秘密作戦は進む1
ラドラスからパレ・サルガッソーまでに10日間。
海賊たちに足止めされたのが二日間。
パレ・サルガッソーを抜け出すのに五日間。
ハワードを直すのに一週間。
よくもまあ、1ヶ月で目的地に着けたものである。
しかし、そういうことはみんなマイクにまかせっきりで自分達はベッドで寝ているヘルメス号クルーは、皆良い根性をしているいると言えるだろう。
今回の取引相手はドロル系の商人である。
旧テラ系の人間とは違い、ドロル系の人間は体を硬い甲羅で覆われている。腕は4本で足は2本。
テラ伝説の元となった星ではないかと言われているトラウに住む昆虫のカブトムシに似た体型である。もちろんドロル系人に向かって「虫野郎」は禁句である。
「イやー、アりがとウござイました」
今回の取引相手でやるグリップ氏は人柄は良いのだが、少しなまっている。聞き取るのに一苦労だ。
「どうなんでしょうか、こちらでの鉱石の相場は?」
そうマイクが尋ねると、ブリック氏は溢れんばかりの笑顔を見せ(と言っても旧テラ人であるマイクにはそれが何なのか分からないのだが)言った。
「この頃パレ・サルガッソーに出没するとイウ海賊のせイか、一向に原石が入りませんでね。オかげでこちらは大儲けできるとイウところですわイ。もちろん契約金の上に、多少の心づもりはしてオくつもりですよ」
「ありがとうございます。それで、いつお支払いいただけるのでしょうか」
「まずは荷物を倉庫に入れて、量を確認して、それからですな。明日にも従業員をそちらへ向かわせましょウ。それまでに他の所へ売りつけんでくださいよ」
「わかっていますとも。明日は僕らも立ち会いますので、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
さあ、全ては明日だ!
*
エドモンド・マクベイン。56歳。
職業、探偵。
元銀河警察連盟(略してGTR)密輸捜査課勤務。昨年定年退職。
その彼が捜査課を退職する前から、そしてその後も刑事としての勘に引っかかる男がいた。
その男、名をマーキュリー・ディアスと言う。ヘルメス号という商船の船長である……表向きは。
彼、エドモンド・マクベイン(略してエドマク)は、ディアスは裏で武器等の密輸を行っていると見ていた。今もそう見ている。しかし未だにしっぽがつかめない。
15年! この15年間エドマクは、ディアスを裁きの場へ引っ張り出すことに命をかけてきたといってもいい。必ず捕まえてみせる!
今日もヘルメス号がニルスの宇宙ステーションに入港したとの情報を得たエドマクは、活動を開始した。
まずは警察へ顔を出し、ヘルメス号来港の目的を調べた。
……新しい刑事どもの視線が痛い。頑固な爺さんだとか、よくやるもんだとか、そういう風に言われているということも知っている。従って彼の仕事に協力する気など警察にはさらさらない。一応元GRPの一員であったという経歴を尊重して、あたりを柔らかくしているだけのことである。
したがってエドマクは自力だけで証拠を挙げ、自力だけでディアスを追い詰めなければならないのだ。
……しかし、ディアス達がそう簡単に追い詰められるわけなどないのである。
今日から来週18日にかけて「お盆集中連載」を実施します。
期間中の連載は一日おきとなります。ご了承ください。




