幼女の尖兵に成って異世界人と仲良くなる話
さて、新しい勇者と出会って更に一週間。小デブは足繁く娼婦館に通っていた。うむうむ。男は皆おチンチンに弱いのだ。
そして、今自分は教会にいる。理由は簡単、幼女様との会話を楽しむため。
「また来たのですね」
長椅子に座って待っていたらシスターに話し掛けられた。
「汝、神の家に通う者を断るべからず。
その者は神を愛する者也」
「別に来るなと言っているわけではありません」
リンゴーンリンゴーンと鐘がなるのでその場でお祈りポーズ。
《やっほーげんきしとるー?》
はい、してますよ。幼女様はどうですか?
《うちもあいかわらずやー
ひにひにしょーかんされるかずふえとるねん》
あーまじっすか?愈々人で足らないっすねぇ〜
《なーちょっとほんかくてきにあたらしーひとさがしとるんよー》
それはグッドニュースですね。
それと新しい勇者が二人居たので1ヶ月位で送ります。
《おーがんばってやー
うちは、おまえをけっこーかっとるからねー》
ありがとうございます。
《あとなーそっちのにんげんもーまおーぐんにこうりつよくたいしょしだしてなー
しょうかんしゃいがいにもしょうかんしとるれんちゅうもこらしめるもくてきでばちあててほしいんや》
マジっすか?ここに来て方針転換して大丈夫っすか?
《しゃーないねん。うちもあんまりこどもらころしてほしくないねんけど、おいたするこはしからないかんやろー?》
確かに。分かりました。じゃあ勇者召喚してる連中とそれに親しい者達等を中心に殺しますね。
《それでええよー
じゃ、がんばってやー》
はい。幼女様も頑張って下さい。
リンゴーンリンゴーンと鐘が鳴る。お話終了。幼女様も大変だな。
椅子から立ち上がり教会を後にする。
教会の扉に向かえば例のメイド勇者が教会の前に立っているのが輪郭で分かった。何やってんだろうか?
ま、良いや。今は君じゃない。
扉を開けて外に出る。メイド以外にはあまり人が居ない。
「……」
向こうはこっちを知らない。だから一瞥もせずに歩く。
メイド勇者は教会を見上げる様にしていた。何かあるのだろうね。知らんけど。
教会から宿屋に向かい、それから夜になるまで待機。夜になると高級な娼婦館に小デブが足繁く通うのでそれを狙ってお気に入りの娘を指名するのだ。
高級娼婦館でも指名入ってても普通に女の子がホールに出ている。なので、小デブが来る直前に指名してやれば少しゴタゴタする。
そこでコンタクトできるのだ。
「いらっしゃいませ。
当店の御予約は?」
「してません」
入り口の受付が僕の全身を一瞥する。
一応、服は上等のものを着ている。受付はわかりましたと頷き奥に案内してくれた。昨日も一昨日も来てるからね。
奥に入り後は何時も通り。個室ゾーンに入るとメニューを持った女の子がやって来る。取り敢えず、果汁を入れたサイダーを頼む。
女の子はにこやかに持ってくるので多めにチップを払うと、何時も通りだ。そして、サッと娼婦の方を見るとビンゴを引いた。
よっしゃ、あの子だ。時間も良い。
受付に向かい、娼婦を指したところで小デブがやって来た。
「大変申し訳ございません。
指名された女の子は先約がありまして……」
「先約?」
「はい」
受付がチラリと小デブをみるので釣られたように小デブを見る。
「何だ?」
そして小デブが僕等を見た。
「どうやら僕が指名しようとした女の子が貴女が予約していた女の子らしくて」
「ほう」
小デブは何やらドヤ顔をした。
「お前は目が良いな。
だが、あの子は俺が狙っている。お前には彼奴を紹介してやろう」
小デブに別の娼婦を紹介される。
お礼を言い、紹介された娼婦と共にベッドイン。小デブの評価を聞いた。
「んー正直、そこまで床上手でもなければイケメンでもないしお金あるから靡いてたけど、正直あの人に身請けされるなら貴方に身請けされたほうが夜の方は楽しいわよね」
どんまい。
あと、ベッドの中でやたらと自慢してくるらしく、家の事を随分と聞けた。ラッキーだな。
それとこの娼婦は少し客について喋り過ぎじゃないか?どれだけ不満持ってたんだ?まぁ、良いけどさ。
「残念ながら、僕は旅の冒険者。君を身請けするには色々と無理があるよ」
笑うと娼婦も笑った。彼女も本気では無いのだから。
それからもう一戦して店を後にする。店を出ると、小デブがメイド勇者を引き連れて待っていた。此れは良いな。
「おお、兄弟!
どうだった?良かったろう!」
「ああ、さっきの。
ええ、素晴らしかった。どうやら、貴方は中々のやり手のようだ。紹介して貰った娘も貴方に会いたがってましたよ」
それから下らない上っ面のやり取りをしてから何故か一緒に飲もうとはなしになった。おいおい、運が良いぞ。
飲もう飲もうと小デブの商館まで行く。
「お前は冒険者なのか?」
「ええ、しがいない冒険者ですよ」
「失礼だが、お前は其処まで腕が立つ様には見えんぞ?」
「うん。まぁ、訳あってね。
あんまり首突っ込むと後悔するからやめた方が良いよ。君は良い人だ」
ニッコリ笑うと小デブはムゥッと顔を顰めた。
「それより、そっちのメイドさんは君のこれかい?」
小指を立てて見せる。
「違う違う。
親父が何処からか見つけて来たのだ。こんな成りだが中々の腕を持っておるのだぞ?」
「へー、全然見えないよ」
メイド勇者をジッと見ると、勇者は深々と頭を下げた。
酒を飲み干した処でメイド勇者が空のグラスにウイスキー的な酒を注ぎに来た。
「ありがとう」
「いえ」
フォークを掴んでメイド勇者の喉元を狙って突き出すが、何の抵抗も無くスルリとフォークを取られてしまった。
成程なぁ、近接戦闘はかなりの物だ。遠距離で殺すかな。
「お戯れを……」
「な?言ったろう?」
小デブは楽しそうに笑うので、僕もそれに釣られてメイド勇者に謝りながら笑う。うむうむ。
それから深夜まで飲み明かす。此処では深く話を聞かない。もうちょっと仲良くなってからだな。ハッハッハッ!
中々殺しに行けないね