫌い?」
「嫌いじゃねぇけどそういうとこは嫌いだよ」
「ガチな返しだ!?それもなーちゃんに!」
「まぁまぁ、ヤンキーだからって百合ではいけないなんてことはありませんよ」
「だからちげぇっての!」