秘密作戦は進む5
バイオタイムボムを乗せた事も知らずに、アラハン軍の戦艦フロンゲルは出向した。
裸の二人は置いてきぼりを食ってしまったのだ……風邪引かなきゃいいが。
フロンゲルの船長は気分を良くしていた。
貨物室のトルトニウム、そして順調な航海。気分が良くならないはずがない。
「船長」
そんな雰囲気とは全く違った緊張した面持ちで、オペレーターが駆け込んできた。
「どうした」
「無線が利かなくなりました。相手の無線は傍受できるのですが、こちら側からは……」
「故障か。機関兵に直すように伝えろ」
たいしたことではないと思って船長は言った。
伝えられた機関兵たちもやっぱりそう思っていた。
しかし、命令を受けて機械を見に行った機関兵たちが廊下の途中で眠りこけてしまったのはそう思ったからじゃない。
大体眠ったのは彼らだけではないのだ。この船の中では二人を除いて全ての人が眠っている。二人……アレックスとキャップを除いては。
「さて、これからが大変だ」
ガスマスクをつけたキャップが言う。
「こいつらを全部シャトルに中に押し込まなきゃならん。機関室が先だな。危ないから」
「いちいち運ぶこともねーとも思うんですがね」
同じくマスクをつけたアレックスが言う。
「しょうがねえだろ。マイクが来るまでにガスは抜かなきゃならねえし、そしたらこいつらが目を覚ますだろうが。それに一応全部回っとかねえと、動かす時にまずいことになるしな」
「大型戦艦でなくて良かった」
実際全員をシャトルに押し込むにはだいぶ時間がかかった。全ての作業を終えたキャップはぐったりとなって、足を机の上に乗せて船長室に沈み込んだ。。
ガスがなくなったのでポンとマスクが机の上に放り出された。
「俺はもう御免だ。あー、もう誰がやるか、こんなこと。これからは他の奴に押し付けてやるぞ」
「俺だってごめんですよ」
アレックスも他の席に座り込んでマスクを取った。
「押し付けるんならマイクがドクにしてください。俺はパス」
「そうだ。奴らが押し付けるから俺らがこんなに苦労しなきゃならんのだ。やつらが悪い」
「そうだそうだ、まったくだ」
まったく無責任なセリフを二人が言った時に、非常事態を知らせるブザーが指令室中に響き渡った。
「おいおいおいおい、アレックス」
慌てて飛び起きたキャップである。
「船内の警報装置は鳴らねえようにしたんじゃなかったのか?」
「船内はやりましたよ。船外で何かあったんじゃねーんですかい?」
アレックスは立ち上がりレーダーを覗き込んだ。
「あっちゃー……。5時方向から戦艦ですよ。15隻はいるかな」
「呼んだ覚えはねぇな」
憮然とした顔でキャップが言う。
1ミニッツぐらいでブザーが鳴り止むと、代わりに無線が入ってきた。戦艦団から流しているらしい。
「前方を航行中の船に告ぐ。止まれ。止まらんと撃つ。こちらはアラハン反乱軍だ。止まれ。止まらんと撃つ」
「……うるせーの……」
ちょっと顔をしかめるアレックスにキャップが言った。
「ここから動かせる砲台はねーか。一発ぶっ放して黙らせてやる」
「しかしキャップ、打ったら必ず戦闘になりますぜ。1対15じゃあ、分が悪い」
「バッキャロー! それがどうした。せっかく暴れられる機会を作ってやろうと言ってるんだぜ? 少しは感謝しろい」
「それはそうだ」
あっさりと好戦的になったアレックスと、元から好戦的なキャップがいて、しかも敵さんがうじゃうじゃって来たらば……平和に終わるわけはないんだよなぁ。




