樹海へ行こう26
「もう、こんな暗い話はやめましょう」
とんさんの提案にみんなうなずいた。
これから僕らは永遠に傷つかず、永遠に安らかな世界に行くのだから。
みんな、楽しくそのあとはもりあがり
心がだんだんと落ち着いたところで
お開きとなった。
最後はきれいにしたいと言う女性陣の言葉で
僕らはごみ捨てやらシートをかたずけ始めた。
「いさおさん、どうします?」
いさおさんは携帯を握りしめ楽しげに眠ってしまったのだ。
さきほどまでいさおさんは
携帯に写した娘さんの唯一の何年か前の写真を僕らに披露し自慢していたのだが
「このままで、片づけが終わったら、起こしましょう」
かわいそうなので、僕らはイサオさんをそのままにして
ナーガさんと僕でゴミを捨てにいき
とんさんが車にいらないものを戻し、女性達は最後はきれいにしたいとのことで
トイレに出かけて行った。
僕とナーガさんはゴミ置き場がどこかにあると思っていたのだが
結局初めての場所なので、置き場を探すことができず
車に戻しておいておくことにした。
だが、戻ってきたときには車はどこにもなかった。
とんさんの姿もどこにもなかった。
「とんさん、最後に戻る力が出たのかな」
ナーガさんがぼそっと言った。
その言葉は怒っていると言うよりも何か空虚なたんたんとした言葉だった。
「ゴミは仕方ないから、ここらの隅において、戻りましょうか」
戻った先にはイサオさんの姿はなく
困ったような顔をした、女性二人の姿しかなかった。