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逮捕3

全く、口は災いの元だ。つくづくそう思う。


「まともな取調べを受ける権利を要求しますね」

「うるさい! 静かにしろ!」

「あなたの方がもっとうるさいですよ」


 あれから。マイクが手錠をハメられてから、マイクは一度も警察へは寄らなかった。

 すぐ護送車に積み込まれ、今、凸凹道を車が走っている。


「少し教えてくれませんかね」


 マイクは一緒に護送車に乗っている男に尋ねた。


「何をだ」

「いったい僕はどうなったのか。あの女性は誰なのか。あなた方は誰なのか。それから僕はどうなるのか」


 周りの男達は小声で相談を始めた。教えるべきかどうか考えているのだろう。少しして男たちは相談をやめた。


「お前は密貿易の容疑で逮捕されたのだ」

「覚えがないですね。何か証拠でも?」

「あの方がそう言った」

「あの方。あの女性のことですね。誰です?」

「知らん。どちらにしても政府のお偉いさんだろう。長官とも昵懇の仲らしい」

「長官?」

「警察庁長官だ」


 マイクは一瞬大きく目を見開いた。


「それじゃあ、あなた方は警察の人だったんですか! 僕はてっきりどこかのシンジケートの用心棒だとばっかり!」

「貴様ー! 無駄口を叩くともいい加減に……!」


 一人の男がマイクのセリフを聞き、つかみかかろうとしたが他の者達がそれを抑えた。


「やめろって。実際そう思われても仕方のないようなことをしているだろうが」

「しかしなぁー……!」

「わかる。気持ちは俺たちも同じだ。だが、まず、ここはこらえろ」


 あーあ。死んでもサラリーマンにだけはなりたくないもんだ、とマイクはつくづく思った。


 それにしても、僕をこんな目に合わせる目的は一体何なのだろう。

 トルトニウムか? あり得るな。

 こちらの方面も海賊には苦しめられていたはず。10ドンウェイトのトルトニウムと聞けば、喉から手が出るくらい欲しがるだろう。

 いやしかし、それにしてはやり口が荒っぽくはないか? 考えてみればアレキス政府がやろうと思えば十数隻の戦艦で産地までトルトニウムの買い出しにだって行けるはずだ。それに比べればわざわざ会社を作り上げ、相手を陥れてたかだか10ドンウェイトのトルトニウムを手に入れるなんてのは、手間ばかりかかってしょうがないだろう。


 ならばどうして? 彼らが今回のことで手に入れたのはトルトニウムと……僕か。


 分かってしまった? 僕がモーリー博士だということを。

 確かに僕の頭脳ならどんな手間をかけても手に入れたいと思うだろう。しかし、僕はそんなヘマはしていないはずだ。この頃はそんなことないように気を使っていたし、海賊に捕まった時に知らせてしまったが、あれはどこかの船が全滅させてしまったから漏れるはずもない。


 僕の口からじゃなくて、他の人から漏れたのかもしれない。

 僕のことを知っているのは、ディアス、アレックス、ドク、ヘルメス、セラ。後は商船協会のお偉いさんが2、3人。

 うちのクルーが漏らすとも思えないし(そういうことには義理堅い奴らだから)、協会は秘密は絶対厳守だしな……いや、いた。


 もう一人いた。20年前、あいつは僕が生き残っていることを知っていたはずだ。そして今も知っている。もし奴から漏れたとしたら(そして今僕は囚われの身になっている!)、アレキス政府と奴は手を結んでいるのかもしれない。


 ヘルメス号が危ない。早く知らせなくては……。待てよ。何か引っかかる。


 ……そうだ。うまく事が運ぶ過ぎている。

 ヘルメス号がトルトニウムをシルレスに売りに来なければ、この計画はうまくいくはずなんてなかったんだ。僕らがシルレスにくるということを知っていなければ……。


 ……まさか。しかし、ディアスは……。だが……まさか……。


「そろそろだぞ」


 運転手の声でマイクはふと我に返った。護送車の鉄格子の向こうは地平線の彼方まで続く荒野だった。


「どこです、ここは」

「ゴルゴダさ」


 吐き捨てるように刑事が言った。


「ゴルゴダ……。テラ伝説の中で、キリストが処刑されたのがゴルゴダの丘だと言ってましたっけ」

「その名の通りのところさ」


 音も無く車が止まった。軋みながら後ろのドアが開いた。一人の男が立っていた。マイクは当然といったように男を見て言った。


「お久しぶりですな。一か月ぶりですか。20年のうちに人相が変わっていたからわかりませんでしたよ、ヴァジールさん。……いえ、海賊ヴェルドゥ」


 返事はなかった。




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