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幼女の尖兵に成って召喚者の護衛をする話

 夜になり小デブの商館に向かう。


「お待ちしておりました」


 扉をノックするとメイド勇者が待っていた様に現れて深々と頭を下げる。

 クワイ・ガンジンは外から様子を伺っているのだと思う。

 メイド勇者に続いて商館の商談をする部屋に向かうと小デブが緊張と興奮、そしてそれらが混ざりあったイライラと冷静が彼の顔を実に面白い色にさせていた。


「やぁ、面白い顔色してるけど決まったかい?」

「ああ、朝ソイツから聞いたろう」

「うん。

 それと、僕は明日からあの館で警護の依頼を受けた。後は分かるね?」


 言うと小デブは驚いた顔をし、それから頷いた。


「手引きするにも時間が必要になる。

 計画は君が考えてくれ。僕に出来るのは援護射撃だ」


 そこからは簡単だった。僕が館での警護をして、毎日の情報を小デブとメイド勇者にバラす。

 最初の一週間は夜間の館の内部にての警備。冒険者は僕以外に四名居り、内一人はクワイ・ガンジンだった。お互いに初めましてと挨拶しておいた。

 2時間に一回持ち回りで館の決められた区画を二人一組で巡察する。冒険者達の中で唯一の女子はクワイ・ガンジンだけで他の3名の男に何かとチヤホヤされていた。

 当人は然程興味も無く塩対応。僕はそれを笑っていた。

 そして、そんな感じで2週間目に入ると契約を更新するかどうか?と言われた。クワイ・ガンジン以外はみんなつまらないと言って辞めていったが僕とクワイ・ガンジンだけが残った。

 そして、僕とクワイ・ガンジンで監禁勇者の護衛を命じられ、新たな冒険者がまた例の三人の様に警護に入った。

 僕等の仕事は四六時中勇者の周りについて警護するのだ。

 その代わり、外には出れず館の中で暮らす事になる。流石に息が詰まるので、僕とクワイ・ガンジンの交代でと言う話だ。


「初めまして、冒険者の方々」


 監禁勇者は静かな声で僕等に頭を下げる。

 

「私の名前は宮野真理。

 異世界から喚ばれた者です」

「護衛のレオンです。

 短いか長いか知らないけど暫くの間よろしく」


 お互いに挨拶を済ませてそれからローテーションの話をする事に。

 三日間のローテーションで、クワイ・ガンジンが先につく。

 なので取り敢えず報告する為に小デブの許へ。


「成程。それは作戦に使えそうだ」


 小デブの顔に妙案が浮かんだという顔が出た。

 内容は単純で、品卸の際に監禁勇者を空の樽に入れて運び出すというのもで、まぁ、杜撰とも言えるが単純明快な作戦でもあった。

 そして、小デブは僕に勇者の情報を、特に意思を聞き出す様に頼んできたので二つ返事でオーケーした。

 それから会合を終えて、今後の打ち合わせは何時も飲みに行く居酒屋でやろうと言う話になって終った。


「レオン様」


 そして、メイド勇者が話しかけて来た。


「どしたん?」

「その勇者は本当に宮野真理と仰ったのですか?」

「うん。ミヤノマリって言ったよ」


 知り合い?と尋ねるとメイド勇者はギュッと目を瞑り、それから目を開く。


「何処か静かな所に」


 お?何や?

 それから教会に移動した。教会に行けば例のシスターが居り僕を睨み付けてきたがメイド勇者が二人きりで話がしたいと言うと講堂から出て行った。


「私は、実は召喚者なのです」


 つまり勇者だ、とメイド勇者は告げた。


「はー……そりゃ凄い。

 魔王軍倒しに行かないの?」

「……それに付いても話します」


 それから三十分程長々と話してくれたが、長いしまどろっこしい上に主観が入りまくりなので短くまとめる。

 彼女は大規模なよくあるクラス召喚に巻き込まれた。チート能力は暗殺者。身体能力の大幅アップに暗殺系の技術がトップクラスらしい。

 そして、元々クラスでも友達が少ない系で唯一仲の良い幼馴染である宮野真理は錬金術のチート能力を持っていた。

 錬金術は魔術と科学が混ざった感じのやつで前線に立てるだけの力は無い。

 なので召喚したこの国の王が地方復興の為に領主に売ってしまったらしい。

 そして、その領主を探しており漸く見付けたのだとか。

 因みに勝手に離反して逃げて来たのでメイド勇者本人は実は指名手配らしい。馬鹿じゃん。


「じゃあ、何でミヤノマリは監禁されてるの?」

「わからないのです。

 彼女の力があれば魔王軍と戦うことは不可能でも抜け出したりする事が可能な筈なのです。

 そして、私は彼女を守ると誓ったのです」


 ほーん。興味無いけど共感した様に頷いておく。

 じゃあ、感動の再開してる時に纏めてやるか。序に小デブと領主も殺しておこう。勇者に加担する者は殺して良いって話だし。


「成程、君の事情分かった。

 僕は彼女を助けるのを手伝う事しか出来ないけど、協力するよ。

 ミヤノマリに君の存在を知らせたい。君の名前を教えて」

「上野理沙です」

「ウエノリサね。わかった。

 君のことを伝えておこう」


 ミヤノマリにウエノリサか。

 さてはて。名前まで教えてくれたし、正体もバラしてもらえた。ウエノリサは何時でも殺せるね。

 さて、監禁勇者ことミヤノマリに接触するのはあと2日。のんびりしようじゃないか。

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