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幼女の尖兵に成って召喚者の能力に頭を抱える話

 護衛を交代したその日の夜。

 僕はミヤノマリの部屋で紅茶を飲んでいた。


「興味から聞くんだけどさ」

「はい」

「何で君この屋敷から出ないの?」


 紅茶を一口。

 ミヤノマリは口をグッと口を噤む。


「私は勇者ですが、皆様の考える様な力はありません。

 あるとすれば錬金術が扱える程度です」

「錬金術……ねぇ」

「はい」


 それからミヤノマリは語る。錬金術の最高峰たる賢者の石や不老不死で不死身の秘薬も作れ、実際に作ったとのこと。そして、それを領主に知られてしまったのだそうだ。


「ふーん。

 じゃあ、君は死なないの?」

「はい。老いるの事も無くどんな事があっても死にません」


 うーん、この。


「刺してみて良い?」


 腰の剣を撫でるとミヤノマリは苦笑し、それから上着を脱いだ。


「私が不老不死の不死身と知って殺そうとする人は貴方が初めてです」


 背中を向けて上裸になり、下もパンツ一丁だ。そして、胸を手で隠しながら振り返る。


「何処刺しても良いの?」

「はい」


 頷いたのでカランビットナイフを取り出して喉を引っ掻く様にして切る。大型のカランビットナイフで、シラットと呼ばれる武術で使うナイフだ。

 因みにこの身体はかなりの数の武術が扱える。

 喉を切り裂き、手の中でクルリと刃を回してそのまま下腹部を切る。デロンと小腸が引っ掛かって引きずり出された。

 ミヤノマリはその場に首と腹を押さえて跪く様に倒れる。暫くして出血が止まり、それから驚いた事に腸を中に押し込め始める。

 そして、ゴホゴホと血を吐くと苦々しい顔をして立ち上がる。


「お見苦しい所を……」


 うーん、この。


「本当に死なないんだね」

「はい。

 心臓を突かれると思っていたので、少し驚きました」

「うん。不意打ち狙って死ななければ本物さ」


 しかし、血を拭えば傷跡すらも残らない。腹も一切の傷がない。

 こりゃ困ったな。幼女様に一度相談だ。夜に手紙を書こう。緊急の案件である。真理に抵触する重大な事項だろう。神の定めた決まりに違反するのは。


「と、言うか君死なないのなら護衛いらなく無い?」

「ええ、なので貴方は護衛ではありません。

 私の監視なのです。私が何処かに行くときは必ずこの館の者に報告しろと言われてますよね?

 あれは私の行き先を明確にして逃亡を防ぐ為なのです」

「ふーん」


 そんな話をしていたら扉が蹴破られんばかりの勢いで開いた。見ると何時のオーガ。手にはハンマーを持っている。


「何だこの惨状は!?」


 そしてオーガが叫ぶ。そう言えば此奴も居たな。一応のお目通しはあったのでお互いに認識はしている。オーガの役職は勇者の護衛統括。つまり、僕等のトップ。


「勇者様は死なないって言って証明させてくれたから首と腹を切ったんだよ」

「バカ野郎!勝手なことをするな!」

「勝手じゃないよ?

 本人の許可はとったもの」

「そういう事じゃねぇ!」


 バカ野郎ともう一度言われ、そこを動くなと出て行った。


「庇ってね?」

「ええ、分かりました」


 ミヤノマリは本当に困った様に笑っていた。

 それから暫くして館の者が現れて僕は領主とオーガからお説教を食らう。

 そして、二度とするなと怒られ、次やったら犯罪者としてギルドに報告すると脅された。怖い怖い。

 夜になりミヤノマリと再び部屋で紅茶を飲んでいた。


「……彼処に誰か居ます」


 ミヤノマリは外を眺めると僕に告げた。

 見ればクワイ・ガンジンが茂みに隠れていた。クワイ・ガンジンのローブも僕のギリースーツに近い性能がある筈だ。


「えぇ?何処さ?」

「彼処の茂みです。

 この薬をどうぞ」


 渡されたのは何やら粘性の高い紫色の薬。毒かな?


「毒?」

「これは私の作った暗視薬です」

「ほう」


 もしかすると?

 試しに飲んでみる。すると、一瞬目が熱くなりそれからハッキリと視界を確保できた。部屋の中は普通だ。外を見ると少し彩度が下るが、確かに茂みの陰に人が立っている。しかも、何やらもや~っと何かが漏れ出ているではないか。

 これか!糞ったれ!


「効力はどれぐらい持つの?」

「今の所3年近く持ってます」


 マジカヨ……此奴チートかよ。あ、チートか!

 此奴どーするかな?


「ホントだー何かいる」


 手を振ると向こうは驚いた様子で一歩退く。

 そして、塀を飛び越えて去っていった。


「逃げちゃった」

「この前来た人とはまた別人の様でした」


 僕や。


「この前?」

「はい。モサモサの、蓑虫みたいな格好でした」

「へー

 それより、このもや~ってしてるの何?」

「それはこの世界のすべての物が持つ魔力です。

 ただの暗視薬では詰まらないので魔力も感知できるようになれば面白いかなーと思いまして」


 んもぉ〜すーぐそう言うチートするーこれだから地球人はー

 幼女様に相談案件更に増えたじゃん。ンモー!


「なるほどねぇ〜

 これは確かに領主も君を監禁するわけだ」


 ハッハッハと笑いソファーに座る。


「あの、逃げた人を探さないのですか?」

「どうせ盗人でしょ?

 僕の仕事は君の護衛であって盗人の相手じゃ無いし。

 そろそろ寝るかい?それとも眠らなくても良い薬でも飲んだ?」


 誂うように告げるとミヤノマリは首を横に振り寝ましょうと寝室に向かう。

 僕はそこに繋がる部屋で待機だ。寝ずの番ではなく、その部屋のベッドで寝れば良い。まぁ、幼女様に火急のご意見があるのでそれを手紙に纏めて送るのだがね。やれやれ、今回はかなりの面倒臭さだ。

チート能力持った主人公格は大体こんな感じよね

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