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逮捕5

「ゴルゴダ?」


 キャップはその地名を聞くと隣の二人を見た。二人は首を振って見せた。


「ここから北へ6キロアムル行った荒野だ」

「それじゃ署長さん」


 アレックスはヴィジホンの受話器を取り、署長に差し出した。


「こっからそこへ命令してくんない? 釈放しろってよ」

「無理だ。あちらにはヴィジホンはない。それにわしが命令できる筋合いのところではない。法務大臣もあちらには関わるなと言ってこられたのでな」

「署長」


 あ、まずいとアレックスは思った。ドクの顔がマジになってやがる。


「逮捕したのはあなた方でしょう! それならその人物にはその責任を負うべきでは……!」

「まった」


 今にも署長に掴みかかろうとしたドクを押しやり、ディアスは前に出た。


「キャップ」

「署長さんよう。それならこっちが勝手に押しかけて行って、連れ帰るとしたらどうする」

「どうもせん」


 署長は言った。


「こっちには手が出せんのだからな」

「おじゃまさん」


 ニヤリと笑ってディアスは踵を返した。


「こら、アレックス、ドク。行くぜ」


「意外とおとなしかったじゃねえかよ、キャップ」


 その建物を出て行く時、アレックはキャップに追いつき、言った。


「下の下の下っ端と喧嘩したって面白くともなんて言うねぇだろうが」


 片手を上げ、止まった無人タクシーに3人は乗り込んだ。


「ゴルゴダまで」

「コノたくしーハ市内シカ走リマセンガ」


 無表情のコンピューターボイス。


「じゃあとにかく、北に行ってくれ。最短距離でな」

「はい」


 タクシーはスムーズに走り出した。


「どうすんです、キャップ? まさか6キロも先のところ、歩いていけっつうんじゃないでしょうね?」

「多分ハイヤーがあるでしょう。なかったら……どうします?」

「盗むか?」


 キャップの答えにアレックスとドクは大急ぎで首を振った。


「まあ、それは冗談としてな」


 頭の後ろで手を組んでシートに沈み込むと、ディアスが言った。


「なんとかなるって。いざとならこいつのコンピューター、ぶっ壊して手動操縦できるように改造するだけのことさ。できるだろう?」

「まあね」


 実力十分のアレックスがそう言ってのけるのに対して、ドクは二人の話の間考え込んでいた。


「どうした?」

「え? ええ……。今、ちょっと思いついたんですが、はっきり言って予想なんですけど、もしかしたら……」

「なんだ? はっきり言えっつうに」

「……彼ら、セラを諦めて、マイクに乗り換えたんじゃないかって……」

「彼ら?」


 アレックスには何のことだかわからなかったが、キャップには何か感じるところがあったらしい。


「ヴェルドゥ……」

「ただの予想ですが」


 少し押し黙った二人は、アレックスに歯がゆく感じた。


「どったのさ、二人とも。またひと暴れできるってだけのこったろう? 俺達3人合わせりゃ天下に敵なしじゃねえかよ。大丈夫大丈夫」

「……アレックス 」

「ん?」


 ディアスの呼びかけにふと振り向いたアレックスは、いつもと違って本気の顔のディアスを見た。


「20年前、俺が奴を出し抜けたのは、まあ色々あるが、ひとえに運が良かった。こちらが最大限の力を出し切ってやっと互角だった。ましてや、てめえが気楽に考えられるような奴じゃねぇ。今のうちに考えを改めとけ」

「おーい、ちょっとキャップ。じゃあ何か? 俺がキャップに劣るとでも言うのかよ」

「その通りだろうが」


 アレックスの抗議に、平然と言うキャップである。


「何言ってんだ。最初に会った時だって互角だったろうが。ましてやシラフなら若さもあるし、ぜってー俺が勝つ」

「よく言うぜ、まだまだくちばしの黄色いひよっこが」

「なんだと! よっしゃ、ここで勝負しろ!」

「望むところだ!」


 他人の迷惑顧みず、喧嘩を起こすのは彼らが最も得意とするところだ。いきなりシートのところで取っ組み合いの喧嘩を始めた。もうドクの手には負えない。


「やめてくださいよ! タクシーの中で暴れるのは!」

「オ客サン、オ客サン、暴レナイデクダサイ。オ客サン」


 フラフラと蛇行するタクシーが道路を走って行く。見ていた通行人はいったいなんだろうと思ったことだろう。


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