秘密作戦は進む4
ニルスのステーションの駐船場には、もちろん重さでの区別もしてあるがそれとは別に、「戦艦用」のスペースが特別にとってある。アレキス星系アラハンでの内紛で潤っているニルスでは当然のことと言えよう。
その「戦艦用」のスペースは、もちろんアラハン軍と反乱軍に分けられている。
次々とコンテナ積みにされた荷物がアラハン軍区域に入って行く。トルトニウムである。
それを知っている反乱軍軍人の中には「今ここでアラハン軍に戦いを仕掛けてトルトニウムを奪い取ろうか」という意見もあるにはある。
あるにはあるが、できない。
そういう事がないように、と内紛勃発した当初から反政府軍、反乱軍両軍に「ニルス領域内で戦闘は起こさない」という条約を結んでいるのだから。
荷物を運んでいるのはアラハン軍の下等兵である。
なまじ労働者を雇うと、スパイの入り込む可能性が大きいのだ。
しかし、こう制服がずらっと並んで働いてると一人ぐらいいなくなってもわからないような気がする。案外荷物の影で一人や二人休んでいたりして……いた。
なぜわかったのか。わからいでか。
横たわっている足が荷物の影から覗いている。しっかし、違和感。どうしてこの足は裸足なんだろう。
「……おい」
物陰から男の声がする。低くて少しかすれ声だ。
「は?」
もう一人いるらしい。こちらは前の声より若そうだ。
「その足、見つかるんじゃねえか? もう少し中に入れたほうがよかねーか?」
「ヘイヘイ、結局俺がやるんですね。 わかりやしたよっ」
ずるずると引きずられるように足が物陰に隠れて行く。
……これはどういうことだろう。そっと覗いてみることにしよう。
床に倒れてるのは裸の男が二人。立っていて服を着替えている男が二人。
服を着替えているのは……まあ、ある程度予想できてたけどね……キャップとアレックスだった。
「グ……苦しい」
制服の一部であるスカーフを締める時、ついつい声を出したキャップである。
「チェっ。この軍服ってやつは嫌えだな。体ばっかり締め付けやがって、自由つーもんがねぇ」
「その割には似合ってますぜ。いっそ軍人にでも転職しますか?」
「冗談じゃねえ。人の下で働くなんざ、真っ平御免だ。大体な、おい。俺が軍人になったら、ヘルメス号はなくなるんだぜ? お前、失業者にでもなるつもりかよ、おい」
「それこそ冗談じゃねえや」
気を失っている二人の軍人を縛り上げ、猿轡をかましたアレックスとキャップは顔を見合わせ、親指を立てた。
“Go!”
二人は堂々と荷物を積み込む所から入っていった。
誰も咎める者はいない。どっちも軍人だと言われりゃそうですかと言っちゃいそうな顔してるから。
そういうわけで道々物騒な話をしながら目的地へ歩いて行く二人を、誰も不審に思わなかったのである。
「こういう船を乗っ取るには二つの方法がある」
キャップは言う。
「どっちも外からじゃなしに中から切り崩すやつだ。まず一つは、素早く侵入してその船の“玉”を取ることだ。そうすりゃ簡単に事は運ぶ」
「あ、マイクがやったやつか」
何の気なしにアレックスが言った。
「ウチの船ならどうなるかね。簡単に事が運ぶかどうか」
「それに答えるのはお前らだろうが。どうすんだ」
「あー……。まず、セラならキャップなんか目に入んねえだろ。例え銃を突きつけられても、セラにゃそんなもん関係ねーもんな。要求飲むより力を使ってやっつけるんでねーの。
ドクはカッとなると後先見ずになるかんな。遮二無二相手に向かって行ってやられるのがオチだろ。
マイクはどうすんだろう。“どうぞどうぞ、ご自由に。この人は少しお灸を据えた方がいいんです。もうブラスターの一発や2発かまして行っていいんですよ”とか言って、ひるんだところを捕まえるとかな」
「……あり得るな。奴ぁ、海賊の船ん中で俺にビンタの嵐を喰らわせやがったからな。で、てめえは?」
「……おっかしいなー。機関室はどっちだろー……」
「てめえ、ごまかすんじゃねえ!」
「大丈夫大丈夫。キャップは捕まったりするようなことはねえですって」
「……今じゃ何の説得力もねえな」
「……ごもっとも」
「でもって第2の方法が」
キャップは目の前のドアを開けた。
「今回使う方法でな」
部屋の中にはいろんな機械が林立していた。二人はドアを閉めると、そこにどっかと座り込んだ。
「さて」
キャップが言う。
「出航時間まで一休みするとしようか」
「それまでにあの二人が見つかんなきゃいいんですがね」
「運が良けれは見つからねえだろ」
そしてまたじっと動かなくなった……。




