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死にたいわたしたち  作者: ふうろ
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7.××歳の遺書



現代において、遺書を書くのは老人の行動だと思っている人がどれほどいるだろう。

おそらくそのような考えを持っている人も一定数いるが、今や遺書はどの年代であっても書く可能性があるものだと思っている人のほうが多いのではないだろうか。


私も例外ではない。

現在進行形で遺書を書いているものだから、やはり自分の事として捉えてしまう。



「先立つ不孝をお許しください、っと……」



カタカタとタイピングをしていた手が止まる。

あまりにも普通すぎやしないか、という念に駆られて先ほどまで書いていた分を消した。


今日は別れた元彼のツイートに「彼女と遊びに行った」という文言を見つけた。

別れてから1年もたつのだから別の彼女くらいいて当然だろうと思うが、ブロックされていないアカウントでツイッターを覗いてしまうのだから相当未練があったのだろう。

元彼と彼女の楽しそうな様子が垣間見える写真は破壊力抜群だった。


あんまりにも破壊力が大きくて、ふらっと死にたくなった。


向こうは幸せに自分の人生をスタートさせているのに、別れて1年経ってもなんにもない私があまりにもみじめに思えた。

おそらく言葉に直せばそういうことなのだろう。

それだけでは語り尽くせない思いもあるから、いろんな思いを一つの紙に打ち込んでいく。

妙に小説じみたそれは小気味よく私の人生を物語った。



「ふふ」



思わず笑い声が零れる。

こんなにもあの人が好きだったのだと、だから今こんなにもつらいのだと、想いが整理されていく。


語り終えた指がまた止まる。

数ページにわたる遺書は未練がましく、みっともなく、あさましく、そしてどこまでも人間臭かった。

読み返して、パソコンのロックを開けた状態にして放置する。

こうしておけば、私が死んだあと、誰かがこれを読むだろう。

多分家族のうちの誰かがあけて読むだろうから、そうしたら、私の思いを知ってもらおう。


みんなが耐えられるような出来事でも死にたくなるような人間はいるのだと、知ってもらおう。

些細な理由でもつまらない出来事でも、確かに私は死にたかった。

「自殺なんて弱い人間のすることだ」と言われてもよかった。

死んで楽になりたいと思ったことは本物なのだと分かってほしい。



「やっぱり確実なのは飛び降りかなあ……ああでも、下に誰かがいたら申し訳ないなあ」



ぶつくさと呟きながら私は、とりあえず外出する準備をする。

スマホで「自殺 痛くない」と検索しながら扉を開けて外に出た。

憎らしいほど晴れ渡った空に目を細め、そうして歩きだす。






今日もどこかでまた一人、名もない女が死にたがる。






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