クーデター2
アレキス星系内コスモダクトゾーンの小惑星ZR‐40。そこに、アラハン反乱軍上層部の基地がある。ここを知っているものは反乱軍内部でもほんの一握りに過ぎない。
今、ここに上層部の人々全員(といってもほんの8人だが)が集まっていた。
その内の5人は反乱軍の人間というよりは小物の政治家と言った方が良い雰囲気の人々で、一人はまさに軍人といった感じの男であり、一人は全くの小物で、なぜこんなのがここにいるのだろうと不思議になるほどの男である。体つきからすると、あのヴェルドゥと話していたNであろう。
そしてもう一人この男は、まさに上層部というのがピッタリするような男である。全員のリーダー役であるらしい。
「どういうことか説明していただこうか、Gくん」
貫禄のある言い方でリーダーが言った。Gと呼ばれた軍人タイプの男は、ふてくされて言った。
「どうもこうもありません。あ の 無能のH中佐を、あの任務に就かせたのがそもそもの間違いだったのだ。A、I、P。貴君らはHをあの任務に就かせるように熱心に言っておられたな。どう責任を取られる」
「わ、わしはそんな覚えはないぞ。大体Hなどという名は知らん。熱心に言っておったのはIとPだ。わしは言っとらん」
「何を言う。必ずや成功するでありましょうと大見得を切っていたのは、A、貴君ではないか」
「そうゆう貴君こそ、M氏に袖の下を持って行ったという話ではないか。人のことが言えるかね」
「なんと? ならばP、貴君はどうだというのだ。確か君は……」
「しずまれ」
M氏と呼ばれたリーダー然とした男が大声を上げると、あれほどうるさかった人々がしんと静まり返った。
「M氏」
まだ発言していない男が言った。
「よろしいですか」
「なんだ、O君」
「G君に少し尋ねたいことがありましてな。さて、G君。なるほど、パレ・サルガッソーでのことはH中佐の無能のせいとして、それではあのニルスでの騒ぎは一体どうしてなのかね。確かトルトニウムの買い付けに行ったのは、君直属の部下だそうじゃないか」
「……予算のせいですな。T君がトルトニウム買い付けのために出した予算は、アラハン軍はおろか、アレキス政府よりも値が低かったそうだ」
「財源が乏しいのだ、仕方があるまい。それよりもなぜ17席もの戦艦を再生不能にしたのだ。相手は一隻であろう? 17隻もの戦艦を作り上げるのにどれだけかかるかは知らんのか、貴君は」
「知らんわけではない! 私は……!」
「恐れながら申し上げます」
卑屈な笑みを浮かべながらそう切り出したのはMだった。話を中断されたGをはじめとする他の全員が侮蔑の表情で彼を見た。
「なんだ? 貴様などに口を挟まれる筋合いはない。おとなしくそこに座っていろ」
「ですがG将軍。私めの申し上げますことは、パレ・サルガッソーのこと及びニルスでのことに深く関わって参るのですがね」
他の者達はM氏を見た。M氏が重い口を開いた。
「言え」
「へへっ、ありがとうございます。実はその二つのことにヘルメス号やら言う商船が関わっておりましてね。法の上では商船でありますが海賊船のように色々な装備があり、まるで戦艦と変わらぬ力を持っておるのです。しかもどうやらあの脱隊者どもと何やら繋がりがあるようでして……」
「ドリーマーズの奴らが」
Gが呟くとMは言った。
「今のうちに始末すべきだな」
「はい、実はそこで一言申し上げたいところがあるのでございます。実はこの前雇ったV大佐、彼は理由は存じませんがヘルメス号を目の敵にしております。そこで彼とヘルメス号をぶつからせて……」
そこでG将軍がくっくっと笑い出した。
「何を笑われます、G将軍」
「N、貴様は知らんのか? V大佐が指揮していた輸送部隊は、先日正体不明の戦艦隊に襲われて全員死亡したのだぞ」
「なんですって!」
「貴様は霊媒師にでもV大佐を呼び出させて、ヘルメス号とやらに取り憑かせるつもりだったのか?」
軽蔑のこもった全員の冷笑に身を縮めたNだった。Mもちょっと冷笑を口に閃かせたが、何があったのか不意にドアの方を見た。
「……どうなさいました?」
他の者が尋ねるのを片手で制して、耳を澄ましている。2、3人の喚き声と、靴の音が近づいてくる。
突然大きな音とともに扉が開き、人々の一団が入ってきた。どうやら一人の侵入者が入るのを他の兵士が止めようとしたが、押し切られて入ってきたというところらしい。
「ええい! どけ! 私は上層部の御方々にご注進をしに……。ええい! 離れんか!」
「H中佐!」
兵士たちに怒鳴りつけている侵入者を見たAは、思わず立ち上がって言った。
「貴様生きていたのか!」




