樹海7
松田はため息をついた。
「以前のように安定していない。あっと言う間に企業が育ち潰れていくんだ。大手の企業といっても安心できないよ」
なるほどと思った。
毎日のように中小企業が倒産し、大企業が合併再編している。
絶対に安心な明日はないのだ。
「だから少しでも増やすために資産投資をしているんだ」
「投資?」
「株や先物とかを少し:
松田の話は驚くべきものだった。
それと共に自分は何も知らないのだと実感した。
松田はインターネットで、株式投資と先物とあとは不動産をやっているし、将来ののために、保険も入っている。
子供は親に預け奥さんも働いて、目標金額をためているということだ。
「老後のことを考えると、厚生年金なんか夫婦で三十万あればいいとこだし、国民年金なんかじゃ十四万だ。そこから生活費や老人になれば病院代もかかるだろうし、問題は定年が六十として、年金の貰えない五年間は最悪生活に二十万かかるから最低四千万は貯めないとな」
「すごいな、もう定年のことまで考えてるのか」
「俺も会社が倒産するまではのんびり考えていたけど、でも無くなって初めて、自分はこんなにももろい土台にいたことに気がついたって訳だだから、いろいろ考えたよ」
僕は愕然とした。
目先の生活や日々を過ごすことに精一杯で、将来のことなど考える余裕もなかった。
いつかまた景気が回復し、貧しくとも就職できるだろうと言う幻想に支えられていたからだ。