樹海へ行こう30話
高橋さんは化粧こそ濃いめだが
はっとするほどの美人で
きびきびした物腰からは
意思の強い印象を受けていたので
酒が進むにつれて、本や作者の話から
高橋さんの私生活にいつのまにか話が流れて行ったときには
高橋さんはそんなにも強い人ではない
もっと繊細な人なんだと言うことが分かった。
高橋さんは離婚歴があると僕に語りだした。
女の人から、初対面ではないにしろ、いきなり話されて
世慣れない僕はどうすればいいかもわからずに
じっと黙って彼女の話を聞くしかなかった。
高橋さんの夫は浮気症の男で、それを問い詰めると
いきなりDV夫に豹変したのだそうだ。
毎日のように浮気し、高橋さんを殴り
たまらずに抵抗して文句を言ったとひどいけがを負わせ
高橋さんは流産した。
「でも、何も悪くないっていうの、、」
高橋さんはその時に世界が信じられなくなったのだと言う
僕は同じ男ながら、自分の妻を殴りつけて子供を失っても平気でいる神経が理解できなかった。
僕らのような金のない男には彼女だってなかなかできないし
下世話な話その手の店へ行く度胸もない。
なのに妻がいながら、風俗へいき、同僚の女性に手をだし、妻をないがしろにする
結婚の意味がどこにあるのかがわからなかった。
高橋さんは流産して子供が産めないかもしれないからだになったのだとさびしそうに笑った。
僕は思わず高橋さんを抱きしめて慰めてあげたいと言う衝動にかられた。
こんなにも苦しんでいる彼女に何もない僕の何かを与えたいと思った。