クーデター4
「命は助けて差し上げます」
そういうローザの言葉を元上層部の人々は容易に信用できなかった。
「条件は?」
「条件?」
Tの質問を鼻で笑うとローザは答えた。
「ありませんわ、そんなもの」
「信じられんね」
Oが言った。
「それでは何かね? あんたはただ、マルカム氏とグローバル将軍を殺すためだけにここに来たというのかね?」
「まさか。それはヴェルドゥのプライベートな事柄で、私たちには何の関係もありませんわ」
「じゃあ、何をしに来たんだ」
「ちょっとした忠告をしに」
「忠告?」
「ええ」
ローザは立ち上がると2、3歩テーブルから離れ、振り向いていった。
「どうなさるおつもりなの、これから」
「どうなさる、とは?」
Iの台詞を聞き流し戻ってくると、ローザは立ったまま椅子の背にもたれかかって言った。
「マルカム氏は死にました。これは事実です。グローバル将軍も死にました。これも事実ですわね。そして反乱軍には中心となるものが必要ですわ。これもまた真実ですわね」
「つまりは」
Aが言った。
「お前らの参下に入れというのか」
「とんでもない」
ローザはちょっと片手をあげて見せた。
「私たちがおおっぴらに反乱軍の中心に居座ることはできませんわ。部外者ですもの。やはりそういうことは反乱軍内の人に……。そう。ヴェルドゥなんていかがかしら」
「ヴェルドゥ!?」
異口同音にその名が呼ばれ、一斉にヴェルドゥへの視線が注がれた。ヴェルドゥは悠然として立っているままで、身動きひとつしなかった。
「同じことだ。お前らであろうと、V大佐であろうと」
吐き捨てるようにPが言う。その後、恐る恐るNは尋ねた。
「アレキスのあなたは今、自らを“部外者”と申されましたな。ならば、その“部外者”の忠告を聞いても聞かなくても、我らの自由でありましょう」
「ええ、確かに」
ローザは彼らに背を向けた。
「あなた方の自由ですわね。ヴェルドゥをあなた達のボスにするのも……その部下に射殺されるのも」
そのセリフと同時にヴェルドゥが片手をあげた。それを合図に、周りを囲んでいた部下たちは降ろしていたライフルを一斉に構えた。
「……これでは忠告ではなく、脅迫ですな」
無念の思いがこもった声で、Oが言った。
「そうでしたの?」
ローザは軽く言ってのけた。
「こちらでは忠告と言うんですのよ。……早く決められたらいかが。ヴェルドゥは気が短くてよ!」
「……勝手に人の性質を決めるな」
「あら、違ったの?」
「……違わんがな」
「まっ、待て! 今、今すぐに相談いたしますから!」
大慌てでMがそう言うと、6人はしばらくの間話し合っていた。が、結論は最初から決まっていた。
「……よかろう」
重々しくOが言った。
「今後は彼の指示に従うことにしよう……」
「物分りの良い方々で良かったわ」
ローザはみんなを置いて部屋から出て行こうとした。
「ど、どこへ行く!」
「シルレスですわ」
Oの問いにローザは答えた。
「これでも忙しい身なものですから」
「わしらはどうなるんだ」
「そういうことヴェルドゥに聞いていただかないと……。それでは」
ドアを開けて2、3歩部屋から出たがローザはまた引き返し、部屋の中に声をかけた。
「ヴェルドゥ、一緒にシルレスに行く気はなくて?」
ヴェルドゥはゆっくりとローザを見た。
「あなたのターゲットがシルレスに来るらしいのよ」
ヴェルドゥの表情が一変した。普通の人間ならばそばになどよりたくはなくなるだろう。
「……行こう」
「そう言うと思っていたわ」
ローザは艶やかな微笑みを残すと、ヴェルドゥと共に基地内から姿を消した。




