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秘密作戦は進む7

「そうか。ならばこれより攻撃を開始する」


 無線が通告してきたのが最後であった。フロンゲルを囲んだ17隻の艦隊はその主砲を一点に向けた。


「あー、バカバカバカ! キャップ、何を言うんですか! あんたが余計なこと言うもんだからっ! あーもうだめだ。アイリーン! キャサリン! ミンメイ! もう一度会いたかったよー!」

「馬鹿言ってる暇があるなら一つでも届く砲座を見つけろってんだ、このトンチキ! それがだめならこの船を動かせ! 体当たりでもして相手を道連れにでもしなきゃ、俺の気が収まらねえ!」

「キャップの気が収まらないってんなら一人で行ってくださいよ! 俺はごめんですぜ!」

「てめえ、それでもヘルメス号の乗組員か!?」

「乗組員だったら何だってんです!」


 なんでこんなことになったのか。つまり砲座が見つからなかったのだ。


 遠くにある砲座の位置まで行こうとも思ったが、そのものでは艦隊が囲んでいるところまで届かないのだ。

 ましてや主砲はたった二人で動かせる代物ではない。その間に敵さんから入ってくる通信にイライラしたキャップがつい言ってしまったのが止めを刺してしまった。

 死はもはや1+1=2より明らかである。


 どさっと疲れたようにキャップは艦長席に腰を下ろした。

 館内見回りの時にくすねてきた、マイクが来るまでの暇つぶしに飲もうと思っていた酒瓶とグラス二つを机の上にドサッとおき、ワインをそれらに注いだ。


「……すまねえ……。馬鹿なことをした……」


 珍しく神妙に謝るキャップに毒気を抜かれたのか、アレックスもキャップの席の近くの床に座り込んだ。


「……まあ、いいですよ。馬鹿はお互い様だしね。それにまあ、いつかこんな日も来るだろうとは予想してたんすよ」

「幸いなことがあるとしたら、ヘルメス号とマイクとドクは無事ってとこだな」

「セラとハワードもね」


 二人は立ち上がりグラスをとった。


「じゃあ、やつらの幸福であろう未来のために」

「そして俺たちのバカさ加減のために」


 二人のグラスが合わさった時である。一瞬、宇宙が白くなった。


“ああ……。どうせなら、ワインを飲んでから死にたかった……”


 そうディアスは思ったが、ふと変だと思った。


「……アレック?」

「キャップ……。俺ら、生きてますよね……?」


 二人はお互いをまじまじと見ていたが、同時にスクリーンの方を見た。


 主砲は発射されていた。しかしフロンゲンには当たっていない。


 スクリーンに映った船は皆、フロンゲンに腹を見せていた。

 アレックスたちから見てみんな右の方に向かって打っていたのだ。ぐるっと回って輪をかいて並んでいた艦隊が、皆右の船を打ったら……全部打たれるよな。まだ爆発はしていないが沈むであろう船から、次々と人々がシャトルに乗って逃げ出していく。


 二人はくすくす笑いをし始めた。そして肩を組んで一瞬お互いを見合うと、もう後は大爆笑!

 何があったのかふたりは知らない。しかし、とにかく俺たちは生き残った。生き残ったんだ!


「……しっ」


 アレックスが大笑いするのを止めてキャップに言った。キャップは笑うのをやめた。


「なんだ?」

「耳を澄まして」


 耳を澄ますと、どこからか微かな機械音が聞こえてきた。

 いや、それだけではない。指令室のコンピューターが作動し始めたのだ。


「おいこらアレックス。コンピューターは止めたんじゃなかったのか」

「止めましたよ。宇宙一優秀なメカニック、このアレクサンダー・ジェームス・テイラーを信用しないんですか」

「……船長……あれっくす……」


 二人は話を止めた。

 コンピューターボイスが彼らを呼ぶのだ。彼らに、このコンピューターと知り合いな理由はない。


「ハワードが、ここのコンピューターにハッキングして呼びかけてるんじゃねえのか?」

「にしても、船長って呼んでますからね。キャップじゃなくて」

「僕デス。せらデス。オ怪我ハアリマセンデシタカ?」

「セラぁ!?」


 二人はどどっとコンピューター直結の音声入力マイクに飛びついた。


「なんで、なんでセラが」

「チョットシタコトデ船長タチガ大変ダッテコトヲ知ッタンデ、心ヲ飛バシテこんぴゅーたーノ記憶回路ニ意識ヲ滑リ込マセタンデス。アマリ人ヲ殺サズニ全艦再起不能ニデキテヨカッタデス。チョット大変デシタケドネ」

「じゃあ、あれをやったのはセラか。恩に着るぜ」

「イイエ、大シタコトジャナイデスカラ。ソレジャア、生キテイタラマタオ会イシマショウ……」

「おい。ちょっと待て、セラ」


 それを最後にして、コンピューターはまた停止した。いくら呼んでも、また動かなかった。


「生きていたら……?」

「キャップ……」


 ふたりは音声入力マイクを見つめながら絶句していた。


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