シティバトル6
けっしておとなしくない爆発音が鳴り響く。5人の視点が一点に集まる。
煙をあげたヘリコプターはふらふらとしながらも空中を飛び続け、多くのパラシュートを吐き出すと大きな音を立てて爆発し砕け散る。
一瞬呆気に取られたディアスは、ふと気がつくとさっき声をかけたローマンの部下に声をかけた。
「おい! どうなってるんだ!?」
「わかりません」
外にいた彼は言った。
「とにかく、我らの使命はあなた方を無事にここから連れ出すことです。早くこちらへ」
「しかし、おたくらの仲間が……」
声を詰まらせ口ごもるディアスに、畳み掛けるようにアレックスの台詞が襲いかかる。
「やばいぜ、キャップ! 部品の雨が降ってきやがった!」
「急ごう、キャップ」
凛としたマイクの声に、ディアスは観念したように言った。
「……オーライ。わかった。案内してくれ」
6人の人々が、あちこちで起こる爆発と落ちてくる部品の雨の中で右往左往する警官たちをすり抜け走っていた。
市民の野次馬は来ないのか? ちらりと掠めるそんな考えを無視して、ディアスリアスは走った(作者の都合で出ないんだよ。だって込み入ってくるんだもん)。
「こちらにエアカーが用意してあります。早く」
彼の案内でその車に近づいた。次の瞬間、一斉に6人は爆風を避けるため腕で顔を覆う。
激しい爆発音!
“誰かが打ってきた!”
ヘルメス号クルーにはそれがピンと来た。
前の姿を想像させぬエアカーの残骸に、ローマンの部下は一瞬唖然としながらも次のエアカーを用意させるため他の部下を呼ぼうとした。だがそれは身動きせぬディアスによって止められた。
「どうしたんです」
彼はディアスの視線をたどり、それに当たると顔を強張らせた。
一人の男がいた。
鍛え抜かれた身体はそのままでも脅威となりえただろう。ましてやその体で支えられている、まだ煙を上げ続けるバズーカを見ては。
しかし、ディアスは動かず、視線も動かさず、隣のマイクに尋ねた。
「……やつ……だな?」
「……そう」
静かなマイクの声さえ緊張した時間を壊さぬようにしているように聞こえた。アンディがつぶやく。
「……大佐だ……」
「20年来だな、ヴェルドゥ!」
ディアスが腹の底からあげた声に、少しの笑みがあったことは否めなかった。
「まだ生きてやがったのかよ!」
「……お前こそ!」
ヴェルドゥの声にも意味が含まれていると思ったのは気のせいか? 肩に抱えたバズーカーの照準を合わせる、ディアス達に向けて。
ディアスは動かなかった。動けなかった。喉の奥に物がつかえたようだ。体の動かぬ自分を歯ぎしりして呪った。
その時だった。アレックスの身が翻ったかと思うと、クルーたちの方へ飛んで押し倒した(オット)。
「危ねぇ!」
その言葉に重なる爆発音。ヘリコプターの一番大きな残骸が小屋に落ち、赤い煙を吐き出したとと同時だった。
その力は予想できないほどの力を生み出した。大きなコンクリートが飛んできて、次々と敵対者の間に落ちたのは神の配慮かもしれない(人、これをご都合主義と呼ぶ)。
その間に起き上がり、避難する仲間を追いかけながらディアスは呟いた。
「……邪魔が多いな」
「本気でバズーカと対決するつもりだったんですか!?」
ドクが半ば呆れながら尋ねた。
「冗談に見えたか?」
「やりかねませんよ」
「なら、やったろうさ」
後ろで2、3回爆発がやけ気味に響く。バズーカーでコンクリートを壊そうとしているのかもしれない。
爆炎に一瞬目をとらわれ、次の瞬間に視界が回復した時、前の方で1台のレアカーが滑り込むのを見た。
「こちらへ!」
一人の男が運転席から飛び降りる。止まったエアカーに5人の人間が流れ込む。運転席を陣取ったディアスにローマンの部下のリーダー格らしい男は早口で言った。
「後の始末はこちらでつけます。あなた方はこれで宇宙空港の個人用シャトル乗り場へ向かってください、リスター老とボスがお待ちのはずです」
「すまねぇな」
ディアスが言った。
「この埋め合わせは必ずする」
「お気になさらずに」
今回初めてニッと笑うと、ローマンの部下は言った。
「私はあなたが気に入ったから助けたんです。ボスの命令もありましたがね。あの言い回しや計画の大胆さ、そしていざという時の肝の太さ。もしボスと会う前だったら、私は即あなたについていたでしょう」
「……世辞でも嬉しいよ」
指2本でディアスが敬礼して見せたのと同時に、エアカーは滑り出した。
ヴェルドゥは2、3回引き金を引いて弾切れを知ると、バズーカーをごろりと投げ捨てた。
……今だに乱痴気騒ぎは続いていた、首謀者たちがいなくなった後も。




