樹海5
閉ざされたシャッター。
冷たく倒産のお詫びと書かれた文章。
債権者が押し寄せるのを防いでいるのだろうが、僕らの荷物だってロッカーにあるのだ。
もどかしい思いでいっぱいだった。
こうして、自分の生涯の仕事がなんの覚悟もないまま、あっけなく失われた。
だが事態はさらに深刻になり、経営者は給料や退職金さえ払う気がないと言うのが分かった。
労働組合や弁護士が駆け回り、一時金が出たが少ない金額だった。
オーナー一族は資金を巧く隠し、逃げ回ったらしい。
怒りより情けなくなった。
あれほど愛した会社の経営者は会社も社員も愛してはいなかった。
会社のオーナーは社員などどうでもいい存在だったと言うことに深く傷ついた。
生活に余裕があるわけではないので職を捜したが、三十過ぎた男、、特別なスキルもない男に世間の風は冷たい。
毎日足を棒にして何件も面接に行ったが、高校出であることや、なんの技術もないことを揶揄され、冷笑された。
正確に数えてはないが、五十社は超えただろう。
疲れはて資金も少ないので、安易だが派遣へと申し込んだ。
派遣での仕事は思う他厳しかった。
派遣会社は初心者でも出来て高給と言うことだったが、即戦力を期待されたが、経験がないので分からないずくめだ。
派遣は即戦力だと宣伝し、会社はそう思い使うと出来が悪い。
このギャップは埋められないものだった。
派遣に高い金を払う会社は完璧を求めてくるし、社員は見下して冷たい対応をする。
その上、高給と言う話はいろんなものが差し引かれ、たいした額にはならなかった。
だんだんと疲れた僕の生産性は落ち結局は契約を切られた。
僕はラインには向いてないのだ。